CULTURE

ワインのネゴシアンとは?ドメーヌとの違いとその役割

フランス、それも特にブルゴーニュのワインで、「ドメーヌ」「ネゴシアン」という単語を耳にしたことはないでしょうか。

「ドメーヌものに比べるとどうしてもネゴシアンものは・・・」とか「やはりドメーヌものは良いね」というような使われ方をします。

「ドメーヌもの>ネゴシアンもの」という文脈で使われることが多いのですが、本当にそうなのでしょうか。

そこで今回は、ネゴシアンとドメーヌの違いやネゴシアンが果たす役割、そしてそれぞれのワインの味わいの違いなどについて、詳しく解説します。

ワインのネゴシアンとは?ドメーヌとの違いとその役割

ネゴシアンとドメーヌの違い

ネゴシアンとドメーヌの違いは、「ブドウの栽培をしているかどうか」にあります。

ネゴシアンとは

ネゴシアン(Négociant)とは、フランス語で「卸売業者」や「卸売商」を意味する言葉で、特にワインの流通に携わる業者を指すことが一般的です(Négociant en vins)。

その中でもブルゴーニュなどの小規模生産者が多い地区では、自社ではブドウの栽培は行わずに、農家から仕入れたブドウやブドウ果汁でワインを醸造し、自社ブランドとして出荷する生産者のことを指し、日本でもこの意味合いで使われることが多くなっています。

ドメーヌとは

一方のドメーヌは、フランス語で「領主」や「所有地」を意味します。
そしてそこから転じて、自社で所有する畑でブドウを栽培し、そのブドウからワインを醸造、瓶詰め出荷までを一貫して行う生産者のことを指すようになりました。

ネゴシアンとドメーヌを兼ねる生産者もいる

ただ生産者の中にはネゴシアンかドメーヌの一方ではなく、ルイ・ジャド社のように巨大ネゴシアンでありながら、大規模なドメーヌでもあるといった「兼ねる」生産者も存在します。

ネゴシアンの役割

ワインのネゴシアンとは?ドメーヌとの違いとその役割

ブルゴーニュのような小規模で、それぞれの個性が豊かな畑を持つ地区の場合、ネゴシアンは重要な役割を果たします。

均一・安定したワインを大量に供給する

ブルゴーニュには「道一本隔てた畑でも味が違う」といわれるほど、個性豊かな畑が集まっています。

しかしその個性は一方で、天候などの影響でブドウの出来不出来が激しく、ワインの品質が安定しないというデメリットにもなりえます。

そんなときネゴシアンが活躍すれば、複数の農家から仕入れたブドウを巧みにブレンドすることで、安定した品質のワインを生産することができるというわけです。

小規模な生産者をサポートする役割も担う

またブルゴーニュなど、畑が細かく分かれて小規模な農家、生産者となっている地区では、自分の畑だけでは販売に見合うだけの十分なブドウを収穫できなかったり、高品質なワインを生産する施設を持たないことも多くなっています。

そこで資本力に勝るネゴシアンが小規模生産者からブドウやワインを買い付けることで、彼らをサポートする事にもなっているのです。

ネゴシアンのワインとドメーヌのワインの特長と違い

ワインのネゴシアンとは?ドメーヌとの違いとその役割

ではネゴシアンとドメーヌが造るワインには、それぞれどんな特長と違いがあるのでしょうか。

ネゴシアンのワインの特長

ネゴシアンのワインは様々な農家や小規模生産者から仕入れたブドウやワインをブレンドするため、常に安定した、一定以上のレベルを保つことができます。

また一般的にドメーヌものよりも価格がリーズナブルという点もメリットです。

ただ常に一定レベルの安定したワインを造るため、「個性に乏しい」といわれることもあります。

ドメーヌのワインの特長

一方ドメーヌのワインは、ブドウの栽培、収穫からワインの製造まで一貫して同じ生産者が行うため、作り手ごとの個性が出しやすいというメリットがあります。

小規模生産者が多いため生産量が限られ、滅多に手にすることができない1本という、愛好家を喜ばせるプレミアムなワインというイメージもあります。

ただそれは裏返すと、生産量が少ないために高価になってしまうというデメリットにもなりかねません。

また複数のブドウをブレンドしてつくるネゴシアンと比べると、品質にばらつきが発生しやすいという特長もあります。

最近ではネゴシアンと ドメーヌのワインの差は少なくなっている!

これまでは、

ネゴシアンのワイン・・・比較的安価で品質も良く安定しているが、個性がない
ドメーヌのワイン・・・知名度があり高品質なイメージだが、高価で品質にばらつきがある

といわれてきましたが、最近ではネゴシアン側が生産者の畑の管理を積極的に行ったり、逆にドメーヌ側が最新の醸造設備を取り入れたりなどして、両者の差は年々少なくなっています。

「おいしいワインを造りたい」という想いはネゴシアンもドメーヌも同じ

ワインのネゴシアンとは?ドメーヌとの違いとその役割

ワインを購入する時は、ついつい「これはネゴシアンものかな?それともドメーヌものかな?」と気にしてしまいがちですが、これまでお伝えしてきた通り、両者の差は年々少なくなっています。

そして何よりも、ネゴシアンもドメーヌも、「おいしいワインを造りたい!」という想いは同じです。

先入観は持たず、とにかくおいしいワインを選ぶことをおすすめしたいと思います。

まとめ

ネゴシアンとドメーヌの違いは、ブドウの栽培をしているかどうかです。

ネゴシアンは複数の農家から仕入れたブドウをブレンドしているため、品質が安定しています。ドメーヌは個性が出しやすくプレミアムなイメージがある一方で、高価で品質にばらつきが出やすい特長があります。

しかし近年では、両者とも栽培方法や設備を改良しており、それぞれの差はなくなってきているようです。どちらも「おいしいワインを造りたい」という気持ちで製造しているため、ワインを購入する際にはイメージにこだわらず、自分に合ったものを選ぶことを意識してみましょう。

 

この記事を監修したソムリエ

杉浦直樹

歌舞伎役者として人間国宝 中村雀右衛門に師事。15年ほど主に歌舞伎座に舞台出演。その後銀座のクラブマネージャーを経て、J.S.A認定ソムリエ資格を取得。現在は支配人兼ソムリエとして、ブルゴーニュとシャンパーニュの古酒を専門とし たフレンチレストランを経営する。