CULTURE

OPENER LOUNGE talk&music
グラス片手に音の旅へ vol.3
EXILE SHOKICHI×「M.シャプティエ エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌ 」(フランス)

いいワインにはいい音楽を。音を知り尽くしたプロフェッショナルたちに、ワインと音の関係をうかがい、毎回、ワインを楽しむためのエクスクルーシヴなプレイリストを作っていただく特別企画「OPENER LOUNGE talk&music」。第3回は、ダンス&ヴォーカルグループEXILEのメンバー、EXILE SHOKICHIさんが登場。なんと一ヶ月に「150本以上を抜栓し、ペアリングのイメージを模索している」という猛者で、「ブルゴーニュを中心に日本はもちろん第三世界(ニューワールド) 含めた全世界のあらゆるワインとの出会いを楽しんでいる」という生粋のワイン好きです。今回はフランスの名門「M.シャプティエ」から「エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌ」をチョイス。M.シャプティエへのリスペクトを、テロワール (風土)を意識した選曲で表現していただきました。

text:WINE OPENER編集部

OPENER LOUNGE Vol.3

プレイリストで表現したかったのは
ワインの味わいの移り変わりと
エルミタージュの丘の風景

―EXILE SHOKICHIさんがワインに魅了されたのは、どのようなタイミングだったのでしょうか?

EXILE SHOKICHIさん(以下敬称略、EXILE SHOKICHI):僕が25歳くらいのときなので、約11年前ですね。たまたま誕生日にバースデーヴィンテージ のワインを飲ませていただいて、時を飲む感覚というか、そのストーリーに魅了されたのが始まりでした。そこから勉強していくうちに、歴史や風土、造り手の想いに対する感動があり、今は向き合うワインとの一期一会を楽しんでいます。

国内のワイナリーにも足を運んできたそうですが、そういった経験から何を得ましたか?

EXILE SHOKICHI造り手のアイデンティティーの違いでしょうか。同じぶどう品種でも、みなさん捉える角度や視点が違うんです。これって音楽と同じなんですよね。1つの曲をどの方向から捉えるか…。僕たちEXILEも、メンバーそれぞれダンスのスタイルが違いますしね。例えばHIPHOPでいうと、Dr.DreがいてSnoop Doggがいて、いわゆる相関図が描けるんですよね。ワインも同じで、グロ家がいて兄弟の枝分かれがあって…みたいな。これって僕が音楽にハマっていく過程とまったく同じなんです。

なるほど!音楽好きがワインに魅了される理由は、そのような親和性の高さに要因があるのかもしれませんね。EXILE SHOKICHIさんはワインに魅了されて10年以上になるそうですが、M.シャプティエにはどのようなイメージがありましたか?

OPENER LOUNGE Vol.3

EXILE SHOKICHI老舗でありながら現代的なワイナリーというイメージですね。進化するための変化を厭わないM.シャプティエに対しては、とても哲学的なものを感じています。M.シャプティエは1991年からビオディナミ農法への取り組みを始めていますが、それは商業的にビオワインを作ることが目的ではなく、テロワールを表現するための手段だったんですよね。あと、M.シャプティエが点字ラベルを採用している背景に、極上の畑を所有していたシズランヌ家へリスペクトがあるというストーリーも、美しいと思いました。

OPENER LOUNGE Vol.3
「シズランヌ」の畑の前所有者であるモーリス・モニエ・ド・ラ・シズランヌ氏は点字の短縮版の発明者。畑を受け継いだM.シャプティエ社はシズランヌ家に敬意を表すとともに、視覚に障害を持つ方々を含めたすべてのワイン愛好家の皆様に同社のワインをお届けしたいという思いから、1996年以降すべてのワインのラベルに点字を導入している。

―M.シャプティエは「食文化を支えるのは我々の使命」と言い、「料理とのマリアージュを意識したワインづくり」にこだわり続けています。EXILE SHOKICHIさんには今回、M.シャプティエのワインを複数本ご試飲いただきましたが、どのようなマリアージュをイメージされましたか?

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コンドリュー インヴィターレ

EXILE SHOKICHI:「コンドリュー インヴィターレ」は天ぷらと合わせたくなりました。鱧とか淡泊な素材をサクッと揚げた天ぷらに、銘醸地コンドリューならではの‟花“を添えるイメージでしょうか。

 

 

 

 

 

OPENER LOUNGE Vol.3
シャトーヌフ・デュ・パプ・ルージュ ラ ベルナルディン

シャトーヌフ・デュ・パプ・ルージュ ラ ベルナルディン」は、飲んだ瞬間に中華料理が思い浮かびました。がっつり花椒をきかせた料理よりも、洗練されたモダンチャイニーズのほうが合うように感じましたね。

そして今回のプレイリストのお題となった「エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌ」は、意外なところで言うと盛り蕎麦にも合いそうだなと。蕎麦つゆの出汁感とワインのエキス感がマッチする気がしました。あとはワインをジャム感覚でパンと合わせるのもいいですし、もちろん肉はマストで合いますよね。ソースは濃厚なものよりもさっぱり仕立てのほうが合うと思いました。いつもならワインを飲むときは必ず食事と一緒なんですが、今回のテイスティングでは、食べ物とマリアージュしながらではなく、じっくりワインと向き合いながら飲ませていただいたんですね。それで一番に感じたことがあって…。

―どんなことでしょうか?

EXILE SHOKICHI:ワインが届いてから1週間くらいセラーで寝かせた後に抜栓したんですが、飲み進めていくうちに味わいが変化していくんです。その移り変わりが、とても優雅で楽しくて。プレイリストの話になりますが、終盤にEngelbert Humperdinck の「A Man Without Love(邦題:愛の花咲く時)という曲を入れたのは、まさにそこでエルミタージュの花が開いたことを表現したかったからなんです。

このプレイリストを
第4のアロマとして楽しんで欲しい

―プレイリストを通して聴くと、確かに「A Man Without Love」はポイントになっていますよね。「エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌ」を飲みながら、プレイリストの全体像はどのようにイメージして選曲したのでしょうか?

OPENER LOUNGE Vol.3

EXILE SHOKICHI:この「エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌ」は、僕との出会いをずっと待ってくれていたわけじゃないですか。抜栓したときに、ワインはその眠りから覚めるわけですが、抜栓直後はまだ自分が目覚めたことに気づいていないんですよ。イメージでいうと、陽が昇る前の真っ暗な静寂。その静けさを1曲目で表現しました。そこから陽が昇り、だんだんと空がオレンジ色になっていく。その様を、僕の中では2022年上半期一番のヒット曲、ジェイコブ・コリアーの「Never Gonna Be Alone(feat. Lizzy McAlpine, John Mayer)」で表現しました。ジョン・メイヤーが弾くギターが、僕のこのイメージと最高にマッチしたんです。

ワインを抜栓してからの味わいの移り変わりを、1日の陽の流れに置き換えて選曲していただいたわけですね?

OPENER LOUNGE Vol.3
コート・ロティ クワテュオール

EXILE SHOKICHI:はい。ボトルが空になって、最後の余韻に浸るところまでをこのプレイリストではイメージしています。「A Man Without Love(邦題:愛の花咲く時)」で花が咲いて、その余韻を残しつつ、最後に選曲したのがThe 1975の「Be My Mistake」という曲。この曲は、二人の女性を好きになってしまうという詞世界なんですが、実は今回テイスティングさせてもらったときに、「エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌ」と「コート・ロティ クワテュオール」のどちらで選曲するか迷ったんです。その揺れた僕の想いを、余韻としてプレイリストに残しました。

そこまで考えてくださったとは!ありがとうございます。EXILE SHOKICHIさんの音楽性の幅広さをご存じの方はともかくとして、いわゆるEXILEとしてのパブリックイメージを抱いた方にとって、このプレイリストは意外かもしれませんね。

EXILE SHOKICHI:僕が選曲するならHIPHOPが入っていたり、もっとビートのきいた曲が入っていると思うかもしれないですね。でも、「エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌ」は、そういうイメージではなかった。今回はジャジーな曲があったり、少しコアな曲も入れつつ、ロバート・グラスパーとジル・スコットの「Calls」とかメジャーな曲も選んで、より多くの方がワインを飲みながら楽しめるように選曲しました。このプレイリストを第4のアロマとして感じながら飲んでもらえたら嬉しいですね。

第4のアロマとは、とても素晴らしい表現ですね! このプレイリストを聴きながら、抜栓した「エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌ」の味わいの変化を楽しんでもらうのもひとつの提案ですが、他にEXILE SHOKICHIさんから読者の皆さんに向けて提案したいことはありますか?

EXILE SHOKICHI:ちょっとした記念日のディナーに、この「エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌ」を添えるのも素敵ですよね。そうするだけで、いつもの日常が少しだけ非日常になって、何気ない1日に花を添えてくれると思うんです。このワインは、言ってみれば花束のようなもの。ワインは記憶を心の中に留めておけるアイテムだと思うので、記念日にちょっと特別なワインを飲んで、人生の素敵な1ページを作って欲しいですね。

 

「M.シャプティエ エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌ」のためのプレイリスト

  1. Wolves Are Waiting/Dustin Tebbutt
  2. Walk Above the City(feat.Maro)/The Paper Kites,MARO
  3. With You/Cujo Moon
  4. Never Gonna Be Alone(feat.Lizzy McAlpine&John Mayer)/ジェイコブ・コリアー,Lizzy McAlpine,ジョン・メイヤー
  5. Phone/Louis Cole
  6. Don’t Forget/Cory Henry
  7. Calls/ロバート・グラスパー,ジル・スコット
  8. Family/RHファクター
  9. Wave Decay/ゴーゴー・ペンギン
  10. Genou respirant-Stimming Remix/Koki Nakano,Stimming
  11. Baby I’m A Fool/Melody Gardot
  12. A Man Without Love/Engelbert Humperdinck
  13. Everything/マイケル・ブーブレ
  14. Be My Mistake/The 1975

 

 

 

「M.シャプティエ」

1808年、ローヌの銘醸地タン・エルミタージュで創業。以来、7代目ミシェル・シャプティエに至るまで、一貫した家族経営で畑を守り続けている。テロワールごとの味わいやぶどうの特長を最大限に表現するため、90年代からビオディナミ農法を導入。パーカーポイント100点満点を40回以上獲得し、2010年以降は 5回もフランスのワイナリー No.1*を獲得している名門ワイナリーだ。

*:ドリンクス・インターナショナル誌「世界で最も称賛されるワインブランド」ランキング

 

●EXILE SHOKICHIさんに今回試飲いただいたワイン

OPENER LOUNGE Vol.3

M.シャプティエ
エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌ

参考小売価格:税抜13,000円

世界中から絶賛されるテロワール「エルミタージュ」の丘にある、異なる畑のぶどうをブレンド。ラズベリーやリコリスのニュアンスで、スパイシーなアロマも感じるまろやかでエレガントな赤ワインだ。点字の短縮版を発明したモーリス・モニエ・ド・ラ・シズランヌ氏、そして彼ら一族が所有していた畑に対する敬意を表し、シズランヌ家の紋章が印刷されている。M.シャプティエの点字ラベルの原点と言える1本。

 

※ワインについては、記事掲載時点での情報です。

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EXILE SHOKICHI
OPENER LOUNGE Vol.3
EXILEのヴォーカル/パフォーマー。派生グループEXILE THE SECONDのメンバーとしても活動する傍ら、ソロ・アーティスト/プロデューサーとしても活躍。2018年7月には自身が取締役を務めるLDH music & publishing内に自らがプロデュースするレーベル「KOMA DOGG」を立ち上げる。これまでに数多くの楽曲の作詞、作曲を手掛けてきた。現在、全国ツアー「EXILE LIVE TOUR 2022 “POWER OF WISH”」が開催中。https://exile.jp/ (外部サイトにリンクします)