CULTURE

ワイン好きが注目する国際資格「WSET」って何?

コロナ禍によって様々な場面がデジタル化されるなど、人々の生活様式や意識は大きく変化しました。また、リモートワークなども影響し、資格取得に関する意識が高まったという声も耳にします。読者の方々も、ワイン資格に興味を持った方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、いま世界的に受講者が増えている世界最大規模のワイン&スピリッツ教育機関 「WSET(ダブリュー ・エス・イー・ティー)」に注目し、レベル別資格を取得するメリットについて紹介していきます。

text WINE OPENER編集部

WSET

世界最大のワイン教育機関「WSET」

WSETはロンドンに本部を置く国際的な酒類教育機関で、現在では世界70カ国に認定校があり、年間約11万人が認定試験を受験しています。国際的に認められている認定資格なので、WSETの知識やテイスティング基準を習得すれば、日本以外のワイン好きの方とも共通知識を持って交流ができるようになります。ワイン業界で勤務されている方の場合は、国際的な展望を持つことができる重要な資格と言えるでしょう。

WSETの認定資格は4つに分類されている!

WSETの認定資格はLevel1~4の4つに分かれ、初心者からワイン業界のプロフェッショナルまで、 幅広い難易度のカリキュラムがあります。日本で最も知名度のあるワイン関連資格であるJSAソムリエ資格を受験する場合は酒類業界での勤務歴が必要ですが、WSETは勤務歴が 無い方でも受験することができます。だからこそ、飲食店や酒類輸入会社に勤める方はもちろん、お酒に関係のない企業にお勤めの方や、趣味を探している方も数多く受講されています。また、JSAソムリエとの大きな違いは、認定講師による授業を受けることが必須であるという点。特にLevel 2~4は数か月から数年の学習時間を掛けるため、ワインスクールやスタディグループの中でワインに興味のある仲間とのコミュニティづくりができたり、戦友と切磋琢磨しながら勉強できることも楽しみのひとつといえるでしょう。

WSET Level1: ワイン概要を知る

初めてワイン業界に足を踏み入れる方や、ワインに興味のある方におすすめのレベルです。短時間でブドウ品種、醸造、テイスティング基礎などを学ぶことができます。

言語:日本語または英語
問題:4択マークシート式30問/45分
正答率:70%以上で合格
資格取得率:90%
受講期間の目安:1日(7時間)

WSET Level2:ラベルを読み解く

ワインを定期的に飲んでいて、産地や品種もある程度知っているワイン好きの方であれば、 テイスティングを含む授業で学習ができる Level2がおすすめです。「SAT(Systematic Approach to Tasting Wine)」を使ったロジカルなテイスティング方法はもちろん、栽培、醸造、品種、産地など、ワインを体系的に学ぶことができます。

言語:日本語または英語
問題:4択マークシート式50問/60分
正答率:55%以上で合格
資格取得率:85%以上
受講期間の目安:2~3か月

 

Level 1と2の試験は、マークシートのみでテイスティングの試験はありませんが、授業では毎回4~6種類のテイスティングを行います。Level2はWSETの真髄とも言える本質をついた内容になっています。

WSET Level3:ワインを解説する・スタイルと品質をひも解く

WSET Level2資格を持つ方、または同等知識を有することを証明できる方のみ受講可能。 JSAソムリエ資格と同等もしくはそれ以上の難易度とも言われます。マークシートの他、記述問題もあるため、Level 3に合格された方はワインのスタイルや産地、品質をロジカルに説明できるようになっているでしょう。

言語:日本語または英語
問題:4択マークシート式50問/記述式回答 計120分/ブラインドテイスティング2種類 計30分
正答率:55%以上で合格
資格取得率:40%程度
受講期間の目安: 6~7か月

WSET Level4 Diploma:ワイン業界のプロフェッショナルを目指す

ワインに関する深い知識と、ビジネス的な側面や専門家として確かな評価ができる能力を認定する資格です。 Level 3の資格保有が受講の必須条件です。オンラインで学習を進めるため世界各国の生徒がクラスメイトになります。WSETコースの中で最難関であるLevel 4を持っている方は、世界基準でもワインの専門知識を有することを証明することができます。また、Diplomaを取得すれば、ワイン界の最高峰資格であるマスターオブワインを目指すという道も見えてきます。

言語:英語のみ
資格取得者数:世界で約13,000名以上、日本では現在128名(2023年8月現在)
正答率:55%以上で合格
受講期間の目安:1年半以上

誰でも適切なワイン評価が可能に!

WSETの教育カリキュラムは独自に開発されたもので、初心者からワイン業界のプロフェッショナルまで幅広く対応できるよう体系的につくられています。つまり、「なぜこの品種で造ったワインは、このような特徴があるのか」「なぜこの産地では、このようなワインが造られるのか」といったような、非常にロジカルな知識を身につけることができます。WSETで学ぶワインテイスティングの方法は「SAT」という独自のメソッド(※WSET Level2~4で学びます)。香り・味わいといった感覚を評価する場合、表現が主観的になることがありますが、SATを理解することで論理的にワインの味わいや品質を分析することができ、品種や産地の個性に関する理解も深まります。 ワインのスタイルと品種・産地などの関係を知ることで、自分の好きなワインが更に分かるようになったり、人の好みに合わせてぴったりのワインをお勧めすることもできるようになるでしょう。

WSET Level 4 Diplomaに合格した
ワインオープナー編集部員・辻井に聞きました!

ワインの味わいを捉えるときのポイントは?

「WSETを学び始めたばかりの方であれば、SATの項目をもれなくしっかり押さえることを意識しましょう。まずは外観(ワインの色合い)、香り(果実、醸造、熟成による香り)、味わい(甘味、酸味、タンニン、アルコール、ボディなど)といった、試飲の時にチェックする項目を ひとつずつ確認していきます。その上で、自分が感じている香りや味わいを、授業で講師の方の解答と照らし合わせて認識を調整していくことで、正しくワインを評価することができるようになっていきます。例えば味わいに関して『少し甘く感じる』とき、それが『オフドライ』なのか『半辛口』なのか『半甘口なのか』、SATの基準ではどれに該当するのか照準を合わせていくことになります。慣れるまでは難しいですが、 ワイン業界で働く方にとっては適切に表現できるスキルを身につけられるチャンスですし、趣味で学ばれている方もワインの楽しみが広がったり、国内外のワイン好きと共通言語でコミュニケーションができるようになると思います」

SATでワインを表現してみよう!

WSETで学ぶ「SAT」基準をもとに、ぜひワインテイスティングに挑戦してみましょう。試飲におすすめしたいのは、「ポートレート シラーズ」と「ナパ・ヴァレー シャルドネ」の2本です。ぜひSAT基準の「外観」「香り」「味覚」と、ご自身の感想を照らし合わせてみてください。ワイン好きの仲間を集めて、まずはゲーム感覚でテイスティングしてみるのもおすすめです! 

WSET

■ワイン紹介

ピーター・レーマン
ポートレート シラーズ
参考小売価格:税抜2,000円

「ポートレート シラーズ」はブドウ品種と産地の個性が明確に表現された典型的なオーストラリアのシラーズなので、品種・産地の個性を勉強するときにはぴったりの1本です。このワインを見たときに、色の濃さは「濃い」と判断します。色合いが濃いということは、果皮が厚い品種を使っている可能性や、色素をしっかり抽出する醸造方法をしている可能性が考えられます。また、香りがカシスやブラックベリーなどの黒系果実が主体になっているので、ここからも品種を絞り込むことができます。ユーカリのような香りは、オーストラリアワインに現れることがある特徴的な香り。味わいは、アルコールも高くフルボディですが、これはオーストラリアのシラーズにも当てはまる特徴です。

ワイン情報とSAT Level2の項目記載例
(※キャプランワインアカデミー監修)

ワイン名 ポートレート シラーズ
生産国 オーストラリア
生産エリア バロッサ・ヴァレー
生産者 ピーター・レーマン
品種 シラーズ
ビンテージ 2020
アルコール度数 14.5%
参考小売価格(税抜) 2,000円
外観 色の濃さ 濃い
紫色
香り 香りの強さ 中程度
シンプル
第1 ブラックベリー、ブラックチェリー、ユーカリ、カシスジャム
第2 カカオ、バニラ、リコリス、スモーク
第3
味覚 甘味 辛口
酸味 中程度
タンニン 中程度
タンニンの種類 熟した
アルコール 強い 14-
ボディ フル
風味の強さ 強い
余韻 中程度

 

■ワイン紹介

ベリンジャー
ナパ・ヴァレー シャルドネ
参考小売価格:税抜3,600円

「ナパ・ヴァレー シャルドネ」は“これぞカリフォルニアのシャルドネ!”といった王道の品種・産地特長を備えた1本。ワイン勉強中の方のテイスティングにもぴったりのワインです。最初に感じられるバニラやトーストの香りは新樽で熟成したワインの特徴で、続くバターやクリームの香りはマロラクティック発酵(※乳酸菌がワイン中のリンゴ酸を乳酸に変える発酵)に由来するものです。また、酸味が中程度でアルコールが高いことから、温暖な産地で栽培され完熟したブドウを使用していると考えられます。こういった第2アロマがはっきりと現れる温暖なシャルドネ産地と言えば、アメリカ・カリフォルニアが 選択肢としてイメージできるのではないでしょうか。

ワイン情報とSAT Level2の項目記載例
(※キャプランワインアカデミー監修)

ワイン名

ナパ・ヴァレー シャルドネ

生産国

アメリカ

生産エリア

カリフォルニア

生産者

ベリンジャー・ヴィンヤーズ

品種

シャルドネ

ビンテージ

2019

アルコール度数

15.0%

参考小売価格(税抜)

3,600円

外観 色の濃さ

中程度

レモン色

香り 香りの強さ

強い

シンプル

第1

黄桃、洋ナシ、リンゴ、パイナップル

第2

バター、クリーム、バニラ

第3

ハチミツ

味覚 甘味

辛口

酸味

中程度

タンニン

タンニンの種類

アルコール

強い 14-

ボディ

フル

風味の強さ

強い

余韻

中程度

※本記事はワインスクール「キャプランワインアカデミー」にご協力をいただき作成しています。
※「キャプランワインアカデミー」はWSET Level 1~4を国内で受講できる唯一のワインスクールです。
https://www.caplan.jp/wine/index.html(外部サイトにリンクします)

 

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※ワインについては、記事掲載時点での情報です。