ボルドーやブルゴーニュといえば世界的なワイン生産地ですが、このように「●●産」と原産地名を名乗るには、公的に「地理的表示」の指定を受ける必要があります。
この地理的表示の指定を国内で初めて受けたのが「山梨ワイン」です。
山梨のワインの品質が高いことはもちろんのこと、日本のワイン造り発祥の地であり、また80以上のワイナリーが集結した日本一の生産量を誇ることなどから指定を受けました。
今回はそんな和食にも合わせやすく、国際的に評価の高い山梨ワインについて、くわしくお伝えしていきます。
目次
山梨は日本ワイン発祥の地
現在、北は北海道から南は九州まで全国に拡がっている日本のワイン造りですが、その歴史は山梨県から始まります。
日本のワイン造りが始まり、発展した地
日本で本格的ワインが製造されたのは1874年(明治7年)のことです。山田宥教と詫間憲久という2人の人物が山梨県の甲府でワイン造りを始めました。
当時は明治政府により、急速な西洋化と殖産興業政策が打ち出されていた時期であったことから、ワイン造りはその後押しを受けました。
1877年(明治10年)には勝沼に大日本山梨葡萄酒会社(通称 祝村葡萄酒醸造会社)が設立されました。山梨県はもともとブドウの一大産地だったこともあり、その後ワイナリーが続々と誕生します。
現在ワイナリーは80カ所を超え、その数はワインの生産量とともに、他の地域を圧倒する規模となっています。
日本で初めてワインの「地理的表示」を獲得
そんな国産ワイン発祥・発展の歴史を踏まえて、2013年日本のワインで初めて「山梨」が地理的表示(GI)に指定されます。
「地理的表示」とは、「ブルゴーニュ産ワイン」や「パルマ産生ハム」といったように、国際的に原産地を名乗ることができる権利のことを指します。
つまり、「山梨のワインは世界のどこに出しても恥ずかしくない日本の代表である」と国からお墨付きを与えられたということです。
山梨は歴史・実績ともに日本を代表するワイン産地といえるでしょう。
ちなみに、「山梨の」地理的表示を認められるには、
・山梨県産ブドウを100%使用
・甲州種など限られたブドウ品種を使用
・山梨県内で醸造・容器詰めしたワインであること
といった厳しい基準をパスする必要があります。
山梨ワインの主な品種
山梨では日本固有の品種から、国際的にメジャーな品種まで多くのブドウ品種が栽培されています。
ここではその中から代表的なものを紹介します。
甲州種
甲州種は古くから我が国で栽培されている日本固有のブドウ品種です。
発祥については、
・大善寺説(行基説)・・・718年、甲斐国を訪れた僧行基が右手にブドウを持った薬師如来の夢を見た。行基はこの地に大善寺を開き、薬師如来をまつって甲州種の栽培を始めた
・雨宮勘解由(あめみやかげゆ)説・・・1186年、現在の甲州市勝沼町に住む雨宮勘解由が付近の山で発見した山ブドウを改良し育てた
という2つの説がありますが、どちらにしても800~1,000年程前から山梨県の勝沼周辺で栽培されてきたことがわかります。
2010年には日本固有のブドウ品種として初めてOIV(国際ブドウ・ブドウ酒機構)に登録されました。
薄い藤紫色の果皮で、ワイン、生食どちらにも適しており、ワインに仕立てると和柑橘系の香りがフレッシュで、上品で穏やかな酸味をもつ白ワインになります。
瑞々しく繊細な味わいで、出汁のニュアンスもあるため和食に合わせやすく、日々の食事のお供におすすめしたいブドウ品種です。
甲州ワインについては、「日本のワインといえば甲州ワイン!その魅力とは」でも紹介しています。
マスカットベーリーA種
マスカットベーリーA種は、1927年(昭和2年)「日本ワインの父」と呼ばれる川上善兵衛氏によって開発された黒ブドウ品種で、食用としても多く流通しています。
アメリカ系のべーリー種とヨーロッパ系のマスカット・ハンブルグ種を掛け合わせ、日本の風土に合うように開発されたため全国で広く栽培されていますが、山梨はその60%を占め、 圧倒的な生産量を誇ります。
出典:「国内製造ワインの概況(平成30年度調査分)」(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/seizogaikyo/kajitsu/pdf/h30/30wine_all.pdf
タンニン(渋味)は穏やかで甘いイチゴやキャンディの様な香りを放ち、軽い味わいのライトボディなワインに仕上がるため、ワインを飲み慣れない初心者の方にもおすすめの品種です。
カベルネ・ソーヴィニヨン種
カベルネ・ソーヴィニヨン種は世界中で栽培されている赤ワイン用ブドウの代表的な品種です。
フランスのボルドー原産ですが、気候に対する適応力が高いため、寒冷な地域から温暖な地域まで様々な地域で栽培されています。
濃いめの色合い、力強いタンニン(渋味)、しっかりとした骨格という典型的なフルボディのワインになり、熟成が若いうちはスパイシーな香りを放ち、熟成が進むにつれてまろやかな香りと味わいに変化していくのが特長です。
山梨で栽培されたカベルネ・ソーヴィニヨン種は少し軽めの、飲みやすい印象のものが多くなっています。
シャルドネ種
「赤ワインの王様」と呼ばれるカベルネ・ソーヴィニヨン種に対し、「白ワインの女王」と称されるのがシャルドネ種です。カベルネ・ソーヴィニヨン種以上に環境への適応性が高いため世界各地で栽培されています。
シャルドネ種はその土地のテロワール(気候・土壌・水質といったブドウの生育環境)がそのままワインの特長として反映されるため、同じシャルドネ種でもバラエティに富んだ味わいを楽しめるでしょう。
山梨のシャルドネ種はさわやかな果実の香りとフレッシュで繊細な味わいをもち、和食にも合わせやすいのが特長です。
おすすめの山梨ワイン
・グランポレール 山梨甲州<樽発酵>(参考小売価格:2,508円)
軽快でスッキリとした酸が特長の甲州種に、樽発酵させることでふくよかな力強さを加えた白ワインです。
辛口でしっかりとした酸をもちつつ、樽由来のボリューム感もあわせもつため、サラダから魚介類、鶏料理などのお肉にまで幅広く合わせることができます。
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・グランポレール 甲州(参考小売価格:税抜1,808円)
低温発酵でブドウのアロマを引き出しつつ、発酵終了後も澱(おり)とともに熟成を続ける「シュール・リー」という手法を用いることでコクをプラスした白ワインです。
甲州種らしいフルーティーさと、さわやかな酸味が特長です。
辛口で軽やかな味わいのため、お刺身やお寿司、白身魚の天ぷらなどによく合います。
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・グランポレール 甲斐ノワール(参考小売価格:税抜1,808円)
ベリー系の甘い香りの中にミントのようなスッキリとした清涼感のある赤ワインです。
果実味はしっかりとしていますが、タンニンは穏やかで口当たりが軽いため、非常に飲みやすいワインに仕上がっています。
肉じゃがや鯖の味噌煮といった煮物とも相性抜群です。
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※ワインについては、記事掲載時点での情報です。
まとめ
日本初の「地理的表示」ワインとして世界的にも評価の高い山梨ワイン。
フレンチやイタリアンはもちろんのこと、和食とも相性が良いため、毎日のお食事に合わせやすいのが嬉しいところです。
日本が誇る山梨ワイン、ぜひ一度お手にとって、食卓のお供にしてみてください。
この記事を監修したソムリエ
杉浦直樹
歌舞伎役者として人間国宝 中村雀右衛門に師事。15年ほど主に歌舞伎座に舞台出演。その後銀座のクラブマネージャーを経て、J.S.A認定ソムリエ資格を取得。現在は支配人兼ソムリエとして、ブルゴーニュとシャンパーニュの古酒を専門とし たフレンチレストランを経営する。
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