LIFESTYLE

ORGANIC LIFE with パラ・ヒメネス vol.2
特別対談「SUNPEDAL」YOKO KOIKEさんと
「パラ・ヒメネス」3代目パブロさんが語る
日本とスペインのオーガニック事情とワイン

洗練されたヴィーガンケータリングを手がけることで知られる気鋭のフードクリエイター「SUNPEDAL」YOKO KOIKEさんと、スペインにおける有機ワインの先駆者「パラ・ヒメネス」3代目オーナー兼醸造家のパブロ・ハビエル・パラ・ヒメネスさんに、食やワイン、そこから広がる日々の暮らしについて語っていただきました。今回のために、「パラ・ヒメネス」に合うスペシャルな料理を作ってくださったYOKOさん。パブロさんにはどのように響いたのでしょうか。

text WINE OPENER編集部 photo よねくらりょう

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「SUNPEDAL 」YOKO KOIKE(写真右)
フードクリエイター。ヴィーガン専門のケータリング「SUNPEDAL」主宰。都内の有名ヴィーガンレストランをはじめ、食に関する様々な仕事を経て、2018年に独立。食への関心が高い母親の影響を受け、自然と食を探求する道へ。国内外を旅して出会った生産者のプロダクトを発信するポップアップイベントも主宰するなど、幅広い活動で知られる。
https://www.sun-pedal.com/(外部サイトにリンクします)

パブロ・ハビエル・パラ・ヒメネス(写真左)
スペインのワイナリー「パラ・ヒメネス」3代目オーナー兼醸造家。子どものころから父のあとをついてブドウ畑を走り回り、スペインでも有数の醸造学部がある大学で醸造を学ぶ。現在、いとこたちと共に、自然の循環のなかでのワイン造りをモットーとし、羊の飼育やチーズ造り、有機野菜の栽培まで手がける。

今回登場するワイン

パラ・ヒメネス
パラ・ヒメネス シャルドネ[オーガニック]
参考小売価格:税抜1,000円(750ml )

有機栽培のシャルドネを使用した黄金色に輝く白ワイン。完熟した果実の甘いアロマとスパイシーな香りが魅力です。酸味のバランスも良く、華やかな味わいが楽しめます。

 

 

 

 

1D51パラ・ヒメネス カベルネ[オーガニック]G01外観

パラ・ヒメネス
パラ・ヒメネス カベルネ・ソーヴィニヨン[オーガニック]
参考小売価格:税抜1,000円(750ml )

ブラックベリーやブラックチェリーのアロマに黒い粒胡椒のスパイシーな香りが特長的な赤ワイン。色調は紫色を伴った深いレッドチェリーで、完熟した果実ならではのキメ細やかな渋味と豊富な果実味が楽しめます。

 

 

 

「パラ・ヒメネス」のワインの背景から
インスパイアされた特別な一皿

―今回、「パラ・ヒメネス」に合わせていただいたのはどんな料理なのでしょう?

YOKOさん(以下、YOKO):「パラ・ヒメネス」のシャルドネを使った「ナスのグリル包みサフラン塩麹ヴィーガンバターソース」です。無農薬の黒大豆で作ったテンペとマッシュルームのパティを、薄くスライスした茄子で包みました。

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パブロ・ハビエル・パラ・ヒメネスさん(以下、パブロ):見た目も華やかですね。白いソースにはにんにく、パセリと…。

YOKO:オリーブオイル、サフラン、それから、「パラ・ヒメネス」のシャルドネと塩麹と酒粕を使用しています。せっかく日本にいらしたので、特色のある食材を取り入れてみました。

パブロ:私は自分でも料理をしますが、両親の家から歩いて2分のところに住んでいるので、母の料理もよく食べます。こちらをいただいて、母が作るナスの肉詰めを思い出しましたが、YOKOさんの料理の方がずっと手がかかっていておいしいです。料理の味がしっかりしているので、ワインを飲むと、口の中がワインの酸でリフレッシュされて、二口目もおいしくいただけますね。ワインとの相性もとってもいいと思います。

YOKO:ありがとうございます。どことなく魚介類を思わせるサフランの味わいも、シャルドネに合うと思いました。

―料理を作るにあたって、「パラ・ヒメネス」のワインのどのような点からインスパイアされたのでしょう?

YOKO:ワインの味わいの前に、どのように造られているのか、ワイン造りの背景が気になり、調べたところ、循環型の農業で造られていることを知って、とても感銘を受けました。日本ではそういったスタイルはなかなか難しいとは思いますが、たとえば、ソースで使った酒粕は酒造りの副産物でありながら廃棄せず、伝統的な調味料として料理に使用されます。「循環」という意味で重なる部分があると思い、ワインといっしょに酒粕と日本の食文化に欠かせない麹を合わせてみました。

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パブロ:ワインも、おりは出ますが、酒石酸がたくさん入っているので料理には使いません。蒸留して別の酒を造ります。「酒粕」は日本独特のものですね。

―YOKOさんの料理は、普段からスパイスやハーブなどを使われることが多いですよね。今回はどのようなものを使っていますか?

YOKO:スーマック(中近東で使われるスパイス)やバジルなど16種類のスパイスとハーブをミックスしたオリジナルの塩を使っています。普段は、日本酒を料理酒として使うことが多いのですが、今回は「パラ・ヒメネス」のワインを使ったら、スパイスやハーブを華やかに引き立ててくれました。料理をしていてもシャルドネの香りが豊かに漂って楽しかったです。

パブロ:今までの人生で経験したことがないスパイスが入っているような気がしました。複雑な味がして面白いです。

YOKO:私の料理は、スパイシーで複雑な味わいのものが多く、食べている間にうま味、酸味、甘味と、様々な味の変化を感じられると思います。もしかしたら、一般的にヴィーガン料理にお酒を合わせるイメージは薄いかもしれませんが、先程、パブロさんがおっしゃられたように、複雑な味わいの料理をフルーティな酸が効いたワインで一度リセットしてくれるので、今日のシャルドネと合いますよね。

パブロ:ナスなど、自分の地元にもある身近な野菜をうまく取り入れて作っていただいているので、自分の故郷の土を思わせるような、どこか懐かしい感じもしました。

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ワインでも食品でも、
オーガニックは手が届くことが大切

「パラ・ヒメネス」に合わせる料理を考える際、ワイナリーの背景までさかのぼってイメージを広げたというお話でした。「パラ・ヒメネス」は、スペインでオーガニック・ワインの先駆者として知られていますが、YOKOさんも普段から、オーガニックの食材を選ぶようにしているのでしょうか?

YOKO:そうですね。オーガニックであるかどうかはもちろん意識して選んでいますが、私は、その食材がどこから来ているかをとても大切にしています。ハーブやスパイスを多用する自分のスタイルでは、すべての食材を国産のものを入手するのは難しいのですが、できるだけ、近郊で採れたお野菜を選んだり、知り合いの農家さんからいただいたりしています。

日本では特にここ数年でスーパーでも有機野菜や有機食品のコーナーの充実が加速しているように思いますが、スペインでのオーガニック食品の広がりはいかがでしょう?

パブロ:スペインも、有機食品の専門店が少しずつ増えてはいますが、全体としてはまだ認知度が低い印象です。スペインは、おそらく、EUの中でも有機野菜の栽培が盛んな国なのですが、それらはほとんどフランスやドイツに輸出されているというのが実情です。私たちにとっても、特にドイツは大きなマーケットで、オーガニック志向が強く、有機食品のみの大きなスーパーマーケットチェーンもあるほどです。

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私自身の暮らしで言えば、住んでいるのはラ・マンチャの田舎の村ですが、そういうお店はありません。ただ、村には有機栽培の農家さんがいて、そこのおじいさんが、野菜をもって一軒一軒、「今日はこんな野菜があるよ」と回る光景は見られます。

YOKO:そんな中で、オーガニック・ワインを造った先駆けでいらっしゃるんですよね。生産者さんを回って話を伺うと、有機栽培の農家さんはとても大変そうで、パブロさんが大きな規模でワイン造りや野菜栽培まで手がけていることはすごいと思います。

パブロ:ワイナリーの持続可能性を考えたときに、次の世代に繋げるように、そのビジネスモデルが成り立ってないと、どんな いいものを作っていても自分の代で終わってしまいますからね。

「パラ・ヒメネス」がオーガニック・ワインになったのは、私が生まれた翌年です。父やおじたちが、自分の子どもたちの世代においしくて健康なものを食べさせたい、そのためには有機農業に転換した方がいいのではないかと一念発起して始めたのですが、その頃はまだ情報も少なく、有機認証がスペイン国内にあるというのは聞きつけたものの、どうやってその認証を取ったらよいかさえもわからなかった。当時のことを聞くと、父たちは村の人たちみんなから、どうかしてしまったんじゃないかと言われていたらしいんですよね(笑)。それくらい、まだ有機認証についても浸透していなかったんです。

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パブロさんは3代目にあたるわけですが、引き継いでから変えたことはあるのでしょうか?

パブロ:幼いころから父にくっついてワイナリーでいろいろな仕事をして、覚えて、その影響でこの道に行こうと決めて始めたので、ワイン造りの哲学的な部分では、父の代と変わっていないと思います。

ただ、自分が入ったことで余力が生まれたので、前はワインだけだったのを有機栽培の玉ねぎやにんにくも作り、出荷量を増やして、自分たちの手でお客さんのところに届くシステムを作ったりしています。ひとつだけワイン造りで違うところがあるとしたら、父の造り方はクラシックで、プレスもマセラシオン(発酵中の果汁に果皮や種子などを漬け込むこと)も強く、味が濃かった。今は、バランスよく飲みやすいワインを造るように心がけているので、多くの方に飲んでいただきたいですね。

—パブロさんと同じく、YOKOさんが食の道に進んだのもご両親の影響が大きいと伺いました。

YOKO:完全に母親からの影響ですね。私が小さい頃から、オーガニック食品を意識していて、母といっしょにオーガニックスーパーに買い物に行くのが日常でした。今、私の周りでも、持続可能性を意識して食品を作っている方々は本当にたくさんいるのですが、それぞれ規模が小さいので、どうしてもたくさんの人の手元に届くようになるまでのサイクルを作ることが難しい。結局、食に対して自主的に動く人にしか届かないのが現状で、でもパブロさんのワインのように、手の届く価格と流通が成り立っていることは、本当に素晴らしいことだと思います。

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パブロ:ありがとうございます。ワイン以外では、おそらくスペインでもそういう有機の食品を求めている人はもっといると思うのですが、やはり農家の方とうまく繋がるチャネルが整っていないので、それは課題ですね。

―YOKOさんが開催するポップアップイベント「さんぺだる旅まるしぇ 〜SOIL TO PEDAL〜」は、まさにそういった小規模だけれど思いのこもった食の生産者の方たちと消費者の出会いを生む場所ですよね。

YOKO:昨年と今年の2回、新宿伊勢丹のファッションフロアで開催しました。国内外を旅して出会った人たちが手がけるいいものを揃えるのですが、皆さん、オーガニックへの入口がそれぞれ違うんですよね。ヘルシーだから、単純においしいから、持続可能なものを選びたいから…といったように。食に関心が高い人だけではなく、食を含めたライフスタイルに合わせて幅広い人に提案することができるのが、ポップアップのいいところかと思います。

パブロ:とってもいい活動だと思います。スペインでもYOKOさんのように生産者をオーガナイズできる人が出てくれば、もっとオーガニックの市場が元気になると思うし、マルシェという形もまだまだ成長できそうです。

―オーガニックは食の話だけではなく、どう暮らしていくかといった話になりますよね。

YOKO:衣食住すべてに通じていますよね。それぞれのライフスタイルに合った「いいもの」を選べる、選択肢があるということを伝えたい。生産者と消費者の間にかける橋のような役割は、料理とはまた別のパッションをもって取り組んでいることなので、自ら各地に足を運んで、今後も続けていきたいし楽しいと思っています。間口を広げていきたいのは、手がけているヴィーガンの料理も同じで、ヴィーガンじゃない方にもアプローチしていきたいと思っています。「ヴィーガン」という枠にカテゴライズされてしまうと、そこで閉じてしまいます。それよりも、まずはフラットな状態でおいしいかどうか感じてほしいです。

パブロ:私も、すごく特長があるワインを造ろうと思っているわけではなくて、届けたいのは、誰にでも飲んでもらえるワイン。いいものを気軽に飲んで、ワインの楽しさを知ってほしい。それが広がっていけば、私たちはさらに畑を増やして、今自分たちがやっているような持続可能な農業をするチャンスが増えるので。

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YOKO:パブロさんが思う「ワインの楽しさ」は何ですか?

パブロ:仕事が終わった後に一杯飲んですごくリラックスできたら、生活そのものが楽しくなると思うんです。もちろん、食事もよりおいしく食べられますし、そういう意味で暮らしの中にワインを取り入れてもらえたらと思います。

YOKO:最後に、パブロさんがオーガニック・ワインを造っていて大変だったこと、よかったことをお聞きしたいです。

パブロ:父が有機認証に取り組み始めた頃は大変だったかもしれませんが、約30年経った今は、ブドウ畑の状態も非常に安定しているので、安心して栽培できています。もう自然に任せておけばいいブドウが育つことがわかっていますからね。いいブドウさえ収穫できたらいいワインになるので、そういう意味では醸造家としての苦しみはないですね。

YOKO:それだけブドウの品質が安定しているということなんですね。

パブロ:ワイン造りの喜びは、今お話したように安定した状況なので、ワイン以外の有機野菜やチーズ造りなど、新たなチャレンジができるのが自分にとってすごく楽しいです。日本でもオーガニック・ワインがもっと成長するといいなと思いますし、それに付随して、日本でもスペインでも、その有機の農作物をうまく供給できて、ほしい人の手元に届くようになったら嬉しいですね。

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※ワインについては、記事掲載時点での情報です。

 

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