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SDGsをワイン目線から考える
~その一杯が変える未来~

「SDGs」とは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。近頃は教育現場での訴求も増え、私たちにとってより身近なワードになってきました。ここでは、テロワール(ブドウを取り巻く生育環境)の考え方が根付くワイン業界で、どのような取り組みが行われているのか紹介します。ワイナリーの取り組みを知ってワインを選べば、ワインを楽しむことがSDGsの目標達成に繋がるのです! text WINE OPENER編集部

SDGsをワイン目線から考える

消費行動を見つめ直すことが SDGsと繋がる近道

SDGsをワイン目線から考える

最近は「SDGs」の文字を、テレビやネット記事など様々なメディアで頻繁に見かけるようになりました。SDGsとは、「誰一人取り残さない」ことを理念に、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。環境問題をはじめ、貧困や飢餓、経済成長やジェンダーなど、この地球が直面している様々な課題を網羅し、17の目標と169のターゲットで構成されています。大阪・関西万博の開催目的として掲げられたり、小学校の授業でも取り上げられていたり、かなり身近な言葉になってきましたが、SDGsについて「知っているようで知らない」という人が多いのも事実です。日本トレンドリサーチが2022年1月に実施したSDGsに関する意識調査では、30代、40代の半数以上が「あまり知らない」もしくは「全く知らない」と回答。「17の目標と169のターゲット」という少し複雑な構成が、理解を遠ざけているのかもしれません。

17の目標すべてと関わることは難しいかもしれませんが、日々の消費行動を見つめ直すだけで、誰でも気軽にSDGsに関わることができます。例えばワインを買うときに、どのような栽培環境で生産されたのか、生産者はどのような想いでワインを造っているのか、という視点を取り入れてみる――。そうすると、ぶどう栽培における気候変動対策(目標13)、希少な水資源の保全(目標6)、クリーン・エネルギーの活用(目標7)、女性および障がい者の積極的採用(目標8)など、SDGsに関わる様々な取り組みが見えてきます。味わいだけではなく、生産背景にも注目することで、SDGsをワイン目線から考えることができるのです。

オーガニックワインのパイオニア 「パラ・ヒメネス」

SDGsをワイン目線から考えるテロワール(風土)を大切にする価値観が根付くワイン業界は、SDGsという言葉が生まれるずっと前から、サステナブルへの取り組みに積極的だったと言えます。その代表的な事例が、有機農法やオーガニックワインの考え方です。農薬や化学肥料の使用を減らすことができれば、土壌の生命力は蘇り、農薬による環境負荷や健康被害はなくなります。また、農薬や化学肥料を畑に散布するトラクターのCO2排出量の削減にもなります。サステナブルな有機農法を採用したオーガニックワインを選ぶという消費行動は、未来の環境保全に繋がり、結果的にSDGsの実現にも貢献します。SDGsをワイン目線から考える

近年、オーガニックにこだわるワイナリーは増え続け、ぶどうの有機栽培面積は世界中で拡大しています。このような有機農法への取り組みを1993年からはじめ、オーガニックワインのパイオニアと呼ばれているのがスペインのワイナリー「パラ・ヒメネス」です。今から30年前と言えば、オーガニックという言葉さえも一般的ではなかった時代。その当時、世界的ワイン展示会「プロヴァイン」において、オーガニックワインの出展は10ワイナリー程度(現在は6,000ワイナリー以上)だったそう。「パラ・ヒメネス」3代目当主で醸造責任者のパブロさんは、こう振り返ります。

「当時は、“有機”というものを多くの人が理解できていない時代でした。仮に有機栽培でぶどうが収穫できてもそれがワインになるのか、と考えられていたほどです。そのため、当初は村人たちから、“正気か!?”と言われていたようです。しかし、私たちファミリーが家で食べる野菜は化学肥料などを使用しない有機のものが当たり前だったので、ぶどうの有機栽培に関しても疑う余地はありませんでした。100%自然なワイン造りこそ、パラ・ヒメネスの信念なのです」

サステナブルを実現する パラ・ヒメネスの循環農業

SDGsをワイン目線から考える

「パラ・ヒメネス」が所有する土地の総面積は2,447ヘクタール。その内ぶどう畑は728ヘクタールを占め、広さは東京ドーム約150個分になります。この広大な自社畑で有機栽培を約30年も継続するには、サステナブルなワイナリー経営に対する、当主や造り手たちの覚悟と信念なくしては実現できません。「パラ・ヒメネス」の環境に配慮した有機栽培への取り組みは高く評価され、2008年にはビオディナミ農法(※)の公式認証「Demeter(デメテール)」も獲得しています。

※オーガニック農法の一種であり、化学合成された農薬と肥料は不使用。天体の動きとの調和、動物との共生、独自の調合剤の使用を特長とし、厳格なルールに基づいて行われる農法。

 

SDGsをワイン目線から考える

オーガニックワインの先駆者である「パラ・ヒメネス」は、持続可能な循環型農業にも積極的に取り組んできました。所有する土地では、ぶどう畑のほかに玉ねぎやニンニクなどオーガニック100%の農産物を生産するほか、希少な黒羊(マンチェーガ種)やガチョウの飼育も行っています。飼料には同じ土地で育った野菜の皮などを使い、羊の糞は肥料にして畑に戻すという循環型農業を確立。このオーガニックの循環こそが、「パラ・ヒメネス」がこだわり続けるサステナブルなワイナリーのあるべき姿なのです。

共感から繋がるSDGs
一杯からはじまる環境支援

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そんな「パラ・ヒメネス」の取り組みとして紹介したいのが、消費行動と環境保全をダイレクトに繋げる「羊とワインプロジェクト」です。これは売上1本につき20円をワイナリーの環境保護活動費に充てるというもの。ワイナリーの広大な敷地にある乾燥地に、もともと生息していたローズマリー、タイム、ラベンダーなどのハーブを植栽したり、希少種である黒羊を保護する取り組みです。植栽したハーブに花が咲き、ミツバチが飛来することで、植物相と動物相の多様化にも寄与。つまり、「パラ・ヒメネス」のワインを飲むことで、環境保全や循環農業の支援に繋がり、SDGsの目標6、目標13、目標15、目標17の実現にも貢献できるのです。「一杯からはじまる環境支援」という考え方がスタンダードになる日も、そう遠くはなさそうです。

パラ・ヒメネス_ブランドバナー

■「羊とワインプロジェクト」
「パラ・ヒメネス」が、2022年3月23日からドネーション企画をスタートさせます。
売上1本につき20円がワイナリーの環境保護活動費に充てられます。

 

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※ワインについては、記事掲載時点での情報です。