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世界のおいしい旅 第4回
イタリアの伝統的な生活を守るアブルッツォ州、
ワインと相性抜群の郷土料理に注目!

旅先ではご当地グルメが欠かせない!という皆さまにお届けする“おいしい”旅の話。第4回はイタリア中部、アドリア海に面したアブルッツォ州を紹介します。ローマから日帰り圏内にありながら、日本ではあまり知られていない秘境エリア。古きよきイタリアの暮らしが残るアブルッツォ州の魅力を、上質な旅を提案するユーラシア旅行社(外部サイトにリンクします)の福永智之さんと佐藤進子さんにうかがいました。

text WINE OPENER編集部

世界のおいしい旅 第4回

世界のおいしい旅 第4回
株式会社ユーラシア旅行社
企画部 福永智之さん(右)、専属添乗員 佐藤進子さん(左)

知る人ぞ知る「素顔のイタリア」に出合える場所

―日本ではアブルッツォ州の知名度はあまり高くありませんが、どのような場所なのでしょうか?

福永さん(以下敬称略):イタリア中部のアドリア海側に広がる州で、ローマがあるラツィオ州の東に位置します。州都のラクイラはローマから車で2時間ほどで行けるのでアクセスはいいのですが、日本からの旅行ツアーにはほとんど登場しない州のひとつです。

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佐藤さん(以下敬称略):私は添乗員としてイタリアに100回以上渡航していますが、アブルッツォ州は数えるほどしか行っていないですね(笑)。でも見どころがないわけではなく、海も山もある美しい自然や、情緒あふれる町並み、歴史的な教会など、知れば知るほど魅力が見つかるような場所です。

イタリア中央部を縦断するアペニン山脈最高峰のグラン・サッソをはじめ山地が多く、登山やトレッキングには最適なんですよ。

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古代ローマ時代から羊と共にあった伝統の暮らし

―自然が豊かなエリアなんですね。ということは食材も豊富なのでしょうか?

福永:それが決して豊かな土地ではないんです。東海岸はアドリア海でとれる海の幸に恵まれていますが、内陸部は険しい山に覆われ平地が少ないため農業には適しません。ただし丘陵で栽培できるオリーブやフルーツなどは多いですね。

佐藤:アブルッツォ州は中世には毛織物産業で栄えたのですが、今でも季節ごとに牧草を求めて羊を移動させる移牧が盛ん。人より羊のほうが多いなんていわれていて、伝統的に羊肉を食べる習慣があります。アロスティチーニという羊の串焼きは、肉汁がしたたり旨味たっぷり。アブルッツォ州のレストランでは定番のメニューです。たいてい「5本~」などの最少注文数が設定されているのですが、地元の人たちは5本どころではなく、ひとりで10本、20本と食べていて驚かされます(笑)。

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また羊乳で作ったチーズ、ペコリーノもよく食べられています。ほのかに草原の香りがただようチーズは優しい味わいです。ほかにサラミやハムなど保存食が豊富なのも山がちなアブルッツォ州ならではの食文化といえるでしょう。

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キタッラと呼ばれる卵を練り込んだパスタもぜひ食べたい名物料理。キタッラとはギターという意味で、その名のとおり四角い木の枠に弦を張ったギターのような道具でパスタを切ります。

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パスタ生地を綿棒で押し切るので、断面が四角いのがユニークですよね。羊肉のラグーソースやミートボール、キノコなどを合わせていただきます。

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―生活に羊が欠かせないことが分かりますね。それ以外に特長的な食材はありますか?

佐藤:「そこにある食材をいかにおいしく食べるか」という意識が浸透しているので、レストランでも家庭でもその時期にとれた旬の食材を使っている印象です。白インゲンなどの豆類やキノコは豊富で、おいしいですよ。そういう意味では、もともと地産地消やスローフードの概念が根付いているといえそうです。

トラットリアやバールでも伝統的なレシピにのっとった料理が多く、流行に左右されない素朴なイタリア料理を味わえます。

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アドリア海側は透明度の高い海が広がり、夏は海水浴客で賑わいます。海沿いにはトラボッキという伝統の網漁に使う小屋があり、海に向かって突き出した桟橋と小屋は東海岸独特の風景。今では実際に漁に使われることはほとんどないようですが、小屋を改装したレストランが点在し、新鮮なシーフードを食べさせてくれます。

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港町のペスカーラやオルトーナなら、食堂やバールでも港にあがったばかりのタイやタコ、イカ、エビなどが用意されています。シンプルなカルパッチョからフリットや煮込みまで、どれも絶品。地元の人たちもワインを片手に楽しんでいます。

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佐藤:シーフードに合わせるなら、白ブドウのペコリーノやトレッビアーノ を使った酸味が爽やかな白ワインが定番です。でもアブルッツォ州のワインといえば、何といっても“モンテプルチアーノ・ダブルッツォ”ですね。モンテプルチアーノはほかの州でも栽培されている黒ブドウですが、Montepulciano d’Abruzzoというイタリア語を見ればわかるとおり、アブルッツォのモンテプルチアーノという名称をもつ州を代表するワインです。
生産地域は州全土とかなり広範囲で、コストパフォーマンスのいい赤ワインとして世界中で親しまれています。地域によって品質の差はありますが、近年は国際的な評価が高まっていて、上質なワインを生み出す作り手にも注目が集まっています。

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福永: 平野が少ないアブルッツォ州ですが、海岸線の丘陵地帯や、標高の高くない山岳地帯にはブドウ畑が広がっています。温暖な気候と日照に恵まれた水はけのよい斜面では、濃厚で旨味のあるブドウが育ちます。

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ワイン生産量ではイタリアの20州のなかで5位につけているほど(2019年)。そのうち赤ワインが58%を占め、最も有名なのが“モンテプルチアーノ・ダブルッツォ”なんです。

果実味が豊かでスパイスのニュアンスも感じられる赤ワインは、どっしりとした料理と相性抜群。ローマやミラノなどで食べる洗練されたイタリア料理ではなく、素朴でボリュームたっぷりの、アブルッツォ州ならではのイタリア料理と合わせるのが、やっぱり最高だと思います。

―アブルッツォ州の羊肉料理と赤ワイン…なんだか小説に出てきそうな組み合わせ。現地のバールに行きたくなりました! 本日はどうもありがとうございました。

自社畑で収穫したブドウだけを使用する高品質なワイン

アブルッツォ州の標高300mの丘に建つタラモンティは、2001年に設立された新進気鋭のワイナリー。自社畑で栽培したブドウをすべて手摘みで収穫し、良質な果実を選定してワインの原料にしています。今回は徹底した品質・衛生管理のもとで造られたワインの中から、代表的な白・赤ワインを紹介します。

タラモンティ
トラボケット

タラモンティ

トラボケット
参考小売価格:税抜1,980円

麦わら色に輝くペコリーノ種100%の白ワイン。グレープフルーツや青りんごを思わせる華やかなアロマとまろやかな口当たり、ほどよい酸味をバランスよく楽しめます。フレッシュな後味が続き、シーフードに合わせるのにぴったりな1本です。

 

 

 

タラモンティ トレ・サッジ

タラモンティ

トレ・サッジ
参考小売価格:税抜1,980円

濃厚なルビー色が美しい“モンテプルチアーノ・ダブルッツォ”らしいワイン。ベリー系の香りと共にブラックペッパーのようなスパイスの香りが漂います。口に含むとブラックベリーやローストナッツの独特な味わいが広がりエレガントな余韻も続きます。

 

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※ワインについては、記事掲載時点での情報です。