ワインは非常にデリケートなものです。そのため保管状態などの様々な条件で、簡単に劣化してしまいます。
そんな劣化状態の中で有名なのが「ブショネ」。ワイン好きの方なら、一度は聞いたことがあるワードではないでしょうか。
ただブショネとはどのような状態のワインを指すのか、熱劣化や酸化など、ほかの劣化状態とはどう違うのかということは意外と知られていません。
そこで今回はブショネの原因や見分け方、さらにブショネのワインに当ってしまった時の対処法などをお伝えします。
目次
ブショネとは?
ブショネとは、細菌によって汚染されたコルクによりワインが劣化してしまった状態のことを指します。
その語源はフランス語の「ブション(bouchon)=コルク」。
ワインとは切っても切れない関係にある「コルク」がブショネの原因となっているのです。
ブショネの原因
ブショネの原因は「TCA(トリクロロアニゾール)」という成分です。
コルクは「コルク樫」という木の樹皮を煮沸・乾燥させた後、塩素などで漂白して作るのですが、この塩素がコルクに潜んでいる細菌などの微生物と結びついてTCAを発生させてしまいます。
コルクのあの弾力は内部の細胞に無数の「気泡」が含まれていることによるもの。そのためいくら徹底的に殺菌をおこなっても、気泡内に微生物が残ってしまうことがあり、それが悪さをしてしまうのです。
つまり天然のコルクを用いている限り、ブショネをゼロにすることはできません。
ブショネに当たる確率
ブショネの発生率はどれくらいあるのでしょうか。ブショネの判定は個人に委ねられており、統計的な資料はありませんが、本記事の監修者であるソムリエ杉浦直樹さんの経験では、おおよそ5%程度ではないかということです。
つまり天然コルクを使用した100本のワインのうち、5本前後がブショネの可能性があるということです。
ただ最近では、
・コルクメーカーによる徹底した検品作業
・合成コルクやスクリューキャップの採用
などにより、ブショネになるワインは徐々に減ってきています。
ブショネは臭いで見分けよう!
ではブショネのワインはどのように見分ければ良いのでしょうか。
湿った段ボールの臭いが特徴
ブショネのワインの特徴は、「湿ってしばらく放置した段ボール」の臭いがすることです。
だた一口にブショネといっても思わず鼻をつまみたくなるような不快なものから、ほとんど気づかない程度のものまで様々です。
そこでグラスで注がれたワインが香りだけで判断しづらい場合は、口に含んでみてください。
口に含んで香りを鼻に抜いてみると、湿った段ボールの臭いが判別しやすくなるはずです。
熱劣化や酸化の臭いとの違い
ブショネ以外のワインの劣化には、熱劣化や過度な酸化などがあります。
これらの特徴も覚えておきましょう。
・熱劣化・・・不快な焦げや蒸れた臭い
・過度な酸化・・・お酢のような酸っぱい臭い
還元臭と間違えられやすい
ブショネと間違えられやすいものに「還元臭(かんげんしゅう)」があります。
還元臭とは、ワインの醸造過程で酸欠になったことによって発生する硫化水素が元となる臭いです。
ちょっと不快な臭いがするということでブショネと間違えられやすいのですが、見分け方は比較的簡単で、
・還元臭・・・コルクを抜き空気に触れてしばらくすると臭いが消える
・ブショネ・・・コルクを抜き空気に触れてしばらくするとどんどん臭いがひどくなる
という分りやすい特徴があります。
「これはブショネかな?」と思ったら、しばらく時間を置いて(2~3分)冷静に判断してみてください。
ブショネの場合、交換してもらえる?
ブショネのワインは、不快な臭いがするためワインを楽しむどころではありません。
ではブショネのワインに当たってしまったら、交換などはしてもらえるのでしょうか?
レストランの場合
レストランの場合、ホストテイスティングをして「ブショネかな?」と思ったら、ソムリエにその旨を伝えましょう。
ソムリエは抜栓時にコルクの臭いを嗅ぎブショネのチェックをするのですが、かすかなブショネの場合、気づかないこともあります。
ソムリエが再度しっかりと確認し、ブショネとわかれば新しいワインと交換してもらえます。
ショップで購入した場合
ワインショップで購入した場合はお店によって対応が違うので注意が必要となります。
というのも、ワインは購入後の保管状態によって熱劣化や酸化を起こすことがあるため、「返品や返金、交換には応じません」としているお店もあるからです。
ただお手頃なデイリーワインなら諦めもつきますが、高級ワインでブショネに当ってしまったらそうもいきません。
高価なワインの場合は、交換・返品に対応してくれるお店かどうかを確認したうえで購入することをおすすめします。
ネット販売の場合
ネット販売の場合もお店で購入するのと同様に、それぞれの店舗で対応が異なります。
ただネット販売の場合は必ずサイトに対応方針が記載されているため、それを確認して購入すれば安心です。
まとめ
長年ワインを楽しんでいる方でも「一度もブショネに当ったことがない」という方はたくさんいらっしゃいます。
また実際にはブショネに遭遇しているのに気づいていない方も多いはずです。
ただブショネの臭いは一度覚えたら次からははっきりと分かるようになります。
初めて当たってしまってもマイナスに考えず、「勉強のチャンス!」と考えてみてはいかがでしょうか。
この記事を監修したソムリエ
杉浦直樹
歌舞伎役者として人間国宝 中村雀右衛門に師事。15年ほど主に歌舞伎座に舞台出演。その後銀座のクラブマネージャーを経て、J.S.A認定ソムリエ資格を取得。現在は支配人兼ソムリエとして、ブルゴーニュとシャンパーニュの古酒を専門とし たフレンチレストランを経営する。