CULTURE

豪ワインの銘醸地「バロッサ」の名門
ピーター・レーマンの“愛”【前編】

オーストラリアワインの銘醸地・バロッサの土地と農家を守り抜いた伝説(※詳細はブランドサイト参照)が、今も脈々と受け継がれている名門ワイナリー「ピーター・レーマン・ワインズ」。2023年11月にシニアワインメーカーのブレット・シュッツさんが初来日したタイミングで、独占インタビューが実現しました。彼の発言の端々に感じられたのは、ワインに対するまっすぐな姿勢と愛情。世界中にその名を轟かす名門でありながら、地元バロッサで現在も愛され続けている理由が見えてきました。
前編では、サステナブルな栽培方法を積極的に採用する契約農家との取り組みや、ピーター・レーマン・ワインズのラインナップについてお聞きします。

text WINE OPENER編集部 photo 岡崎健志

若い生産者がブドウ栽培をアップデート
ピーター・レーマン・ワインズの伝統と革新

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―創業者のピーター・レーマン氏は“バロッサを救った男”と呼ばれ、その伝説とブドウ栽培農家との良好な関係性は、ピーター・レーマン・ワインズのアイデンティティのひとつかと思います。そのうえで、現在は契約農家とどのような取り組みを行っているのでしょうか?

ブレット・シュッツさん(以下 敬称略):私たちワインメーカーは、栽培農家が丁寧に育ててくれたブドウの可能性を、最大限に引き出すことに全力を注いできました。ピーター・レーマン・ワインズには、創業当初から私たちとともに歩んできた家族もいれば、過去43年の歩みの中で加わった家族もいます。

今は世代交代をしていて、20代から30代が中心。若い世代が家族で誇りを持ってブドウ農家を受け継いでいることは、とても誇らしいことだと思っていますし、他のエリアではなかなか見られないのではないでしょうか。

彼らは気候変動を目の当たりに育ってきた世代なので、サステナブルな栽培方法を積極的に採用しています。リサーチに時間をかけて、例えばブドウの葉っぱの剪定方法においても、今までとは違うやり方を見つけ出している。その結果、品質も格段に向上しています。

―若い世代が環境負荷のかからない栽培方法を確立し、結果的にブドウの品質も向上していると?

ブレット:その通りです。彼らは非常に勉強熱心で、よりよい土壌作りとは何かを常に考えています。つまり、プレミアムワインを醸すために、どのようなブドウを栽培すべきかを知っている。昔は機械を入れてとにかく耕すことが正しいという考え方でしたが、今は必要以上に手をかけることはしていません。農薬や化学肥料の使用も制限し、生息している微生物を生かすことで豊かな土壌を作っています。

こういった取り組みに私もワインメーカーとして刺激を受けていますし、彼らとは非常に素晴らしいパートナーシップが築けていると思います。お互いがリスペクトし合い、援助し合う相互関係はピーター・レーマン・ワインズが創業時から大切にしてきたことですが、それが現在も受け継がれているということですね。

気候と土壌、そして歴史が
ピーター・レーマン・ワインズのスタイルを決めた

peterlehmann_interview_23_01 ―バロッサ・ヴァレーからイーデン・ヴァレーに至るバロッサ全域で、100以上のブドウ農家と契約しているそうですが、バロッサ・ヴァレーとイーデン・ヴァレーそれぞれの地形・土壌・気候の特徴を教えていただけますか?

ブレット:どちらの地域も地中海性気候に属し、夏の日中は暖かくて日照時間が長く、降水量はそれほどありません。栽培期間中の降雨量はわずか200ミリ程度です。 バロッサ・ヴァレーの標高は海抜100メートルから400メートルで、土壌は深い珪質岩(けいしつがん)から黒く砕けた重い埴土(粘土質を多く含む土)まで、短い距離で非常に変化に富んでいます。その中には、水はけの良い赤色や赤褐色の埴土や、水はけの悪い黄色や灰色の下層土の埴土もあります。

バロッサの北部(モッパやエベネザー)では、深さ3メートルにもなる黄色い砂質埴土が見られます。基本的に肥沃度は低く、ブドウの木が成長する勢いはそれほど強くはありません。フルボディの豊満な赤ワインの産地としてバロッサ・ヴァレーが世界的に名声を得た背景には、このような気候と土壌による要因があると言えます。

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南オーストラリア州のアデレードから約80キロメートル北東に位置するバロッサは、世界で最も偉大なワイン産地の一つです。バロッサは、バロッサ・ヴァレーとイーデン・ヴァレーという二つの個性が異なる産地より形成されています。

―一方、イーデン・ヴァレーの特徴は?

ブレット:イーデン・ヴァレーの標高は海抜200メートルから600メートルで、土壌はローム質から砂質粘土質まで多彩。鉄鉱石の砂利、石英の砂利、岩石の破片が含まれています。標高が高いため、イーデン・ヴァレーの夜温はバロッサ・ヴァレーよりずっと低く、ブドウの木は呼吸を整え、日中の暑さから回復することができます。このため、イーデン・ヴァレーのブドウは、全体的に自然な酸味とフレッシュな果実味をより多く保つ傾向がありますね。

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―ブレットさんはバロッサ生まれバロッサ育ちとのことですが、地元民にとってピーター・レーマン・ワインズはどのような存在なのでしょうか?

ブレット:子どもでもピーター・レーマンの伝説は知っていますよ。バロッサの歴史的アイデンティティの先駆者として、地元民にも高く評価されていることは昔も今も変わりません。当然、私もピーター・レーマンを尊敬していましたし、道徳的にもブランドが象徴するものはすべてポジティブなものでした。私は年を重ね、家族を養い、地域の存続の中心であった産業を守ることの重要性を理解するにつれ、1970年代後半にバロッサのブドウ生産者が窮地に追い込まれたときにピーターがとった勇気ある行動に、強い感謝の念を感じるようになりました。

また、ピーター・レーマン・ワインズが地元民にも愛され続けている理由には、誰もが手の届くワインを4つのシリーズで展開していることも挙げられます。

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ピーター・レーマン・ワインズの
4つのシリーズを紹介!

ピーター・レーマン・ワインズのラインナップは、最高峰レンジの「ストーンウェル シラーズ」、伝統品種の長期熟成シリーズ「マスターズ シリーズ」、次世代のワインメーカーがバロッサを体現する「ザ・バロッサン シリーズ」、そしてに日常的に楽しめる「ポートレート シリーズ」など幅広く展開されています。それぞれのシリーズの特徴、シリーズ分類の意図や担っている役割を教えてください。

ブレット:まずポートレート シリーズですが、ワイン初心者などに気軽にお楽しみいただける、親しみやすい普段飲みのスタイルが基本。ワインを『解きほぐして理解する』ための知識を必要としない酒質ですね。赤ワインは果実味が主体で表現力があり、穏やかなオークの影響、柔らかな酸とタンニンを感じさせます。白ワインはプレミアム・レンジよりも酸度が低く、果実の甘みを感じる点が特徴ですね。

 

ザ・バロッサン シリーズ ブレット:ザ・バロッサン シリーズのレンジに移ると、さらに複雑さを増し、オークの影響、タンニンの構造、果実の豊かさが何層にも重なり、より本格的でテクニカルなワインになります。友人や家族と定期的に楽しむことを目的としながらも親しみやすく、様々なシチュエーションで食事とともに、あるいは食事なしで楽しむことができるワインを目指しています。

もっと言うと、ザ・バロッサン シリーズの酒質設計の基本は、バロッサの真髄とも言えるスタイルであること。創業者のピーター・レーマンに敬意を表し、バロッサのワインスタイルがどこから来たのか、そして時代とともにどこが進化しているのかを尊重しながら醸しています。

 

マスターズ シリーズ ブレット:マスターズ シリーズは、ピーター・レーマンの人生における重要な人物や瞬間からインスピレーションを得ています。それぞれがユニークで個性的ですね。

ウィガン・リースリングとマーガレット・セミヨンは、ワイン業界では珍しい白ワインのスタイルで、高品質な果実の調達と精密なワイン造り、忍耐強い熟成の賜物。ワイン消費者に他にはない特別な体験を提供し、バロッサの果実資源の力を示すワインと言えます。

エイト・ソングス・シラーズとメンター・カベルネは、バロッサが提供できるワインの最高級品でしょう。バロッサ内の複数の村から調達されたブドウ、すなわち“バロッサの風味”を、最高のフレンチ・オークで熟成させた後、さらに12~36か月間瓶内で優雅に追熟させます。

ワイン通をターゲットにしたマスターズ シリーズは、ストラクチャー、落ち着き、フィネス、複雑性、飲みやすさをリリース時からしっかりと示すことができますが、さらに20年以上は寝かせることができます。

 

ストーンウェル シラーズ ブレット:ストーンウェル シラーズは、私たちのワイナリーがある地域にちなんで名づけられました。私たちは毎年、広域に点在する栽培農家から最高のシラーズが育つ区画を選び、バロッサ・シラーズの最も力強い表現を示すワインを造り、ストーンウェル シラーズとしてボトリングします。2023年はストーンウェル シラーズの30回目のリリースを記念する年で、世界中のワイン愛好家に収集される特別なヴィンテージになると思います。

 

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※ワインについては、記事掲載時点での情報です。