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期間限定のごちそうチーズ
「モン・ドール」に合うワインを探せ!

製造期間が8月15日から翌3月15日までと決められている、チーズ「モン・ドール」はフランスとスイスの国境付近で作られ、チーズ好きが毎年心待ちにしているチーズです。そんな特別なチーズに合わせるなら、ワインのセレクトも吟味したいですよね。

そこで、WINE OPENER編集部員が、ナビゲーターにブルゴーニュの銘醸蔵「ラブレ・ロワ」などを受け持つ担当者を迎えて、「モン・ドール」にぴったりのワインをテイスティングしてみました。その結果やいかに…!?

text WINE OPENER編集部 photo よねくらりょう

モン・ドール

 

「モン・ドール」の産地を意識した
ワインをセレクトしてテイスティング

今回は、「モン・ドール」に合うワインを探そう!ということで、ワインではペアリングの相性を検討する際、産地が近い物を合わせるというのが定説ですが、今回は、「モン・ドール」の産地である、フランスとスイスの国境付近のジュラ山脈「モン・ドール」(黄金の山という意味)を意識したワインのセレクトですよね。

山本(ブランド担当以下略):そうですね。同じ産地であるジュラのスパークリングワイン「クレマン・デュ・ジュラ ブリュット」と、ご近所の銘醸地、ブルゴーニュのワイン「ラブレ・ロワ」を選びました。

テイスティングする6本

クレマン・デュ・ジュラ ブリュット NV

ラブレ・ロワ コトー・ブルギニヨン ブラン 2021

ラブレ・ロワ プイィ・フュイッセ 2020

ラブレ・ロワ ムーラン・ナ・ヴァン 2019

ラブレ・ロワ ジュヴレ・シャンベルタン 2020

ラブレ・ロワ ニュイ・サン・ジョルジュ 2015

モン・ドール
写真左から①~⑥を順番にテイスティングして、モン・ドールとの相性を確かめました。

ヴィンテージも、2015年から2021年までと様々です。

山本:やはり、年末年始を迎えるにあたって、普段より少しだけいいもの、少し特別感のあるものを揃えてみました。そういうシチュエーションならば、産地の知名度の高さと満足度の高さが比例するかと思いますので、たとえば「AOC ジュヴレ・シャンベルタン」や、「AOC ニュイ・サン・ジョルジュ」といった特に偉大な産地と言われているものを選びました。

2020年に関しては特に太陽に恵まれた力強いヴィンテージなので、「モン・ドール」の味わいの強さと合うのではとイメージしました。2015年もとてもいい年だったのですが、少し熟成して渋みが滑らかになっているので、そのあたりも「モン・ドール」のクリーミーさと比較をできるように選びました。

あとは、ぶどうの品種違いで、ピノ・ノワールだけではなく、ブルゴーニュということで、 ボージョレ地区のガメイも試して飲み比べできたらと思います。

 

「モン・ドール」のクリーミーさを
いっそう引き立てたワインは!?

では、さっそく始めましょう! トップバッターは、「①クレマン・デュ・ジュラ ブリュット NV」です。

磯崎(編集部以下略):ワインの蜜のような香りが、チーズとすごくマッチしますね。

高橋(編集部以下略):「モン・ドール」のクリーミーさが引き立って、いっそうまろやかに感じます。

芦澤(編集部以下略):はちみつのニュアンスが、ふわっと広がる印象もありますね。

山本:シャンパーニュと同じ瓶内二次製法のスパークリングワインなので、泡のきめ細かなニュアンスと、シャルドネ100%なので、クリーンというか、ピュアというか、きれいな柑橘系を始めとするフルーツの香りを中心に、本当に体に染みるような柔らかい味わいが魅力です。「モン・ドール」と合わせると、チーズのなめらかさと、泡立ちのクリーミーさの一体感が感じられます。

次は、白の「②ラブレ・ロワ コトー・ブルギニヨン ブラン 2021」と「③ラブレ・ロワ プイィ・フュイッセ 2020 」を、比較しながら相性をみていきましょうか。

山本:一般的にはコトー・ブルギニヨン ブランはシャルドネとアリゴテという、ブルゴーニュの代表的な品種をブレンドすることが多いのですが、ラブレ・ロワのコトー・ブルギニヨン ブランはシャルドネ100%です。「③プイィ・フュイッセ」もシャルドネ100%です。「②コトー・ブルギニヨン ブラン」は、非常にシャープでシャブリを連想するようなキレのあるニュアンスです。

それに対して「③プイィ・フュイッセ」はブルゴーニュでも比較的南の産地なので、果実味主体。「②コトー・ブルギニヨン ブラン」とは対照的で、比較がしやすいと思います。

磯崎:そうですね。「②コトー・ブルギニヨン ブラン」と比べると、「③プイィ・フュイッセ」の方が、やはりチーズがまろやかなので、合う気がします。心地よい樽香もありますね。

山本:「モン・ドール」の特徴のひとつとして、エピセア(もみの木の一種)の樹の皮で巻いてあることもあげられるかと思いますが、木のニュアンス、木樽のスモーキーさとの似た者同士のペアリングで相性はいいですよね。

高橋:二つを比べると「③プイィ・フュイッセ」の方が圧倒的な香りと穏やかさを感じます。味で比べると「②コトー・ブルギニヨン ブラン」の方が、明るい酸味がありますね。

芦澤:同じく、「③プイィ・フュイッセ」の方は酸が穏やかになって、落ち着きがあるというかどっしりした印象を受けました。    

山本:「②コトー・ブルギニヨン ブラン」の方が柑橘系の香り主体で、爽やかな酸味があります。それに対して「③プイィ・フュイッセ」は果実味が豊かで、ボリューム感のあるたっぷりした印象なので、クリーミーな「モン・ドール」と合わせやすいですね。

果実味がチーズの塩気によって、より引き立つのでそれが「旨み」という印象になりました。

モン・ドール

「ブルゴーニュの王様」と
「モン・ドール」の相性は?

次は「④ラブレ・ロワ ムーラン・ナ・ヴァン2019」、「⑤ラブレ・ロワ   ジュヴレ・シャンベルタン 2020」、「⑥ラブレ・ロワ ニュイ・サン・ジョルジュ  2015」の赤3種類です。

山本「④ムーラン・ナ・ヴァン」は、ガメイの中でも一番良いぶどうが採れる「クリュ・ボージョレ」のひとつ、「ムーラン・ナ・ヴァン(風車)村」産です。「モン・ドール」の「格」とガメイの「格」が釣り合うかと思い、選びました。

磯崎:ガメイのなかでもどんな特長といったらいいのでしょう?

山本:こちらのガメイは渋みが優しいので、「モン・ドール」のようなチーズとは、寄り添いやすく、広がりのある味わいが魅力です。

芦澤:あとの二つはピノ・ノワールですよね。

山本:「⑤ジュヴレ・シャンベルタン」は、いわゆる「ブルゴーニュの王様」といわれるようなワインだけあって、力強い果実味とタンニンがあり、骨格を感じます。チーズの濃厚さと味わってみたいですし、やはり抜群の知名度ですから、おさえておきたいですね。

高橋:「⑥ニュイ・サン・ジョルジュ」はどんなワインなのでしょう?

山本:こちらは、まさにいま、飲み頃を迎えた熟成感と、複雑さに注目していただきたいです。「⑤ジュヴレ・シャンベルタン」の影に隠れがちですが、実は、ヴィンテージと価格のバランスがすごくよくて、個人的に、「推しワイン」です(笑)。もちろん、「モン・ドール」のクリーミーさとも合わせやすいと思います。

モン・ドール

山本さんの「推し」への熱い思いが伝わってきますね! これは合わせるのが楽しみです。

山本:赤の場合は、テイスティングの際、「渋味」という要素がプラスされるので、その渋味のある/なしが「モン・ドール」との相性にどう作用するかも、ポイントですね。

では、実際に3種類を比べながら飲んでみましょうか。

高橋「④ムーラン・ナ・ヴァン」は、甘味と優しいスパイス感が、「モン・ドール」の香りと寄り添っていくような感じがありますね。

磯崎「⑤ジュヴレ・シャンベルタン」はピノ・ノワール由来のベリーの香りが結構ありますね。口に含んだ時にタンニンを感じますが、まろやか。なめし革のような香りもあるのでチーズの特有の動物的な香りと、とても調和する印象です。

芦澤「⑥ニュイ・サン・ジョルジュ」「⑤ジュヴレ・シャンベルタン」は同じブルゴーニュでもこんなに印象が違うのかと驚きました。酸味や渋味が何か突出しているわけではなく、全体的にまとまった味わい。少し渋味はありますが、「モン・ドール」と合わせることでその渋味がチーズのおいしさを広げてくれるような感じがします。

山本「⑥ニュイ・サン・ジョルジュ」は、イチゴジャムやドライいちじくの香りもしますね。「モン・ドール」は3週間ほど熟成してから出荷されるということなので、フレッシュなワインより、やはり熟成したものですとより相性がいいことを、実際にテイスティングしてみて改めて実感しました。

タンニンも豊かで緻密な感じが、チーズの旨みを引き立てています。おそらくこのまま時間をかけて楽しむと、だんだん甘味が出てきて、タンニンがこなれてくるので、さらにおいしくなるのでは。

高橋:ゆったりした印象がありますよね。「モン・ドール」と合わせても、強すぎず、本当にバランスよく引き立てていて、ワインもチーズもどちらもおいしいと感じました。

ワインと同時に時間を味わう感覚は、それこそ、ワインを飲む醍醐味ともいえそうですね。

山本:先程、抜栓から時間が経ったので、「⑤ジュヴレ・シャンベルタン」をもう一度飲んでみたところ、甘味が出てきて、最初に飲んだ印象は、ややタンニンが強かったのですが、時間とともに変わってきました。時間の移り変わりによる味わいの変化もぜひ楽しんでいただけたらと思います。

モン・ドール

モン・ドール

では、候補の6本をすべてテイスティングしたところで、「モン・ドール」と合わせたいワインの結果を発表します! 投票数の制限なしで投票してもらったところ、

①クレマン・デュ・ジュラ ブリュット NV4

ラブレ・ロワ ニュイ・サン・ジョルジュ2015」3票

③ラブレ・ロワ プイィ・フュイッセ 2020」2票

となりました。 

皆さん、それぞれ「モン・ドール」との相性のコメントは今までのお話の中で触れていますが、全体的にご覧になって山本さんはいかがでしたか?

山本:会が始まる前は、乳製品ということで、白ワインの方が合わせやすいのではと予想していたのですが、それ以上に、「⑥ニュイ・サン・ジョルジュ」の熟成感とのマッチングの良さに驚きました。

どういう部分が合ったのでしょうね?

山本:やはり、若いワインでは感じられない、シルキーかつ、きめ細やかなタンニンとチーズとの一体感というのが、時が経ったことによって生まれるマリアージュなのかなと思います。いま、市場でも2015年のブルゴーニュを見かける機会が少なくなり、貴重なヴィンテージになりつつあります。今回、上質な赤ワインをご案内できるのはブランド担当者としても嬉しいです。

また、「ラブレ・ロワ  」は、契約農家さんとのコミュニケーションをとって信頼を築いている造り手です。この供給量でこのクオリティを維持しているところに、歴史と実力を感じます。ぜひ、この機会にお試しいただきたいですね。

モン・ドール

「モン・ドール」に合うワイン3選

クレマン・デュ・ジュラ ブリュット クレマン・デュ・ジュラ ブリュットNV
参考小売価格:税抜2,308円

シャルドネ種100%使用、シャンパン製法でつくられるフランス・ジュラ産のクレマン。華やかな香り、生き生きとした果実味とエレガントな味わい、切れのよい後味が特長です。

 

 

 

ラブレ・ロワ ニュイ・サン・ジョルジュ

ラブレ・ロワ ニュイ・サン・ジョルジュ 2015
参考小売価格:税抜7,500円

華やかな香りに、土やミネラルの芳醇な印象。ストラクチュアのしっかりとしたパワフルなワインでありながら、柔らかさ、まろやかさを感じさせてくれます。

 

 

 

 

ラブレ・ロワ プイィ・フュイッセ ラブレ・ロワ プイィ・フュイッセ 2020

参考小売価格:税抜4,800円 黄金のような美しい色合いが印象的。デリケートで生き生きとした香りを持ち、爽やかな酸味が心地よい白ワインです。エレガントな口当りで、マコネ地区最上の白ワインと称賛されています。

 

 

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※ワインについては、記事掲載時点での情報です。