TRIP

ワインと巡る世界の美景旅 第10回
世界が注目する北海道余市のワイン。
その故郷を訪ねる旅

世界各地の美しい景色とその土地で育まれたワインを訪ねる“美景旅”。第10回目となる今回は、日本を代表するワインの産地、北海道の余市町を訪ねてみましょう。古くから果樹栽培が盛んな余市は、ブドウの生産量も国内屈指。冷涼な気候が育むブドウは、華やかな香りとキリリと引き締まった爽やかなワインを生み出し、余市ブランドとして世界からも注目を集めています。もちろん、豊かな自然が織り成す絶景スポットも点在。それでは、早速余市へと出かけてみましょう。

text WINE OPENER編集部

美景旅_第10回

ワインツーリズムとしても注目されている一大ブドウ産地、余市

余市があるのは、北海道南西部の積丹半島の付け根。本州と比べると冷涼な北海道ですが、暖流の対馬海流の影響を受ける余市は、北海道のなかでは比較的温暖。古くから果樹栽培が盛んでした。

 

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余市にあるウイスキー蒸留所が完成するまでの長期の熟成期間を乗り切るために、リンゴ栽培で経営を維持していたのは有名な話ですが、1980年代、生産過剰になったリンゴに代わって、ワイン専用種のブドウ栽培に着手したのが余市でのブドウ栽培の始まり。サッポロビールはそのなかでもいち早く余市のブドウ栽培のポテンシャルに着目し、1984年からケルナー種の栽培に取り組みました。

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現在、余市の農業はブドウ栽培が主力になるほどに成長しました。 さらに2011年、余市は北海道で初めてワイン特区に指定され、小規模ワイナリーが参入しやすくなりました。その結果、次々とワイナリーが誕生。石狩湾に注ぐ余市川の河口に位置する余市町と、その上流に広がる仁木町を合わせると、大小18の醸造所がひしめき、日々ワイン造りに切磋琢磨しています。

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レストランや宿泊施設を備えたワイナリーが誕生したり、複数のワイナリーや栽培農家が集まってワインイベントを開催したりと、ワインツーリズムとしても注目されています。

絶景、歴史探索、グルメ。楽しみがぎゅっと詰まった余市の見どころは?

見どころも豊富な余市。緩やかな丘陵地帯と日本海に面した町の一部はニセコ積丹小樽海岸国定公園に指定されており、美しい海岸線に沿って絶景スポットが点在しています。 余市湾の西側に張り出している急峻な断崖、シリパ岬は余市のシンボル的存在。約630万年前のマグマの海底噴出でできた岬で、周辺の海岸では柱状節理が見られます。

美景旅_第10回

シリパ岬から少し北西に向かうと現れるのがえびす岩と大黒岩。岸から十数mほどの浅瀬に並ぶふたつの岩で、向かって右が大黒岩、左がえびす岩と呼ばれています。海面に近づくにつれ細くくびれるえびす岩は、なんとも不安定に見えますが、荒波にも風雨にも耐え、優美な姿を見せています。

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さらに南西に進むと現れるのがローソク岩。豊浜町の沖合約500mのところにそびえ立つ高さ45mほどの岩で、輝石安山岩質のもろい性質のため、これまでにたびたび崩落があり、昭和10年代の大きな崩落で現在の姿になりました。

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余市町から海岸線を一路西へ、積丹半島の西端にあるのが、このエリアきっての景勝地、神威岬です。海に向かって延びる高さ80mの海食崖は緑に覆われ、晴れた日には積丹ブルーと呼ばれるまっ青な海とのコントラストが爽快です。

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抜けるような青い海を両側に眺めつつ遊歩道を20分ほどトレッキングすると岬に先端に到着。かつてここは女人禁制の場所で、現在でも入口にある門は「女人禁制の門」と呼ばれていますが、現在は女性も入ることができます。

余市の東側には運河やガラス工芸で有名な小樽があります。明治時代、北海道の物資の供給基地として整備された小樽港を中心に発展した小樽は、港から運ばれる物資を保管するため、海沿いには倉庫が次々と建てられ、大正12年には運搬作業を行うために小樽運河が完成しました。

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当時の好況ぶりは、歴史的建造物として残る銀行群の雄壮な建物からも偲ぶことができます。 現在、小樽運河周辺の倉庫はレストランやショッピングエリアにリノベーションされ、街歩きも楽しいエリアとなっています。

また海に面した小樽は海鮮の宝庫。特に寿司が有名で、町中には100軒以上の寿司店が林立しています。手軽な回転寿司から、一流の職人が腕を奮う名店までさまざま。お気に入りの店を探してみるのも楽しいものです。

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1984年から余市でブドウ栽培を始めたパイオニア、グランポレール

日本を代表するブドウの産地でワインを造るグランポレールが、余市で初めてケルナーの栽培を始めたのは1984年のこと。それは余市町のパンフレットに町の歴史として掲載されるほど、後の余市の歴史を左右する大きな出来事でした。

梅雨のない北海道はブドウの生育期に降水量が少なくブドウの成熟が進みやすく、また年間を通して気温が低いためきれいな酸味が残ります。現在、余市で主に栽培されているのは、白ワイン用ブドウではケルナーをはじめミュラートゥルガウ、バッカス、赤ワインではツヴァイゲルトレーベやピノ・ノワールなど。グランポレールはブドウ造りに真摯に取り組む6戸の栽培農家と契約し、良質なブドウを用いてワインを造っています。

 

グランポレール
グランポレール 余市ケルナー
参考小売価格:税抜1,908円

余市の6戸の契約農家が栽培するケルナーを用いて造った白ワイン。グレープフルーツを思わせる爽やかさと、青リンゴのようなみずみずしくフルーティーな香りが特長。酸味と甘味のバランスが絶妙で、酢飯との相性がいいので寿司と合わせていただくのもおすすめです。

 

 

グランポレール
グランポレール 余市ピノ・ノワール2018
参考小売価格:税抜4,608円

ピノ・ノワールは栽培が難しい品種ですが、余市のブドウ農家が試行錯誤と手間暇を惜しまず栽培に勤しんだ努力が報われ、今や余市のピノ・ノワールと言えば、世界も注目するハイクオリティのワインとして知られています。「グランポレール 余市ピノ・ノワール2018」は、余市のブドウ造りの先駆者、弘津さん親子が作るピノ・ノワールを100%使用しています。

 

購入はこちらから(外部サイトにリンクします)

 

日照・排水性に優れた南向きの傾斜にある弘津さんのブドウ畑からは、遠くにシリパ岬も望めます。

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海からの風が適度な寒暖差をもたらす恵まれた立地とはいえ、気難しいピノ・ノワールを育てるには、造り手の惜しみない努力が欠かせません。その作業のひとつをご紹介すると、結実期に房内に残った枯れ花が病害を引き起こすのを防ぐため、ブドウ一房ずつコンプレッサーでエアを吹きかけ、房に残る花のかすを取り除いています。根気と忍耐が必要な作業ですが、それが病気の発生を抑え、健康で良質な状態での収穫に繋がるのです。

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グランポレール 余市ピノ・ノワール2018」は、こうして手塩にかけて育てられたブドウから、さらに品質の良いものだけを選果して醸造しています。ベリー系のチャーミングな華やかさとスミレのような上品な香りを持ちながら、口当たりは滑らかで、適度なタンニンと酸味を持ち、料理と合わせるのはもちろん、ワインとチーズだけでもその豊かな風味を堪能することができます。余市の風土に思いを巡らせながら、グラスを傾けてみてはいかがでしょうか。

 

※ワインについては、記事掲載時点での情報です。

 

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