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イタリアのお菓子、パネットーネに合うワインと
パネットーネの魅力とは?

「パネットーネ」とは、イタリア・ロンバルディア州発祥の伝統菓子。長年、クリスマスのお菓子として親しまれてきましたが、今では通年楽しめるお菓子となりつつあります。日本でも、2020年にパネットーネの魅力を伝える団体「パネットーネ・ソサエティ」が発足し、じわじわと知名度と人気が広がっています。

現地では、パネットーネにはワインをよく合わせるそうで、どんなワインが合うのか気になるところ。そこで、「パネットーネ・ソサエティ」の代表理事・八木理江さんと、プロデューサー・柴田香織さんのお二人をお迎えしてテイスティングに挑戦してみました。「私たちは、ソムリエではなく、あくまでもパネットーネの愛好家としての観点で選びました」というお二人。パネットーネに合うワインとパネットーネが持つ魅力についてお話を伺いました。

text WINE OPENER編集部 photo よねくらりょう

パネットーネ

■テイスティングしていただいた方

「パネットーネ・ソサエティ」代表理事 株式会社RIDEA 八木理江さん(写真左)
2006年、“美しいもの”“美味しいもの”をテーマに、クライアントのコミュニケーションをデザインするPR 会社「株式会社RIDEA 」を創業。食品、飲料、ファッション等のブランディング、PR、イベントプロデュースを手掛ける。国内外のトップシェフによる料理イベント、料理人に向けてのセミナーなど、食を創り出す人々をサポート。イタリアのパネットーネ・コンテストにも足を運んでいる。

「パネットーネ・ソサエティ」プロデューサー 株式会社 KOTODAMA PRESS 柴田香織さん(写真右)
食の役立つ情報と体験の提供をモットーに2020年4月株式会社KOTODAMA PRESS設立。食分野のコンサルティング、ディレクション、編集執筆などを行う。イタリアのUniversita degli Studi di Scienze Gastronomiche(食科学大学)修士課程修了第一期生。2020年3月まで株式会社三越伊勢丹研究所で食品ディレクターを務め現職。昨年出版された、内藤和雄著『土着品種でめぐるイタリアワインの愛し方』 (講談社の実用BOOK)を手がけた。

「パネットーネ・ソサエティ」https://panettonesociety.org/(外部サイトにリンクします)

パネットーネに合うワインの決め手とは?

―日本でもここ2,3年の間に広がってきたパネットーネですが、イタリアではワインにもよく合わせるそうですね。今回は、白の泡2種類、赤の泡1種類、赤ワインを2種類と、計5種類の様々なタイプのイタリアワインを、パネットーネを実際につまみながら試飲し、相性のよいワインを選んでいただきました。お二人とも一番合うワインとして、ピエモンテのワイナリー「テヌータ・カレッタ」の甘口微発泡ワイン「カレッタ モスカート ダスティ DOCG」を選ばれました。

パネットーネ

テヌータ・カレッタ
カレッタ モスカート ダスティ DOCG
参考小売価格:税抜1,900円

完熟したブドウの香りが楽しめる低アルコールワインの甘口微発泡ワイン。レモンやセージのような爽やかな香りと、ほんのり優しい甘い口当たりが特長です。

 

 

 

柴田香織さん(以下敬称略):「モスカート・ビアンコ」という品種を使ったピエモンテ州のワインには、甘口微発泡の「モスカート・ダスティ」と、スパークリングの「アスティ・スプマンテ」があります。昔からの製法(アンチェストラーレ)でアルコール発酵を途中で止める「モスカート・ダスティ」は、炭酸のアタックは強くないのですが、品種の個性がよく感じられます。以前から日本でもっと評価されてもいいワインだと思っていました。パネットーネとの相性がいいワインを選ぶにあたり、果実味と甘味をポイントに置きましたが、「カレッタ モスカート ダスティ DOCG」は、それに加えて発酵のニュアンスがパネットーネの発酵の風味とよく合うような気がします。

八木理江さん(以下敬称略):「モスカート」の自然な甘味がパネットーネと相性がいいですね。特に、今回のテイスティングに選んだ「ピアット・スズキ」(https://ga2k200.gorp.jp/)(麻布十番にあるイタリア料理の名店・外部サイトにリンクします)のパネットーネにはぴったりだと思います。

柴田:今回試したもうひとつの白の泡は、「マルティーニ プロセッコ」ですが、こちらの果実味と、パネットーネに使われている柑橘類の相性の良さには安定感がありました。意外だったのは「トレ・サッジ」との相性がよかったことです。赤ワインとパネットーネが合うのは新たな発見でした。

パネットーネ トレ・サッジ

トレ・サッジ
参考小売価格:税抜1,980円

すみれ色を帯びた濃いルビー色の赤ワイン。口に含むと、ブラックベリーやローストナッツなどの独特な味わいが広がります。赤系果実やスミノミザクラの実の香り、そして仄かなスパイス香が香りも特長。

 

 

 

 

マルティーニ プロセッコ

マルティーニ
マルティーニ プロセッコ
オープン価格

ヴェネト州で収穫されたグレラ種(プロセッコ種)100%使用した辛口タイプのDOCスパークリングワイン。青リンゴ、洋梨、メロンを思わせるみずみずしいフレッシュな香りが特長です。あらゆるシーンにマッチするライトな味わいが特長ですが、イタリアではきりりと冷やして乾杯のお酒として前菜と共に愉しむのが主流。

 

 

 

八木:面白い組み合わせでしたよね。タンニンを感じるけれど、パネットーネの甘さが引き立つというか。お互いに良さが出るというか。

柴田:こういう南の完熟したブドウのワインも合うのかもしれないですね。

八木:やはり、「ピアット・スズキ」の鈴木弥平シェフが作った、骨格がしっかりしたパネットーネだからこそ、「トレ・サッジ」のような、しっかりしたワインと相性がいいのでしょうね。

―パネットーネに合うワインは、今回は、「カレッタ モスカート ダスティ DOCG」と「トレ・サッジ」、「マルティーニ プロセッコ」ということでお二人の意見が一致しましたね。

シェアする食べ物、パネットーネの魅力

―ここからは、ここ数年でじわじわと広がっているパネットーネについてお話を伺います。お二人が立ち上げた「パネットーネ・ソサエティ」は2020年から活動を開始し、昨年も「パネットーネ・コンテストin Japan 2022」を主催されるなど、パネットーネに関する情報発信や啓蒙活動に取り組んでいらっしゃいます。

今回、テイスティングで登場したパネットーネは、イタリアのパネットーネ・コンテストでファイナリストにもなった、日本のパネットーネの第一人者「ピアット・スズキ」の鈴木弥平さんによるものでした。鈴木シェフのパネットーネは他とどう違うのでしょう?

パネットーネ

柴田:最近は、ふわふわした柔らかい食感のパネットーネが人気なのですが、イタリアでも評価された鈴木シェフのパネットーネは、ただふわふわしているのではなく、とても弾力があって、生地がもっちりと水分を抱え込んでいるような感じなんですよね。

八木:イタリアでは、まず、食べる前に香りを嗅ぎますね。パンの発酵の香りとはひと味違った、独特の乳酸発酵の香りがあるんです。ちょっと甘酸っぱいような、ヨーグルトのような。

柴田:パネットーネ作りは、基本的に、「リエヴィト・マードレ」といって、水と小麦粉だけで起こした「自家培養発酵種」を使用しますが、その発酵の香りは、各ベーカリーや菓子店などによって、異なるんですよね。毎日、発酵種をお世話しなければならないので、個人的には日本のぬか床にも重なるのですが。その店の手入れによってやっぱり何か味が違ってくるというのが面白いです。

パネットーネ ―そうすると、発酵の香りも個人個人で好みがあるでしょうから、イタリアの方たちは皆さん、私はこのお店、私はこのお店といったように、各自お気に入りのパネットーネがあるのでしょうね。

八木:そうですね、イタリアでは冬になると、パネットーネのコンテストがあり、ひとつの会場に約50ものパネットーネ職人のブースが並びます。一般の方も入れるので、まとめ買いで6~8個くらいを両手に器用に持ち歩く姿は、その時期ならではのミラノの風物詩だったりします。東京でもそういう光景が見られたらと思ったのも、「パネットーネ・ソサエティ」を立ち上げた動機のひとつです。

柴田:香りも大切ですが、パネットーネを切った断面も、イタリア人は必ずチェックします。気泡が縦に伸びているか、パネットーネを縦に割いた時にしっかりした繊維感があるか、そして噛んだ時に口溶けが良いか。いい発酵をしているかどうかのチェックポイントです。

―パネットーネは、シンプルながら、奥深いお菓子といえそうですね。では最後に、お二人が感じているパネットーネの魅力を教えてください。

柴田:よく、パネットーネはパンですか?お菓子ですか?と聞かれます。まさに、その中間なんですよ。だから、パンの職人も挑戦できるし、お菓子の職人も、イタリア業界ならピッツア職人も挑戦できる。そういう懐の広い、プラットフォームとしての面白さを感じています。

八木:私は、パネットーネの魅力は、やはり、シェアして食べるものだということです。もちろん一人で少しずつクリスマスまでカウントダウンしつつ食べるという人もいるでしょう。けれど、先程お話した、まとめ買いするミラノの人たちが、なぜそこまでの個数を持ち帰るかというと、自分の大切なお友達や家族、親戚とか、とにかく大切な人にプレゼントしたり、みんなで集まった時に、ひとつのパネットーネを切り分けて楽しむため。今だからこそ、シェアする食べ物はもっと見直されてもいいのではと思っています。

パネットーネ

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※ワインについては、記事掲載時点での情報です。