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杉山明日香さんとシャンパーニュ談義
テタンジェの至宝「コント・ド・シャンパーニュ」の魅力って?

フランスを代表するシャンパーニュ・メゾンのひとつで、美食やアートへの深い理解でも知られる「テタンジェ」。中でも、シャルドネ100%で10年以上の長期熟成を経て生まれる「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン」は、テタンジェのシグネチャーともいえる存在です。

そんな「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン」をお気に入りに挙げるのが、ワイン研究家で、東京とパリでレストランの経営も手がける杉山明日香さん。プロ中のプロである杉山さんに、「ブラン・ド・ブラン」との出合いから魅力までを、テタンジェのブランド担当、北河智幸さんと共に語っていただきました。

text WINE OPENER編集部 photo yoshimi

テタンジェの至宝「コント・ド・シャンパーニュ」の魅力って?
杉山明日香さん(左)と北河智幸さん(右)

 

杉山明日香
ワイン研究家、理論物理学博士、ソムリエール

東京生まれ、唐津育ち。有名進学予備校の数学講師のかたわら、ワインスク ール「ASUKA L’école du Vin」を主宰するほか、ワイン、日本酒の輸出入業を行う。また、東京・西麻布でワインバー&レストラン「Goblin」とワインバー&ショップ「Cave de ASUKA」を、パリでレストラン「ENYAA Saké & Champagne」をプロデュースするなど、ワインや日本酒関連の仕事を精力的に行っている。
著書に、『受験のプロに教わる ソムリエ試験対策講座』、『ワインがおいしいフレンチごはん』、『ワインの授業 イタリア編』(リトルモア)、『ワインの授業フランス編』、『おいしいワインの選び方』(イースト・プレス)など。
撮影は、杉山さんのワインバー&ショップ「Cave de ASUKA」(東京都港区西麻布4丁目1−5 DOUEIビル 2階 火-日 16:00-24:00 月曜定休日)にて。

 

テタンジェの至宝「コント・ド・シャンパーニュ」の魅力って?
テタンジェ

コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン 2011
参考小売価格:税抜30,000円

上質な白い果実と白い花の気品のある香り、長期熟成ならではのキメ細かな泡立ちと滑らかな舌触り。複雑に絡み合う余韻の長さも一流を感じさせてくれるテタンジェの至宝。

メモリアルなシャンパーニュとの出合い

―杉山さんは、ワインスクールの講師、東京・西麻布とフランス・パリで飲食店の経営、ワインのインポーターなど、ワインの専門家として幅広くご活躍ですが、ご自身のお店にも、「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン」を置いていらっしゃるとうかがいました。

そもそも、「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン」をお好きになったきっかけはなんだったのでしょう?

杉山明日香さん(以下敬称略):「コント・ド・シャンパーニュ」を初めて飲んだ時、最高級の味わいのシャンパーニュとはこういうことかと気付かされたんですよね。ですから、自分の中でも思い入れが深くて、東京とパリのお店には必ずそろえているのはもちろんなのですが、生まれ年のヴィンテージや、その他のオールドヴィンテージなどもコレクションしています。せっかくなので、今日は、その中から1本を持ってきました。

北河智幸さん(以下敬称略):なんと! これは貴重なヴィンテージですね…。

杉山:生まれ年のヴィンテージは大切にし過ぎて、いつ開けようか悩ましいのですが(笑)。私がこちらのシャンパーニュ・メゾンで特徴的だと感じているのは、大手の中でも数少ないファミリー経営という点です。

北河:現在は、4代目のピエール=エマニュエル・テタンジェから長女のヴィタリーさんが5代目の社長を務めていて、長男のクロヴィスさんと共に、ファミリーで経営しています。 テタンジェの至宝「コント・ド・シャンパーニュ」の魅力って? 杉山:コロナ禍以前には、月の半分はパリ、もう半分は東京で過ごしていまして、フランス滞在中には必ず1回はシャンパーニュに足を延ばすんですよ。残念ながら、まだ「テタンジェ」のワイナリーにはお邪魔したことがないのですが、いつかぜひと思っています。

北河:ぜひいらしてください。いま、ワイナリーの見どころのひとつとして知られている地下のセラーは、さらに見学しやすいようリニューアル中ですが、完成したらより楽しんでいただけるスポットになりそうです。

杉山:パリのお店のテーマは、「Saké & Champagne」ということで、リストには日本酒とシャンパーニュしか載せていないんです。基本的に、造り手さんとは直接お取引きさせていただいており、情報交換をしたり、一緒にメーカーズディナーを行ったりしています。

北河:先程、「コント・ド・シャンパーニュ」との出合いについてお話いただきましたが、どんなシーンでお飲みになったのでしょう?

杉山:もともと、私の両親がワイン好きなのですが、私の成人のお祝いの時に、両親と一緒に飲んだのが「コント・ド・シャンパーニュ」だったんです。ですので、私にとっては、非常にメモリアルなシャンパーニュなんですよね。と同時に、先程も申し上げたように、シャンパーニュって、こんなに深い味わいを出せるものなんだと感じました。そういう意味では、泡にはまった一番のきっかけとも言えます。

―20才から始まったご縁だったんですね。

杉山:そうですね。もちろん、その頃は学生でワイン専門家でもなかったわけですが、博士号(理論物理学)をとった時や大学院の卒業の時など、お祝いごとの時には毎回、「コント・ド・シャンパーニュ」を開けていました。

北河:杉山さんが今まで飲んでいらして、印象に残っているヴィンテージはありますか?

杉山:最近ですと、2006年や、2007年のロゼのマグナムがとてもおいしかったです。もう、素晴らしかったです。 飲む機会は少ないですけれど、90年代のものも大好きです。でも正直言うと、 どのヴィンテージもベースがしっかりしているのでおいしいんですよね。

北河:ありがとうございます。杉山さんからご覧になって、そのおいしさはどこにあるとお考えですか?

杉山:「コント・ド・シャンパーニュ」は、グラン・クリュを5つ(シャルドネを栽培する特別な5つの村、クラマン、アヴィズ、シュイリー、 オジェ、メニル=シュール=オジェ)をアッサンブラージュ(編集部注)していますよね。ですので、同じシャルドネ100%のシャンパーニュの中でも、「コント・ド・シャンパーニュ」は少しふくよかさが出ると思うんです。特にクラマンのシャルドネが入っていると、果実味のニュアンスが強く出ますし。ジューシーであり、複雑さもあるという点が、「コント・ド・シャンパーニュ」の奥深い味わいにつながっているのではないでしょうか。

注:ワインの原酒を混ぜ合わせる伝統的なワイン造りの技法のこと

テタンジェの至宝「コント・ド・シャンパーニュ」の魅力って?

北河:シャルドネ100%ですが、おっしゃる通り、非常に複雑味がありますよね。

杉山:やはり、どのグラン・クリュのシャルドネを使うかで、味わいが全く変わってくるので、 「コント・ド・シャンパーニュ」はブラインドで飲んでも当てられると思います(笑)。

北河:すごいです!

杉山:それほど思い入れが強いということで(笑)。「コント・ド・シャンパーニュ」は、グラン・クリュをアッサンブラージュすることで、「テタンジェ」らしさの表現が成立しているのでしょうね。

北河:お客様から飲んだ時の感想でよくお寄せいただくのが、熟成感といいますか…。

杉山:香ばしさもありますよね。樽熟成由来の香ばしさもあるのですが、本当に上品なグラン・クリュのシャルドネのシャンパーニュが熟成した際は、その香ばしさがふわっと 上がってくるんですよね。「コント・ド・シャンパーニュ」は、それが素晴らしくきれいに出ているので、それによって、余韻が非常に長く感じます。

北河:ブレンドの一部、5 %のみをオーク樽で4ヶ月間熟成させています。少しだけ空気に接触させることで、複雑なニュアンスを加えています。

記憶に残るシャンパーニュだから
また飲みたくなる

―「シャンパーニュの貴婦人」ともいわれる「テタンジェ」ですが、杉山さんは、「コント・ド・シャンパーニュ」を口にした際に、どのようなシャンパーニュと表現したくなりますか?

杉山:口に含むと、初めはとても華やかなんです。華やかなのですが、奥に何か深く香りが残っていく味わいがあって、「コント・ド・シャンパーニュ」はひと言で表せないんですよね。たとえるなら、「妖艶な女性」でしょうか。この複雑さからくる妖艶さ。

―いろいろな側面を持つ女性のイメージですね。杉山さんはワイン講師もしていらっしゃいますが、生徒さんにおすすめするならどんなふうに伝えますか?

杉山:「飲んだことのないタイプのブラン・ド・ブランです」と言っていますね。

―と、言いますと?

杉山:シャンパーニュ好きな方は、「ブラン・ド・ブラン」のイメージをある程度お持ちだと思いますが、いい意味で、それがちょっと裏切られるといいますか。その理由はやはり、先程お話したように、5つのグラン・クリュによるアッサンブラージュからも来ているでしょうし。そうすると、皆さん飲んでみたいと仰るんですよね。

北河:飲み方としてはいかがですか? 

杉山:もちろん、お食事と合わせてもおいしくいただけるのですが、個人的には、「コント・ド・シャンパーニュ」だけを飲んで、その余韻を楽しんでいます。ヴィンテージの古いものは、さらにその余韻の長さが素晴らしいので。

北河:大人の楽しみ方ですね。杉山さんのお店でも取り扱っていただいていますが、お客様は実際にどんなふうに「コント・ド・シャンパーニュ」をオーダーされるのでしょう?

杉山:たとえばご予約の時点でご予算をうかがって、今日は特別にお誕生日なのでシャンパーニュを開けたいとご相談された時などにも、おすすめしています。その時まで、「コント・ド・シャンパーニュ」を飲んだことがなかったとしても、一度飲むと、やはり記憶に残るシャンパーニュなので、皆さん、その後も何か特別な時には、以前飲んだシャンパーニュをもう一度予約できますか?とリクエストをいただくことも多いんです。

北河:そうなんですね。そういう特別な時に選んでいただけるのは、とても光栄です。

杉山:なので、「コント・ド・シャンパーニュ」をリストに載せるとすぐにオーダーが入ってなくなってしまうんですよ(笑)。 ですから、実は、あえてリストには載せていないんです。うちは、ホールのスタッフ全員がソムリエなのですが、接客させていただいて、この方はきっと「コント・ド・シャンパーニュ」がお好みに合いそうという方、その中でも、初めて「コント・ド・シャンパーニュ」を飲むという方に特におすすめすると、やはり、とても喜んでいただけます。一生の記憶に残る最初のシャンパーニュとして、おすすめさせていただいていますね。

北河:パリでも皆さん、特別な時に開けるのでしょうか?

杉山:そうですね。特別なお祝いの時には、「コント・ド・シャンパーニュ」を選ぶ方が多いです。

―実は今回、「コント・ド・シャンパーニュ」を造るにあたっての技術的なお話もトピックスに挙げようと思ったのですが、「テタンジェ」はそういった情報を公式サイトにも掲載していませんよね。

北河:テクニカルな話をあまりしない理由の1つに、彼らの美学として、「シャンパーニュは芸術だ」という考えがあるんですね。

杉山:なるほど。

北河:たとえば、画家がどんな絵の具をどれだけ使って絵を描いているか、普通は出来上がった絵を見て言わないですよね。それと同じように、シャンパーニュはアートなので、全体を見てもらって、飲んでもらって、それがいいと思ってもらえたらそれでよいというような考えなんですよね。

杉山:シャンパーニュのミレジメ(ヴィンテージ)の熟成期間は規定により最低でも3年のところ、「コント・ド・シャンパーニュ」は10年も寝かせていますよね。グラン・クリュのアッサンブラージュによる複雑さと、熟成、そこから生まれる余韻の長さ。いつか、その芸術が生まれるワイナリーやブドウ畑を実際に訪れてみたいです。

北河:ぜひ! ご一緒できる日を楽しみにしています。

テタンジェの至宝「コント・ド・シャンパーニュ」の魅力って?

 

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※ワインについては、記事掲載時点での情報です。