今回、シャンパーニュ・メゾン「テタンジェ」のオフィシャル・アンバサダーにインタビュー。「テタンジェ」について、テタンジェおすすめのシャンパーニュ、進化系ペアリングなどについてお聞きしました。
目次
テタンジェ・オフィシャル・アンバサダー ご紹介
「テタンジェ・オフィシャル・アンバサダー」を務めるのは、フランス パリ出身のシュビヤー・クリストファー。(※以下、クリストファー)
高校留学をきっかけに日本文化に興味を持ち、パリ第七大学院卒業後に日本の大学院に留学し、それから日本で活動。2012年から2017年まで横浜のインポーターでフランスワインやシャンパーニュを担当した後、サッポロビール株式会社入社。2017年に「テタンジェ・オフィシャル・アンバサダー」に就任。
今回のインタビュー内容はコチラ。
・「テタンジェ」の魅力とは
・「テタンジェ」おすすめのシャンパーニュ
・「テタンジェ」進化系ペアリング
「テタンジェ」の魅力がぎゅっと詰め込まれたインタビューとなっておりますので、ぜひお楽しみください。
「テタンジェ」の魅力とは
はじめに、「テタンジェ」について教えてください。
クリストファー)「テタンジェ」というシャンパーニュ・メゾンについては、一言でまとめることができます。それは、家族。つまり、ファミリーであるということです。「テタンジェ」自体は有名なシャンパーニュブランドですが、テタンジェファミリーが存在することが最も重要です。
とくにキーパーソンとなるのが、ピエール・テタンジェ氏から数えて4代目に当たる名誉会長であるピエール=エマニュエル・テタンジェ氏、そして営業本部長の役割を担う長男のクロード・テタンジェ氏、そして昨年1月に女性として初めて社長となった5代目に当たるヴィタリー・テタンジェ氏。
彼らを中心に「テタンジェ」に関連する全てのことを家族全員で決めているところからも、「テタンジェ」を語る上で“家族である”というキーワードが大切になります。
「テタンジェ」が創業した1932年以降、今もなお同じファミリーによってその精神が受け継がれ続けていることは忘れてはならない事実です。
「ガストロノミー」のためのシャンパーニュ

「テタンジェ」といえば、美食のイメージですが、その秘密は創業者である、ピエール・テタンジェ氏が目指した夢の実現に関係しているそうです。
―――クリストファー
「テタンジェ」の歴史は、創業者であるピエール・テタンジェがシャンパーニュ地方のマルケットリー城を手に入れたことにはじまります。
当時、城の周囲にブドウ畑があったことから、彼は“シャンパーニュを造ってみよう”と思い立ちワイン造りをはじめました。挑戦心を持っている人物だったことが、このエピソードから分かりますよね。
当時のシャンパーニュは現在のようにブリュットのような辛口タイプではなく、「Doux(ドゥ)」という甘口タイプがメインだったことから、料理に合わせるというよりはデザートワインとして楽しまれていました。
彼の夢は、美食…つまりガストロノミーとシャンパーニュを合わせること。
そのため辛口のシャンパーニュにチャレンジしたものの、当然すぐには美味しいものは造れません。
しかし、人間は失敗を繰り返すからこそ成功を手に入れることができます。
試行錯誤の結果、彼はシャルドネを多く使用すること、ドサージュ(1ℓ当たりの残糖量)を9gに押さえることで美食と融和するシャンパーニュを生み出すことに成功したのです。
彼が生み出したこのシャンパーニュがテタンジェ・スタイルの原型となり、今もなお受け継がれています。
ノーベル賞での名誉
ガストロノミーのためのシャンパーニュを生み出す夢を叶えたピエール・テタンジェ氏。それを証明しているのは、「ノーベル賞での功績」だとクリストファーは語ります。
―――クリストファー
「テタンジェ」の味わいは世界的に認められています。とくにその事実を物語るのが、ノーベル賞での晩餐会での名誉です。ノーベル賞の晩餐会で供されるシャンパーニュは、その年のディナーのメニューを踏まえて、ブラインドテイスティングで選ばれています。
つまり毎年リセットされ、その年ごとに見合ったシャンパーニュが選ばれるということです。
そんな中、2014年から2019年の6年間連続でノーベル賞での晩餐会に選ばれたシャンパーニュが、「テタンジェ」。
奇跡ともいえますが、「テタンジェ」のこだわりから考えれば当たり前なのかもしれません。
この期間、日本人の方もノーベル賞を受賞し晩餐会に出席されていますが、彼らも「テタンジェ」を楽しんだのではないでしょうか。
アートワークにも注目
「テタンジェ」には、家族経営だからこそできるユニークな取り組みがあるそうです。
―――クリストファー
「テタンジェ」は、シャンパーニュのファミリーメゾンの中で二番目の規模といわれています。大規模ではありますが、家族経営だからこそ自分の趣味を生かした取り組みがおこなえるところも特徴でしょう。
数ある「テタンジェ」の取り組みの中でも注目してほしいのが、「アート」です。
じつは、社長のヴィタリー・テタンジェ氏はアート大学の出身であり、1983年から定期的にアーティストとコラボレーションした「テタンジェ・アート・コレクション」を出しています。特別なキュヴェに特別なデザインを施し販売されるものですが、販売周期は決まっておらず、完全にファミリーの気まぐれで登場する希少なコレクションです。
つまり、自分のフィソロフィーに合致するアーティストと最高のヴィンテージがマッチングした時のみに発売されるという、とにかく貴重なシャンパーニュといえるでしょう。
ちなみに、最新のコレクションは2008年ヴィンテージのシャンパーニュにブラジル出身の著名な写真家「セバスチャン・サルガド」が撮影したヒョウ柄が施されたもの。
ほんとうに貴重なものなので、どこかで見かけたら必ず手に入れてほしい逸品ですね。
「テタンジェ」おすすめのシャンパーニュ
「テタンジェ」の歴史、世界的な評価、シャンパーニュへのこだわり、家族経営ならではのユニークな取り組み。さまざまな魅力を教えてもらいましたが、ここからは「テタンジェ」おすすめのシャンパーニュの紹介です。
「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン 2008」について
まずは、「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン 2008」から紹介してもらいます。
―――クリストファー
・名前の由来
「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン 2008」は、「テタンジェ」の頂点に立つシャンパーニュのひとつです。まず、“コント・ド・シャンパーニュ”という名前の由来についてお伝えしましょう。
“コント”は伯爵という意味ですが、昔シャンパーニュ地方には伯爵がいました。その伯爵が十字軍遠征の最中にギリシャで飲んだワインが美味しいということで、シャンパーニュにシャルドネの苗を持ち帰ったという話があります。
この苗がシャンパーニュにおけるシャルドネの祖先といわれており、今シャンパーニュにシャルドネがあるのはこのおかげ、と考えられているようです。
ちなみに、シャルドネを持ち帰ってきたとされている人物は伯爵ティボー4世。”コント・ド・シャンパーニュ”とは、その伯爵ティボー4世へのオマージュとして名付けられた特別なシャンパーニュなのです。
・「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン 2008」は最高峰のシャンパーニュ
”コント・ド・シャンパーニュ”自体は、1952年から定期的にリリースされているシャンパーニュなのですが、70年ほどの歴史の中で30数回しか造られていない希少なシャンパーニュです。
今回紹介する、「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン 2008」は最新ヴィンテージですが、歴代の”コント・ド・シャンパーニュ”の中でも特に素晴らしい出来映えだと賞賛されています。
そもそも、”コント・ド・シャンパーニュ”は世界遺産に認定されている貴重なカーヴの中で8年から10年ほど熟成される規定となっているのですが、「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン 2008」は、12年熟成。
テタンジェファミリーが、“これは素晴らしいものになる”と若い頃から守り続けたシャンパーニュであり、まさに子どものように愛し熟成された最高峰の1本です。
・「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン 2008」の楽しみ方
「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン 2008」を楽しむのであれば、ぜひピノ・ノワールグラスのように口の広いワイングラスをおすすめします。正直、フルートグラスで飲むのはもったいないですね。
12年熟成を経ているとはいえ、まだまだ若くフレッシュでいきいきとした印象。黄金の色合い、果実味と酸もしっかりと感じられます。シャンパーニュの中ではフルボディタイプでしょう。
個人的には、このシャンパーニュはまだまだ熟成のポテンシャルがあると考えており、20年以上は間違いなく熟成させられると思っています。今のうちに4、5本ほど購入しておき、熟成年数によって楽しんでみてはいかがでしょうか。
・「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン 2008」のペアリング
「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン 2008」は、パワフルなシャンパーニュですので単品でも十分楽しめます。
ペアリングであれば、こってりとした料理がいいでしょう。トリュフを入れたクリームパスタなどがおすすめです。クリームソースで口内がコーティングされているところを、「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン 2008」のいきいきした酸がキレイに洗い流してくれます。
また、「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン 2008」の存在を際立たせるのであれば、シンプルにホタテのカルパッチョもいいでしょう。薄くスライスしたホタテにオリーブオイル、レモン、塩こしょうで十分楽しめます。
とにかく、このシャンパーニュを語るうえで多くの言葉は不要です。「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン 2008」の魅力は、飲んでいただければ必ず伝わると思います。
「ブリュット レゼルヴ」と「ノクターン」
続いて、クリストファーがおすすめする「テタンジェ」のシャンパーニュを2本紹介してもらいます。
―――クリストファー
「ブリュット レゼルヴ」
「ブリュット レゼルヴ」は、テタンジェ・スタイルを表現する1本。シャルドネ種、ピノ・ノワール種、ムニエ種のブドウ品種が使用されています。
全体的におけるシャルドネ種の比率は40%で、先にお伝えしたようにシャルドネ種が多めなのが特徴です。
さらに、シャルドネ種の10%はグラン・クリュ畑で収穫された最高峰のシャルドネ種が入っているなど、品質に一切の妥協はありません。
瓶内熟成は3年間で、きめ細かな泡を楽しむことができます。
ブリオッシュ、白桃、酸味のバランスが素晴らしいシャンパーニュです。
「ノクターン」
「ノクターン」の品種比率は「ブリュット レゼルヴ」と同様で、シャルドネ種の10%がグラン・クリュ畑で収穫されたものです。
ちなみに、「ノクターン」に使用されているブドウは30ヶ所の畑から収穫されたブドウが使用されており、それによってシャンパーニュらしいバランスが生まれています。
瓶内熟成は「ブリュット レゼルヴ」より1年長い4年間熟成で、よりきめ細かい泡、イースト由来のブリオッシュやパン香が楽しめるでしょう。
「ノクターン」最大の特徴は、1ℓ当たりの残糖が17.5gという「sec(セック)」というカテゴリであること。
ただし、決して甘いシャンパーニュを造りたいわけではなく、ボディのしっかりとしたシャンパーニュを造るために糖分を加えているという感覚です。
とてもエレガントな味わいであり、残糖を言われなければ気がつかないほどに繊細な仕上がりが特徴的な1本となっています。
「テタンジェ」進化系ペアリング
最後に、「テタンジェ・オフィシャル・アンバサダー」であるクリストファーが提唱する「進化系ペアリング」について聞きしました。進化系ペアリングとは一体、どんなものなのでしょうか?
―――クリストファー
まず、一言だけお伝えしたいのが、“フードペアリングに正解はない”ということ。ご自身が美味しいと思っている組み合わせであれば、それが最高のフードペアリングでしょう。
とはいえ、フードペアリングには一定のルールがあり、それを知っているだけで安心してフードペアリングにチャンレジできます。ペアリングには大きく分けて2つのパターンがあると考えています。
それが、「伝統的(トラディション)なペアリング」と「進化系(フュージョン)ペアリング」です。
・伝統的なペアリングとは?
伝統的なペアリングの例を挙げてみましょう。
イタリアにはキャンティという、“赤いベリーやいちご、フランボワーズなど赤い果実の香りと酸味”が特徴の赤ワインがありますが、トマトソースやミートソースを使用したラザニアと最高の相性を示します。
その国で古くから作られている料理とワインの相性が良いというのは、広く知られている伝統的なペアリングです。
ほか、力強さのあるブルゴーニュのジュヴレ・シャンべルタンと赤ワインで数時間煮込む肉料理のブフ・ブルギニョン(牛肉の赤ワイン煮)の相性も定番。
このように、古くから親しまれているペアリングが伝統的なペアリングと考えられます。
- 進化系ペアリングとは?
一方、“地元の料理だから地元の料理を合わせる”という発想ではなく、甘口シャンパーニュと四川料理とか、酸味の効いたブルゴーニュのシャブリと日本の懐石料理など、伝統の枠組みを超えたペアリングが、「進化系ペアリング」です。挑戦のペアリングといってもいいでしょう。
しかし、むやみにフードペアリングするのではなく、気をつけるべきことがあります。
例えば、甘味・酸味・塩味・苦味・うま味といった「五味」のバランスの意識です。
例外はあるものの、一般的に甘過ぎる食材と辛口ワインを合わせるとワインの酸が強くなり過ぎ喧嘩してしまいます。また、辛味が強過ぎるものにワインをぶつけても、アルコール度数がかなり強く感じて口内が痛く感じられたり、タンニンが強いワインだと違和感を覚えるでしょう。
一方、塩気と酸のあるワインは合う傾向にあります。
ワインとフードの「五味」を意識することで、伝統とはまた違う角度の「進化系ペアリング」を楽しむことができるのです。
・「進化系ペアリング」を「テタンジェ」で実践!
なにやら難しそうな進化系ペアリング。今回、実際に「テタンジェ」の「ブリュット レゼルヴ」と「ノクターン」で実践してもらいました。
「ブリュット レゼルヴ」×「エビチリ」

―――クリストファー
先ほどお伝えしましたが、「甘いもの辛いもの」は要注意ペアリングです。エビチリは、甘味と辛味もあるため、シャンパーニュとのペアリングはかなりトリッキーな印象でしょう。
しかし、今回用意したエビチリは甘味と辛味が突出せず、酸味、塩味のバランスも取れています。「ブリュット レゼルヴ」の邪魔をせず、ほのかな辛味がシャンパーニュを男らしい印象にするおもしろいペアリングです。
祝日前など、「疲れたけれど…明日は休み!」というシチュエーションにはぴったりなペアリングではないでしょうか。
ただひとつ、辛味や甘味が強過ぎる、山椒が強過ぎる…といったエビチリの場合は「ブリュット レゼルヴ」よりも、残糖が高い「ノクターン」がよいでしょう。食べる料理の個性に合わせて、シャンパーニュを選んでいただきたいですね。
「ノクターン」×「チョコレート」

チョコレートも甘く、ワインペアリングとしてはトリッキーな部類に入ります。とはいえ、「ノクターン」のようなシャンパーニュであればフードペアリングに挑戦してみてもいいでしょう。
個人的にエクレアが大好物なのですが、チョコレートのエクレアと「ノクターン」のペアリングはおすすめですね。
フランスのエクレアといえばパリッと焼き上げたシュー生地が特徴的。シャンパーニュも瓶内二次発酵の際にトースト香と呼ばれる風味が影響を与えるため、“香ばしさ”というニュアンスで親和性が生まれます。
また、今回選んだエクレアの中に入っているチョコレートは甘過ぎず苦過ぎない繊細な味わいですので、「ノクターン」と良い相性です。
注意したいのが甘過ぎるとか渋過ぎるとかいうチョコレートで、ミルクチョコレートなど甘いものはおすすめできません。
もちろん、チョコレート単品でも「ノクターン」との進化系ペアリングは楽しめますよ。
例えば、レモン風味やフランボワーズ風味のガナッシュ。レモンの爽やかな風味と甘さが「ノクターン」を辛口に感じさせますし、フランボワーズは酸味があるので「ノクターン」の果実味が増す印象です。
ぜひ、チャレンジしていただきたいペアリングですね。
最後になりますが、とにかくペアリングは難しく考え過ぎず、挑戦することが大切。失敗することも良い思い出になるはずです。今、なかなか皆さんに会えない状況が続いていますが出会える機会が訪れた、その時はより深くテタンジェの魅力を伝えたいと思っています。
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「テタンジェ」を知り尽くしているクリストファーさんならではの、ユニークなインタビューとなりました。憧れの「テタンジェ」の世界観を、この機会にぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか。