みなさんは普段ワインを選ぶ時、どのような基準で選んでいらっしゃいますか?
もちろんご自分の好きな造り手、産地、ブドウの品種などで選ばれることが多いかと思いますが、一方で「95点!」「100点満点を獲得!」といった評価値を参考に選ばれることもあるのではないでしょうか。
ワインの評価値で有名なのが「パーカーポイント」です。
ただワイン売り場でよく目にするパーカーポイントの評価方法や実際にワイン市場に与える影響力などは意外と知られていません。
そこで今回は、パーカーポイントの創始者ロバート・パーカーJr.やパーカーポイントの仕組み、そしてパーカーポイント高得点のワインは本当に美味しいのかといった点をくわしくお伝えします。
目次
パーカーポイントとは?
「パーカーポイント」とは、世界で最も有名なワイン評論家の一人である「ロバート・パーカーJr.」が考案したワインの評価方法における得点のことを指します。
「神の舌を持つ男」ロバート・パーカーJr.
ロバート・パーカーJr.(以下ロバート・パーカー)はアメリカのメリーランド州ボルチモア生まれのワイン評論家です。
大学卒業後ロースクールに進み、地元信用金庫の弁護士として働いていたのですが、学生時代に訪れたフランスで飲んだワインに心を奪われたのをきっかけに、ワインを追求しはじめることになりました。
パーカー氏の卓越したワインのテイスティング能力もあって、1978年自らの手でワイン雑誌を創刊します。
雑誌の名は「ザ・ボルティモア・ワシントン・ワイン・アドヴォケイト」、現在の「ワイン・アドヴォケイト誌」です。
(※ちなみに「アドヴォケイト」には、弁護士、擁護者といった意味があります)
パーカー氏が創刊した雑誌の特徴は何ものにも左右されることのない「独立性」。
パーカー氏は評価するワインを全て自費で購入し、試飲旅行におもむく際も、飛行機代やホテル代は全部自腹で払っています。
またワイン・アドヴォケイト誌は創刊時から現在にいたるまで、雑誌に広告の掲載を一切していません。ワイン・アドヴォケイト誌の読者からの購読料だけで、発行され続けています。
パーカー氏の一貫した行動の理由は、既存のワイン業界からの影響を一切受けず、「一消費者の目線」でワインを公平に評価し続けるため。
パーカー氏は「神の舌を持つ男」といわれる自身のテイスティング能力だけを信じ、読者に「パーカーポイント」という正確な情報を伝えることだけを考えているのです。
消費者の目線でワインを公平に評価し続けるパーカー氏の名声を一気に高めたのは、1982年のボルドープリムール品評会でのこと。
プリムールとは、瓶詰めされる前のバリック(樽)に入ったワインを先物買いすることです。
1982年のボルドーワインは「例年並みか、そのやや下」と多くのワイン評論家に評価され、高い評価を得られませんでした。
しかしパーカー氏だけは、1982年のボルドーワインのテイスティングを行い、「これはビックヴィンテージになる!」と断言。
数年後その予言は現実のものとなり1982年のボルドーワインは1980年代を代表するグレードヴィンテージと評価されます。パーカー氏は「神の舌を持つ男」ともてはやされることとなりました。
パーカー氏は2019年の5月にワイン評論家を引退。
パーカー氏がワイン評論家を引退後のパーカーポイントの評価は、複数のワイン評論家の意見を集約してパーカーポイントを決める合議制に移行しています。
パーカーポイントはどうやって評価される?
パーカーポイントは100点満点方式で評価されます。
まず全てのワインには50点の基礎点が与えられ、残りの50点は以下の基準で振り分けられ、評価されます。
50点の内訳
色と外観 | 5点 |
アロマとブーケ | 15点 |
風味と後味 | 20点 |
全体の質もしくは熟成の将来性 | 10点 |
付けられた評価点は、以下の5つのランクに分類されます。
評価点のランク
100点~96点 | Extraordinary(格別) |
95~90点 | Outstanding(傑出) |
89~80点 | Above Average to Excellent (並以上から優良) |
79~70点 | Average(並) |
69~60点 | Below Average(並以下) |
パーカーポイントの影響力は?
ワインの値段を左右する影響力を持つ
神の舌を持つ男、ロバート・パーカー氏の評価点であるパーカーポイントは絶大なる信頼と影響力を持ち始め、やがてワインの値段にも影響を与えます。
例えば、ボルドー5大シャトーの筆頭、シャトー・ラトゥールにおいても、パーカーポイントが100点満点のヴィンテージと、92点のヴィンテージでは価格に約3倍の開きが生じるという現象が起きました。
他にも、無名だったワイナリーがパーカーポイントで評価されたことで有名になり高額取引されるようになりました。パーカーポイントは、「シンデレラワイン」を生み出すことにもなったのです。
パーカー好みのワインを造ろうとする動きが出たことも
パーカーポイントで高評価=高価格という現象が起きたことで、ついにはワイン造りにまでパーカーポイントの影響が現れます。
パーカーポイントで高い評価を得たいあまりに、パーカー好みのワインを造る製造者が続出します。パーカー氏の嗜好に合わせたワイン造りが増える現象は、「パーカリゼーション」という言葉で表されるようになりました。
しかし、パーカーポイントの絶大な影響力に、「さすがに行き過ぎだ」と感じる人もいて、パーカーポイントは批判的に捉えられることも。
パーカーポイントのワインは本当においしいの?
ではパーカーポイントで高得点を獲得したワインは本当においしいのでしょうか。
あくまでも個人の主観
ワインはあくまで嗜好品なため、「おいしい」と感じるかどうかは個人の好みに左右されます。
パーカーポイントはロバート・パーカー氏を筆頭としたワイン・アドヴォケイト誌のワイン評論家「個人」の評価であることから、自分の好みに合うかどうかは実際に味わってみないとわかりません。
ワイン・アドヴォケイト誌で高評価を受けているワイン
パーカーポイントで高得点を獲得するワインには比較的分りやすい特長があります。高評価を受けているワインの特徴を知って、自分の好みのワインか確認してみましょう。
ワイン・アドヴォケイト誌で高い評価を受けるワインには、
・凝縮感、力強さ、味わいのインパクトの強さをもつもの
・新樽をしっかり効かせた、甘いバニラ香を感じるもの
・果実味が前面に出たもの
といった特長があります。
自分好みのワインを選ぶ際の参考にしてみてくださいね。
パーカーポイントで評価されたワインを紹介
■M.シャプティエ
世界で有名なワイン評論家であるロバート・パーカー氏に、「地球の輝き煌めく光りのひとつ」「これ以上に並外れたワインを造り出すワイナリーは世界中探しても殆どない」と言わしめたのが、「M.シャプティエ」です。
いち早くビオディナミ農法に注目し、土地の持つテロワールを忠実に反映したワイン造りを実践。
数あるシリーズの中でも、ワインシリーズ「セレクション・パーセレール
」は、パーカーポイントで最高評価の100点満点を「40回以上」も獲得。区画ごとに細分化された単一畑の古い樹から収穫されたブドウを、醸造して造られています。
・エルミタージュ ルージュ ル・パヴィヨン (参考小売価格:税抜12,000円 (2003年)/税抜100,000円(2009年、2010年))
2003年、2009年、2010年ヴィンテージでパーカーポイント100点満点を獲得しているフルボディの赤ワインです。
シラー種の平均樹齢65年以上の品質の高いブドウをコンクリートタンクで発酵し、複雑味のある香りや味わいに仕上げました。アタックは強めで、バランスの取れた長い余韻が楽しめるワインです。
購入はこちらから(外部サイトにリンクします)
・エルミタージュ ルージュ レルミット (参考小売価格:税抜80,000円(1997年)/税抜100,000円(2012年))
2012年ヴィンテージでパーカーポイント100点満点を獲得したフルボディの赤ワインです。
シラー種のブドウを破砕した後にコンクリートタンクで醸造。長く熟成することで、絹のようなタンニンを実現。パワフルで、シルキーなシラー種のブドウの味わいが楽しめるワインです。
購入はこちらから(外部サイトにリンクします)
・エルミタージュ ブラン レルミット (参考小売価格:税抜 150,000円(2011年)/税抜140,000円(2012年))
2011年・2012年ヴィンテージでパーカーポイント100点満点を獲得した辛口の白ワインです。
エルミタージュの丘の頂上の「エルミット」と呼ばれるエリアに畑があり、畑の土壌はブドウにとって理想的な花崗岩質です。土壌のミネラル感や、柔らかくリッチな味わい。エレガントな白系果実の香りや余韻の長さが楽しめます。
購入はこちらから(外部サイトにリンクします)
・エルミタージュ ブラン ル・メ アル (参考小売価格:税抜 50,000円(2006年、2007年、2009年、2015年))
2015年ヴィンテージでパーカーポイント100点満点を獲得したフルボディの白ワインで、砂利と石灰の土壌で構成されたメアルの丘の中腹から収穫されたブドウのみを使用。
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・エルミタージュ ブラン ドゥ ロレ (参考小売価格:税抜45,000円 (2006年、2011年、2012年、2013年))
2013ヴィンテージでパーカーポイント100点満点を獲得した長熟の辛口白ワインで、60~70年の樹齢の古樹で、収量を押さえたマルサンヌ種を使用しています。
エルミタージュの丘の東端にある畑を購入したミシェル・シャプティエ氏の祖父により「ドゥ ロレ」と命名されました。
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※ワインについては、記事掲載時点での情報です。
まとめ
ロバート・パーカー氏がワイン評論家を引退された後、他のワイン雑誌の台頭もあって、パーカーポイントの影響力に陰りが見えると噂されることも。 しかし依然としてパーカーポイントは「世界で有名なワイン評価値」であることには変わりはなく、これからもワイン市場においてワインを選ぶ際の指標であり続けるでしょう。 パーカーポイントで高評価を得たワインの特徴をしっかりと理解した上でワインを選び、自分好みのワインを見つけましょう。
この記事を監修したソムリエ
杉浦直樹
歌舞伎役者として人間国宝 中村雀右衛門に師事。15年ほど主に歌舞伎座に舞台出演。その後銀座のクラブマネージャーを経て、J.S.A認定ソムリエ資格を取得。現在は支配人兼ソムリエとして、ブルゴーニュとシャンパーニュの古酒を専門とし たフレンチレストランを経営する。
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