スペインにおけるオーガニックワインの先駆者として知られるワイナリー「パラ・ヒメネス」。使用するブドウは、100%自社畑で収穫した有機栽培のもの。循環型農業にも積極的に取り組む造り手です。そんな「パラ・ヒメネス」の魅力をお伝えする特別連載企画がスタートします。
第1回にご登場いただくのは、ヴィーガンカフェの第一人者であり、現在、移住先の高知にて自然栽培のレモン作りのサポートに取り組む、アートディレクターの清野玲子さん。実は、清野さん、高知移住をきっかけに「パラ・ヒメネス」の愛飲者に。「パラ・ヒメネス」の楽しみ方や、高知での暮らしと活動を伺いました。
text WINE OPENER編集部 写真提供 清野玲子
■お話をうかがった方
清野玲子さん
アートディレクター。2000年、東京・青山にてヴィーガンカフェ「CafeEight」をオープン。03年、表参道に「PURECAFE」(その後移転し、「Restaurant Eightablish」に)を運営し、食に限らず、暮らし全体について、身体にも環境にも負荷をかけない視点から発信し、注目を集める。2020年、家族で高知に移住し、デザインや企画の仕事のかたわら、「とさレモンの会」(https://tosalemon.jp/ 外部サイトにリンクします)を立ち上げる。今年7月には高知県内にてゲストハウスをオープン予定。
今回登場するワイン
パラ・ヒメネス
パラ・ヒメネス シャルドネ[オーガニック]
参考小売価格:税抜1,000円(750ml )
有機栽培のシャルドネを使用した黄金色に輝く白ワイン。完熟した果実の甘いアロマとスパイシーな香りが魅力です。酸味のバランスも良く、華やかな味わいが楽しめます。
移住先で決めた食生活のルールに寄り添う
「パラ・ヒメネス」
―東京ではアートディレクターとして活躍しつつ、20年ほどオーガニックの食材を使用したヴィーガンの飲食店を経営していた清野さんですが、高知に移住されてから、よく手に取るのが「パラ・ヒメネス」だと伺いました。
清野玲子さん(以下、敬称略):東京にいたときからお店でもプライベートでも、食だけでなく、お酒もオーガニックのものを選んでいたので、高知でもオーガニックワインを探したところ、たまたま近所のスーパーで見つけたのが、「パラ・ヒメネス」だったんです。
肉を食べないので、野菜と魚が中心の食生活なのですが、「パラ・ヒメネス」の白が特に野菜料理と合うんですよね。

―そうなんですね! たとえば、どんな料理でしょう?
清野:この時期、高知ではうすいえんどう豆(グリーンピースに似たえんどう豆の一種)が大量に出回るのでそれをわんさか茹でて、塩、レモン、オリーブオイルをかけて食べるのがすごくおいしくて、ずっと食べ続けられます。

それから、高知の人がよく食べる山菜、イタドリ。これもワインに合うんですよ。皮をむいて塩漬けにしておいて、それを炒めると、ほんのり塩味と酸味を感じますし、シャキシャキした食感も楽しめます。

―東京では、あまり見かけない食材が身近にあるんですね。
清野:そうですね。ここ1,2年で、移住してきたパン屋さんが増えているのですが、その中でも、ポルトガル人の元シェフの方が、地粉を使って薪火で焼くパン屋さんができたので、そこのカンパーニュでもおつまみを作ります。パンの上に、簡単なラタトゥーユのように仕立てたいろいろな野菜とチーズをのせて、完成。余りものメニューですが(笑)、でもこれもワインによく合います。

―高知は食材にとても恵まれた土地なんですね。
清野:本当にそう思います。先ほど話に出たパン職人のポルトガル人の方に言わせると、ポルトガルと高知は、とれる食材がポルトガルとよく似ているそうです。どちらも海の幸が豊富で、米も野菜もよく食べるから。
実は、高知に移住してひとつだけ、自分の中で決めたルールがありまして。それは、せっかくこちらに来たのだから、高知産の以外の食材は基本的に買わないこと。そのルールの中で、どんな食生活を送れるかトライしてみたいなと思って。調味料も、高知にはいい天日塩があるので他の調味料がいらないくらいです。
生産者に近い場所で
持続可能なレモン畑の仕組みを作る
―東京と高知を比べて、食に関して一番違いを感じるのはどんな点でしょう?
清野:やはり、生産者さんとの距離がものすごく近いので、生産の現場である畑の様子を直接見る機会もたくさんありますし、野菜など食材を作っている方の人柄をダイレクトに感じることができますよね。これは、高知に限らずですが、今は「買い物は応援」という意識を持った人が増えていて、同じ物を買うなら応援したい人から買うという傾向が強くなっていると思います。私も、できるだけそういう生産者さんの食材を買うようにしています。
でも、東京での生活と比べて一番違うのは……、とにかく物々交換が多いこと!(笑)

―なるほど! それは地方ならではかもしれませんね。
清野:私は、今でこそ、「とさレモンの会」というプロジェクトを運営しているので何かいただいたらお礼にレモンを差し上げることができるようになりましたが、その前はとにかく買ったものでお返しするしかなくて(笑)。東京にいると、みんな、買ったものでやり取りしますよね。どこどこのお菓子をどうぞ、みたいな。
でも、こちらで東京と同じことをしても、何というかあんまり喜んでもらえなくて(笑)。だから、もう自分で作ったものでお返しするしかないんですよね。たとえば、原木椎茸を栽培している友人は、使い切れないからよかったらと、直径15センチぐらいの椎茸をくれるんですよ。その時は、ニンニクと塩と唐辛子とオリーブオイルでコンフィのようにして瓶詰めにしてお返ししました。もらい物が多いので、お返しのことばっかり考えています(笑)。
―東京では味わえなかった、ある意味豊かな悩みですね(笑)。先ほどお話に出た「とさレモンの会」は、どのような会なのでしょう?
清野:もともと、個人的にレモンが好きで、あらゆる料理に使っていました。10年くらい前から国産レモンの需要がどんどん高まっている中で、供給が足りていない状況を肌で感じていました。そんな中で高知に移住してみたら、柑橘類の畑が中山間部のあちこちにたくさんあるのですが、同時に耕作放棄地も目立つんです。
結局農家さんも高齢化が進んでいるし、みかんやポンカンは需要過多だし、値段も落ちるし……。だったら、同じ柑橘でも需要の多いレモンを作ったらどうだろう?と、移住前からずっと考えていました。そして、東京で飲食をやっていた人間として、貢献できることはないかと考えるようになりました。
同じ作るなら、レモンがいいですよと勧めると同時に、新たに作付けするのであれば、この際農薬も肥料も使わない自然栽培に挑戦しませんかと農家さんに働きかけています。持続可能な農業にいっしょに挑戦していきましょうと、3年前に「とさレモンの会」を立ち上げみんなで苗を植えて、栽培をスタートしました。

―最初は、農家さんから門前払いされたこともあったそうですね。
清野:初めのうちはそういう農家さんもいらっしゃいました。でも、「とさレモンの会」は、農家さんだけが天候などによる不作やその他様々なリスクを負うという状況を変えたいという狙いもあります。農家さんだけに負担してもらうのは、その時点で持続可能ではない気がするので。
だから、会員になっていただいて、会費をお支払いいただいて、実がならない幼木の段階から(レモンの実がなるのは約3年後)、農家さんをサポートしてくださいねという仕組み作りをやっています。持続可能な農業はまだまだこのやり方が正解というのが明確にないので、今は、レモン生産者同士を繋いで勉強しながら進めているところです。

―「パラ・ヒメネス」も循環型農法やビオディナミを取り入れて、ワイン造りに取り組んでいます。何か通じるものがありますね。
清野:今は、テーマは違えど、全国各地に私たちのようなCSA(地域支援型農業)=コミュニティがサポートする農のあり方を提案している方たちが本当に増えてきているのを感じます。今後も持続可能な食を維持するために、「とさレモンの会」の活動を進めていけたらと思います。
自然環境と自然な造りを心がける 「パラ・ヒメネス」のワイン
「パラ・ヒメネス」は、1993年以来、オーガニックの作物を作っており、畑は100%自社畑で700haの広大なぶどう畑を所有しています。ワイン作りには有機認証を持ったぶどうのみが使用され、1996年にはスペイン初の有機認証ワインを海外輸出し、環境に配慮した有機栽培への取り組みは高く評価されています。
2008年にはビオディナミ農法の公式認証Demeter(デメテール)も得ています。
パラ・ファミリーの哲学は持続可能な循環型農業にあります。ぶどうの他にも、玉ねぎ、ニンニクなど、オーガニック100%の農作物を生産しスペイン国内のみならず各国に輸出しています。
また、羊の飼育も行ない、その乳から作るチーズも生産。2010年にはスペインを代表するチーズ”マンチェゴ”作りでもビオディナミ認証を得て、スペイン初の有機認証のマンチェゴを世に出しています。自然環境と自然な造りを心がける「パラ・ヒメネス」のワイン。2015年の国連総会で採択された持続可能な開発目標”SDGs”ともリンクし、世界の共通目標である環境保全にも貢献しています。
パラ・ヒメネスのワインの購入はこちらから(外部サイトにリンクします)
※ワインについては、記事掲載時点での情報です。