TRIP

世界のワイナリーを巡る旅 vol.3
アルゼンチン・メンドーサに君臨する世界ナンバーワンワイナリー、ズッカルディ

アルゼンチンで最も有名なワインの産地といえばメンドーサ。このエリアのブドウの栽培面積はアルゼンチン全体の70%を占め、多くの有名なワインメーカーがワイナリーを構えています。今回紹介するのは、そのメンドーサにある実力派ワイナリー、ズッカルディ。アンデス山脈の麓、標高1,000mの高地に広がるワインの故郷を訪ねて、アルゼンチンへ飛んでみましょう。

text WINE OPENER編集部

世界のワイナリー_03

アンデス山脈に抱かれた世界有数のワインの産地、メンドーサ

アルゼンチンの西側を南北に貫くアンデス山脈。ブドウ畑は、そのアメリカ大陸最高峰の威容を誇る大山脈の西側に、南北2,000kmに渡って広がっています。海岸線から遠く離れたこの一帯は、十分な日照量と少ない降雨、昼夜の激しい寒暖差と典型的な大陸性気候。アルゼンチンは世界でも数少ない大陸性気候にある巨大なワイン産地なのです。年間降水量は150~400ミリと非常に少ないため灌漑設備を利用しておりミネラル豊富なアンデス山脈の雪解け水を与えることで、濃縮した旨みのあるブドウが育まれます。また、湿度が極度に少ない環境はカビなどの病気の発生を抑え、薬剤散布が少なくて済むというのもメリット。ほかのエリアでは考えられないほどワイン作りに適しているのです。 世界のワイナリー_03 2,000kmにも渡るワインの栽培地は、主に北部のノルテ、中央部のクージョ、南部のパタゴニアの3つに大きく分けられ、アルゼンチン随一のワインの産地メンドーサは中央部のクージョにあります。 メンドーサにはさらに4つの栽培地区があり、今回ご紹介するズッカルディが位置するのは南西部のウコ・ヴァレー。標高900~2,000mとメンドーサのなかでは高地に広がるエリアです。

類まれな環境が揃った、ブドウ栽培の理想郷

今やアルゼンチンを代表するワイナリーへと成長したファミリア・ズッカルディ社。ワイナリーとしてのズッカルディの歴史は1963年にまで遡ります。ズッカルディの前身は降雨量の少ないアルゼンチンで農業を支える灌漑設備メーカーでした。1960年代、灌漑設備の試用とPRのためにはじめた果樹栽培が、ワインメーカーに転身するきっかけとなったというから驚き。試しに植えた数種の果樹はやがてブドウに集約されていきました。もともとが農業機器メーカーということもあり、初代のアルベルト・ズッカルディ氏は、国内外の最先端の醸造機器を積極的に導入する知見と柔軟性を持ち合わせていました。

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ファミリア・ズッカルディ社を牽引する二代目ホセ・ズッカルディ氏[左]と三代目セバスチャン・ズッカルディ氏[右]

1970年代には世界的なワイン品評会へ出品し、徐々に知名度を高めていきます。その後、息子のホセ・ズッカルディ氏の先駆的な取り組みが功を奏し、アルゼンチンを代表するワインメーカーの地位を確立。現在はホセの息子のセバスチャン・ズッカルディ氏が三代目としてプレミアムワインの発展に尽力しています。

世界のベストワイナリー1位の栄冠に輝いた麗しきワイナリーへ

2019年、ズッカルディは世界の優れたワイナリーを決める「ワールド・ベスト・ヴィンヤード(World’s Best Vineyards)」で世界第一位という栄誉を授かりました。なんとそれから2021年まで3年連続で世界一位を独占。今ではズッカルディのワイナリーを旅の目的として海外から訪れるゲストも少なくない、南米を代表するワイナリーのひとつとなっています。

ズッカルディがあるのは、メンドーサ市から140 km 離れたサン カルロス。日本からはアメリカやメキシコを経由しメンドーサ空港に入ります。ワイナリー近辺は公共交通機関に恵まれているとは言いがたいので、車で行くのが一般的な方法。ドライバー付きの車をチャーターしたり、旅行会社が主催するワイナリーツアーを利用するのが安心です。 ところで、賞を受賞したワイナリーが完成したのは2016年のこと。それまではメンドーサ北部のマイプを拠点としていましたが、3年かけてウコ・ヴァレーにワイナリーを建設し、現在はそこを本拠地としています。

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ワイナリーに向かう車窓からは、荒涼とした大地に果てしなく広がる一面のブドウ畑が印象的。ズッカルディの自社畑だけでも1,000ヘクタール以上になるといいます。やがて、ブドウ畑の先にはコンクリートで作られた建物が見えてきます。その無機質な外観は神殿、あるいは要塞のよう。これこそが、世界最高峰に輝いたズッカルディのワイナリーです。

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ズッカルディのワイン作りにおいてもっとも特長的といえるのが、コンクリートタンクの導入でしょう。実際にワイナリーを訪れるとその不思議で異質な物体を目にすることができます。

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コンクリートタンクのメリットは、ステンレスタンクに比べて断熱性に優れ、安定して発酵が進むということ。さらに独特の卵形の形状は発酵中の内部の液体の対流を促し、これまで澱と液体を混ぜるために外部から攪拌していた作業が不要となるため、酸化のリスクが減り質の高いワインになるそうです。 ワイナリーツアーに参加すれば、このコンクリートタンクはもちろん、土壌へのこだわりや有機栽培への取り組みなどについても詳しく聞くことができます。

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ワイナリーツアーは1日4回開催され、9時30分と12時30分スタートの回は英語で、11時と15時30分の回はスペイン語での案内になります。

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ツアーの所要時間は45分。その後30分ほどテイスティングの時間があります。

ツアー(テイスティングなし)は2,800アルゼンチンペソ(約1,700円)で、テイスティングはワインのラインによって異なり、4,600ペソ(約2,800円)~15,000ペソ(約9,100円)まで好みに応じて選ぶことができます。

ツアーのあとのワイナリーのテイスティングをパスして、敷地内にあるファインレストラン「Piedra Infinita(ピエドラ インフィニタ)」で、雄大な景色を眺めながらモダンにアレンジされたアルゼンチン料理とワインを楽しむというのもおすすめ。ランチ、ディナータイムともにメニューは同じで、料理のみの4コースメニューは21,000ペソ(約13,000円)、ワインのペアリング付きの4コースメニューは32,000ペソ(約20,000円)~。ワイナリーツアーも食事もとても人気なので、日程が決まったらホームページから早めに予約しておきましょう。

ホームページには英語サイトもありますが、予約できるのはスペイン語のみ。とはいえ簡単なスペイン語なので、翻訳サービスなどを利用すればそう難しくはありません。 https://zuccardiwines.com/(外部サイトにリンクします)

日本からは片道20時間以上かかる、まさに地球の反対側にあるアルゼンチン。せっかく訪れたならメンドーサのほかのワイナリーを巡ったり、南米最高峰の山、アコンカグアを中心とする近隣の山岳地帯のハイキングを楽しんだり、また首都ブエノスアイレスで情熱的なタンゴを鑑賞するのもおすすめです。長期休暇を利用して計画をたててみてはいかがでしょうか。

編集部おすすめ! ズッカルディのワイン

ズッカルディ
ホセ・ズッカルディ 
参考小売価格:税抜6,000円

マルベック、カベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドした赤ワイン。深い果実味とタンニンの調和がとれていて、エレガントでありながら力強いストラクチャーが特長。豊かで重厚な後味も楽しめます。

 

 

 

ズッカルディ キュウ シャルドネ

ズッカルディ
ズッカルディ キュウ シャルドネ
参考小売価格:税抜3,200円

緑がかった麦わら色の白ワイン。西洋ナシや白桃のニュアンスにトーストの香りも感じられ、フレッシュな口当たりにミネラル感と豊富な果実味が特長です。ほどよいボリューム感があり、長い余韻が楽しめます。

 

 

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※ワインについては、記事掲載時点での情報です。