CULTURE

OPENER LOUNGE talk&music
グラス片手に音の旅へ vol.6 特別編
7ORDER・萩谷慧悟&阿部顕嵐ワイン対談 後編

いいワインにはいい音楽を。音を知り尽くしたプロフェッショナルたちに、ワインと音の関係をうかがい、毎回、ワインを楽しむためのエクスクルーシヴなプレイリストを作っていただく特別企画「OPENER LOUNGE talk&music」。前編に続き、バンドもダンスもこなす多才な7人組アーティスト「7ORDER」のメンバー、萩谷慧悟さん&阿部顕嵐さんの特別対談をお届けします。萩谷さんはスタッグス・リープ・ワイナリー「ナパ・ヴァレー メルロー」、阿部さんはM.シャプティエ「エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌ」をそれぞれ選んで、ワインの楽しみ方や音楽について語っていただきました。

text:WINE OPENER編集部

OPENER LOUNGE Vol.6

ワインを飲む時間に緩急をつけるようなイメージで曲をセレクト

―萩谷さんのプレイリストを語っていただいた前編に引き続き、後編では、阿部さんのプレイリストについて伺っていきます。UK系の曲が多いですね。

阿部顕嵐さん(以下敬称略):UK大好きなんですよ。あとは「ネオ・クラシカル」と呼ばれるジャンルに入るような、クラシック的な音楽が好きで、よく聴きますね。

—1曲目のLudovico Einaudi,Daniel Hope,I Virtuosi Italiani「Experience」はまさに、そのような曲ですね。

阿部:こちらは、あるハイブランドのお店でBGMで流れていて、すごく素敵な曲だなと思って検索したのがきっかけです。ピアノやストリングスがメインの曲ですが、まだここはワインを飲み始める前の準備段階です。気持ちを高める感じです。

―聴いていると徐々に気持ちが高まってくるような曲ですね!

阿部:次は、ジブリ映画『思い出のマーニー』のサントラからです。この曲も、これから飲み始めるぞ、という気持ちに合う曲で、飲み始めたら、次のカサビアン「Underdog」でスタートするんですよ。(イントロを口ずさむ阿部さん)

萩谷慧悟さん(以下敬称略):テンションが上がるね。

阿部:けっこう盛り上がってきたところで、ケンドリック・ラマーです。この曲、本当にかっこいいんですよね。これを聴きながら、ワインを飲みたいなっていう感じですね。次のThe Style Councilは、飲んで楽しくなる感じにぴったりな、陽気な曲を選びました。おしゃれな雰囲気が合うかなと思って。

―次はUKロックの代表ともいえるレディオヘッドですね。

阿部:もう、これは不協和音がずっと続く曲で、高揚した気分を表してみました。

萩谷:こうして聴いてみると、顕嵐は重ための赤ワインが好きだから、「エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌ 」の重たいイメージと、このレディオヘッドの重い曲がしっくりくるよね。

阿部:そう! ワインの重さと曲の重さを合わせてみました。この次が、ビリー・アイリッシュのお兄さん、FINNEASの「I Don’t Miss You at All」という曲です。さっきのレディオヘッドで盛り上がったので、いったん落ち着こうと思ってこの曲にしたんですが、実はスローなバラードかと思いきや、途中からEDMっぽい音が入ってきて、感情が揺さぶられるんです。

萩谷:忙しいね(笑)。

阿部:割とそういう曲が多いアーティストですね(笑)。だから、急に楽しくなったり落ち着いたりと、ワインを飲む時間に緩急をつけるようなイメージです。

―続いては、ドラマにも出演したZ世代のアーティストとして注目を集めるDominic Fikeの曲ですね。

阿部:すごくおしゃれな曲なんですよ。おしゃれなんですけど、曲のタイトルが「She Wants My Money」っていう(笑)。ちょっと憂鬱さもある曲で、落ち着こうかなと。で、落ち着いたら、また飲み始める気分にぴったりなのが、リンキン・パーク。ピアノの旋律もとてもきれいで大好きな曲です。ここですごく盛り上がって、次がUKのマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン。ここまでくると、もはや自分に酔ってますね。

萩谷:(笑)。

阿部:ここがピークです(笑)。いや、次がピークかな。元オアシスのリアム・ギャラガーの曲で、これもとてもかっこいい曲なんですが、最後にすごい叫ぶんですよ(笑)。激しく終わったら、ラストはネオ・クラシカル系のグループ、Ashramのピアノとストリングスの曲です。最初の曲もピアノとストリングスの曲だったので…。

萩谷:すごいね。またそこに戻ってきたんだ。緩急がありつつ、つながってるんだね。

阿部:最後の曲の時には、眠たくなっているかもしれないけれど(笑)。

―こちらのプレイリストには、「エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌ」から受けた印象がどのように反映されているのでしょう?

阿部:実際に飲んでみて、どこかスパイシーな味わいが印象的でした。なので、そのイメージで、少しエッジがきいた曲を散りばめています。僕自身、普段からそういうワインが好きですし、音楽もそういう曲が好きなので、ワインを飲みながらそんな曲を流したり、映画を観たりしていますね。

萩谷:顕嵐っぽいプレイリストだよね。UKとかネオ・クラシカルとか、ジャンルがはっきり分かれているんだけれど、どこかひねりがきいている。さっき言ってた、ワインの印象と同じくスパイスをきかせたっていうのが、伝わってきた。

いいワインを飲むとひとつ基準ができて
他のワインを飲んだ時も違いがわかる

阿部:今回のプレイリストは二人とも方向性が全然違ったけれど、好きな味の方向性は似てるよね?

萩谷:うん。たぶん、顕嵐と僕は同じくらいワインにはまって、基本的にオタクだと思うんですが、ひとつ違うのが、僕が群を抜いてオタク気質なことなんですよ。

阿部:ああ(笑)。

萩谷:気になるワインがあったら徹底的に探したり、おいしいと思ったワインについてもっと知りたくなって、勝手に調べ始めたりとか。あとは、お店で飲みたいか家で飲みたいかでも変わってくるかもしれません。顕嵐はお店で飲みたいけれど、僕は自宅で飲みたいんですよ。ボトルを家に置いておきたい。

阿部:ああ、そうなんだ。

萩谷:コレクション気質もあるから。

―阿部さんは、ワインのどういうところにはまったのでしょう?

阿部:僕は母の影響がとても強いです。昔は赤ワインをよく飲んでいた人で、飲む時は1日1本開けちゃうくらいで(笑)。僕が大人になって、いっしょに食事に行くと母は必ずワインを頼むので、最初は、「ワインってこういう味なんだ」くらいの感想だったのですが、だんだん、おいしいと思えるようになったんですよね。

萩谷:ワインと出合った最初のうちにいいワインを飲む機会に恵まれると、好きになるよね。よく、「いいワインを飲んだら、他のワインが飲めなくなる」と言われることもありますが、そうじゃなくて、いいワインを飲むとひとつ基準ができるので、他のワインを飲んだ時も、違いがわかるというか。

阿部:そうそう。どちらの良さもわかるよね。

萩谷:でも、僕たちも決して毎日しっかりした赤ワインを飲んでいるわけではなくて、そういうワインを飲む時はやはり特別感があります。今日はがんばったから、いいワインを飲もうとなりますが、それ以外の日常では、軽めの白を飲むこともありますし。いいワインは、自分にとってのご褒美という感じがありますね。

阿部:週に1回でも、自分が気に入っているワインを楽しめたらいいですよね。そういう時はキャンドルを灯すなど、ちょっと非日常の演出をしても素敵ですよね。

―特に若い方にとって、ワインはハードルが高いという声も時々聞きますが、そんなふうに取り入れられたら楽しそうですね。

阿部:僕も最初は、ワインは日常の酒ではないというイメージを持っていました。でも、イタリアに旅行した時、日常の暮らしの中でワインを飲んでいる人たちを見て、固定観念が外れました。ワインは毎日のお酒であることを知っておくと、捉え方が変わって、ワインに対するハードルが下がるような気がします。

そうしてワインの世界に一歩足を踏み入れたら、今度はワインの中にも選択肢がいろいろあることを知って、どんどん世界が広がっていくと思うんですよね。重いのもあれば軽いのもあるし。その中から自分が好きなワインを選べば楽しくなってくると思います。

萩谷:やはり、最初のワインとの出合い方が大切かなと思います。お酒を知っている人にいいワインを教えてもらうというのがいいですよね。それを好きになるかどうかは別として、詳しい人が教えてくれたワインはきっとおいしいと思うんですよ。先程も話が出ましたけれど、それを基準に、じゃあ、次はこういうのを飲んでみようとだんだん広がっていくと思うので、まずは、いいワインをぜひ、試してみてほしいですね。

 

7ORDER 阿部顕嵐さんセレクト
M.シャプティエ「エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌ」のためのプレイリスト

  1. Experience/Ludovico Einaudi,Daniel Hope,I Virtuosi Italiani
  2. Fine On The Outside/プリシラ・アーン
  3. Underdog/カサビアン
  4. United In Grief/ケンドリック・ラマー
  5. My Ever Changing Moods/The Style Council
  6. Burn the Witch/レディオヘッド
  7. I Don’t Miss You at All/FINNEAS
  8. She Wants My Money/Dominic Fike
  9. What I’ve Done/リンキン・パーク
  10. only shallow/マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン
  11. Wall of Glass/リアム・ギャラガー
  12. Elizabeth/Ashram

 

 

「M.シャプティエ」

1808年ローヌの銘醸地タン・エルミタージュに創業してから7代目ミシェル・シャプティエに至るまで一貫した家族経営のもと、畑を守り、テロワールを尊重する姿勢を貫く造り手。早くからビオディナミ農法に取り組んでおり、伝統と現代性を組み合わせた革新的かつ謙虚なワイン造りが感動と本物の味わいをもたらしている。

 

●阿部顕嵐さんに今回試飲いただいたワイン

OPENER LOUNGE Vol.3

M.シャプティエ

エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌ

参考小売価格:税抜13,000円

世界中から絶賛されるテロワール「エルミタージュ」の丘にある、異なる畑のぶどうをブレンド。ラズベリーやリコリスのニュアンスで、スパイシーなアロマも感じるまろやかでエレガントな赤ワインです。

 

※ワインについては、記事掲載時点での情報です。

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7ORDER(セブンオーダー)
OPENER LOUNGE Vol.6

2019年5月に、安井謙太郎、真田佑馬、諸星翔希、森田美勇人、萩谷慧悟(写真左)、阿部顕嵐(写真右)、長妻怜央の7人で始動させたプロジェクト。2021年1月13日にメジャーCDデビュー。バンドもダンスもオールマイティにこなし、精力的に全国ツアーを行なう。舞台や映画出演など、メンバー各自の活動も盛ん。

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https://7orderproject.com/