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世界のおいしい旅 第5回
ニュージーランド最大のワインの産地マールボロ。
豊かな大地の恵みをいただく地産地消の精神

世界のワイン産地を巡る旅。第5回となる今回はニュージーランドのマールボロをご紹介します。南島に位置するマールボロは、複雑な海岸線や広大な森林地帯が広がる自然豊かな場所。日照時間が長く水はけのよい土壌に恵まれたニュージーランド最大のワインの産地としても知られています。このワインの故郷で、人々はどのようにワインと食を楽しんでいるのでしょうか。ニュージーランドワインの生産者団体、ニュージーランド・ワイングロワーズ(外部サイトにリンクします)の中澤敬英さんにお話を伺いました。

text WINE OPENER編集部

世界のおいしい旅 第5回

ニュージーランド・ワイングロワーズ
中澤敬英さん
世界のおいしい旅 第5回
大学時代の訪問をきかっけに、ニュージーランドに魅せられワーキングホリデー制度を利用して移住。ニュージーランド観光局を経て、現在はワインの生産者団体ニュージーランド・ワイングロワーズに勤務し、ニュージーランドワインの保護と魅力の発信に努めている。

日照時間の長さと水はけのよい土壌に恵まれたブドウ栽培の理想郷

―マールボロはニュージーランドのどのあたりにあるのでしょうか?

中澤さん(以下敬称略):ニュージーランドは、主に北島と南島の2つの島からなり、マールボロは南島の北東部に位置しています。国土は南北に長く、その距離実に1,600km。東京と札幌間が直線距離で約820kmなので、その倍くらいの長さですね。南半球にある国なので、北が温暖で南に行くほど冷涼な気候になります。

地図をご覧いただくとわかる通り、北側は複雑な海岸線となっており、ここはマールボロ・サウンドと呼ばれる国を代表する景勝地。150kmにわたって続く入り組んだ海岸線には入り江やビーチが点在し、その美しい景色を眺めながらハイキングやクルーズを楽しめます。

世界のおいしい旅 第5回
写真提供:ニュージーランド政府観光局

野鳥が多いので、国内外からバードウォッチャーも訪れる自然豊かなエリアです。

なぜそのマールボロでワイン栽培が盛んになったのでしょうか?

中澤:日照時間の長さと水はけのよい土壌、昼夜の寒暖差、そして大規模生産が可能な広大な平原という、ブドウ栽培とワイン造りに適した環境がそろっていたことが主な理由です。

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写真提供:New Zealand Winegrowers Inc.

現在、マールボロのブドウの栽培面積は国全体の約7割に達し、国を代表するワインの産地となっていますが、実は歴史はそう古くはありません。マールボロで最初にブドウの木が植えられたのは 1973 年といわれています。

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写真提供:New Zealand Winegrowers Inc.

その2年後、この地を代表するソーヴィニヨン・ブランの栽培が始まり、マールボロでのワイン造りが一気に花開きました。ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランはパッションフルーツや柑橘の果実味に、ハーブや青草のフレッシュな香りが特長。衝撃的ともいえる鮮烈な味わいに人々は魅了され、1980年代後半から世界で認められる存在となりました。今やニュージーランドのワインといえばソーヴィニヨン・ブランというのが共通認識。マールボロでも栽培するブドウの8割をソーヴィニヨン・ブランが占めますが、実はピノ・ノワールやシャルドネなど、さまざまな種類のブドウ栽培とワイン造りも行っています。

マールボロは観光で訪れても楽しめる場所なのでしょうか?

中澤:もちろんです。中心となるのはブレナムという町で、レストランやカフェ、ホテルが点在しています。町から出るとすぐにブドウ畑が広がり、近隣には30カ所以上のワイナリーが点在しています。ワイナリーを巡るツアーも催行されていますが、自転車で巡るのも楽しいですよ。

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写真提供:New Zealand Winegrowers Inc.

アウトドア派ならば、隣町のピクトンがおすすめです。ニュージーランドの南島と北島を結ぶフェリーが発着する港町で、マールボロ・サウンドを巡るクルーズや、シーカヤックやドルフィン・ウォッチングなどのアクティビティの拠点となっています。

魚介や肉に酪農製品も。あらゆる食材に恵まれた豊かな食卓

海にも近いのですね。では魚介類をよく食べるのでしょうか?

中澤:シーフードはとてもおいしいですね。有名なのはムール貝。ニュージーランドのムール貝はグリーン・リップド・マッスルというやや緑がかった色合いで、身が厚く濃厚な味わいが特長です。ムール貝の養殖はニュージーランド全土で行われていますが、マールボロ・サウンドは国内の水揚げ量の80%を占める名産地なんです。

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ムール貝はワイン蒸しが代表的な食べ方ですが、マールボロでは必然的にソーヴィニヨン・ブランが使われることが多く、風味豊かなワインをたっぷりと使ったワイン蒸しはこの土地だからこそ味わえる贅沢な味わい。当然、キリリと冷えたソーヴィニヨン・ブランとの相性は抜群です。

家庭でよく食べる料理ですが、ムール貝を名物にするレストランも多いのでぜひ味わってみてください。

魚介類が豊富なのはもちろんですが、ニュージーランドは酪農、畜産業も盛んなのでチーズなどの乳製品、牛肉やラム肉も絶品ですよ。

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野菜や果物の生産も盛んですが、日本のように一年中スーパーであらゆる季節の野菜が手に入るという印象ではなく、その季節に採れるものをおいしく食べる、というのが基本です。旬のものはそのままで十分おいしいので、味付けや調理法はシンプルなものが多いですね。

四季折々の味覚を楽しむんですね。

中澤:日本人も旬のもの、初物好きですが、ニュージーランドの人たちも大好きです。9月から2カ月間の間だけ、ホワイトベイトというしらすのような小魚が解禁になります。実は5種類のニュージーランド固有種の稚魚で、このホワイトベイトが解禁になると食材店やスーパーのほか、レストランのメニューでもホワイトベイトを見かけるようになります。定番はホワイトベイトのフリッターやオムレツ。素朴な見かけに反して高級なんですが、ニュージーランドの人々にとってはこの時期に一度は食べたい旬の味覚なんです。

世界のおいしい旅 第5回

レストランに行くときに日本人が注意することはありますか?

中澤ニュージーランドのレストランはカジュアルな店が多いので、リラックスして訪れていただいて大丈夫です。通常のマナーさえ守っていれば特に気をつけることはありませんよ。とてもおおらかな国民性なんです。チップの習慣がないのも日本人観光客の方には気楽だと思います。

今後ニュージーランドではやりそうなもの、注目の展開などありますか?

中澤:食のトレンドではないですが、実は携帯メールの絵文字に、白ワインってないんですよ、赤ワインはあるんですが。ニュージーランドといえば白ワインなので、白ワインの絵文字が公式に採用されるよう業界団体に申請しています。

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写真提供:New Zealand Winegrowers Inc.

残念ながら2022年の申請は通過しなかったので、次回2024年の申請に向けてチャレンジしています。ある日、携帯で白ワインの絵文字が打てるようになったら「お、ニュージーランドのワイン団体の活動が実ったな」と思っていただければと思います(笑)。

ニュージーランドののどかな空気感が伝わってきました。おおらかで豊かな大地を想像しながらワインを飲むと一層おいしく感じられそうです。本日はどうもありがとうございました。

ニュージーランドワインのパイオニア、マトゥアの造るワイン

1974年、北島のウェストオークランドにニュージーランドで初となるソーヴィニヨン・ブランを植樹したマトゥア。ニュージーランドにおけるソーヴィニヨン・ブランのパイオニアとして知られ、ニュージーランドワインに革命をもたらしました。印象的なラベルは、原住民マオリへの敬意が込められているとともに、飲み頃の温度になると雪マークが浮かび上がるという遊び心も素敵です。

【おすすめ白ワイン20選】透明な色にくぎづけ。白ワインの洗練された魅力に迫る!

マトゥア
リージョナル ソーヴィニヨン・ブラン マルボロ
参考小売価格:税抜2,008円

パッションフルーツの豊かな香り、トマトの葉のようなグリーン系のアロマを持つ、軽快な白ワイン。フレッシュな酸味と豊かな果実感の、味わいのバランスがよく、タコやスモークサーモン、カルパッチョなどの魚介類との相性が抜群です。

 

 

 

マトゥア
リージョナル ピノ・ノワール マルボロ
参考小売価格:税抜2,408円

ストロベリーやチェリーの香りにかすかなスパイスを感じるフレッシュな味わいのピノ・ノワール。熟成に入る前に3日間の醸しを行うことで、味に深みとコクを与えています。白身魚やラム肉、牛の赤身肉などにぴったりです。

 

 

 

PN25マトゥア リージョナル ピノ・ノワール・ロゼG01外観

マトゥア
リージョナル ピノ・ノワール ロゼ マルボロ
参考小売価格:税抜2,008円

野イチゴやネクタリン、レッド・カラント、クランベリー、ピーチのような芳醇な果実の香りときりっとした後味が爽やかな、夏にぴったりのワイン。ブドウをていねいに圧搾し、果汁を数種類の酵母で発酵させ、発酵後にブレンドを行っています。カルパッチョやペスカトーレとともにどうぞ。

 

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※ワインについては、記事掲載時点での情報です。

 

マトゥア