世界的に自然志向な考えが広まるなかで、地球に優しいワインといわれる「自然派ワイン」が注目されるようになってきました。
ただ一口に自然派ワインといっても様々な種類があり、いざ選んでみようと思っても迷ってしまいます。
そこで今回は、自然派ワインの特長や味わいといった基礎知識と、簡単な選び方をご紹介します。
目次
自然派ワインとは
実は「自然派ワイン」に明確な定義はありません。
自然派ワインというネーミングはフランス語の「ヴァン・ナチュール(ヴァン=ワイン/ナチュール=自然の)」をそのまま訳したもので、できる限り化学合成農薬や化学肥料を使わず、自然の力を借りて造られたワインをまとめて自然派ワインと呼んでいます。
そのため、
・ビオワイン
・オーガニックワイン
・有機ワイン
といったネーミングで販売されているワインも自然派ワインに含まれるのです。
自然派ワインの特長は「造り方」にある
自然派ワインはその「造り方」に特長があります。
自然に近い農法で造られている
自然派ワインのベースには、「土や水といった大自然の力を最大限に活かしたワイン造り」という考え方があります。
そのため化学合成農薬や化学肥料の使用を抑えた、以下のような農法でブドウを栽培するのです。
・リュット・レゾネ
殺虫剤や除草剤などの化学合成農薬や化学肥料を極力使用しない、「減農薬農法」
・ビオロジック農法
化学合成農薬や化学肥料を使用しない、いわゆる「有機農法」
・ビオディナミ農法
ビオロジック農法をさらに推し進め、ブドウの育成を月や天体の運行に合わせて行う農法
できるだけ人の手を加えないワイン造り
自然に近い農法で栽培されたブドウを使用するだけではなく、ワインを造る過程でも「できるだけ人の手を加えない」のが自然派ワインの特長です。
酸化防止剤の使用を極力控える
一般的なワインには、
1. 酸化による味わいや香り、見た目の変化を抑える
2. 雑菌の繁殖による味わいや香りの変化、腐敗を抑える
という理由から、亜硫酸塩などの「酸化防止剤」を使用しています。
しかし自然派ワインでは「余計な添加物は加えない」という考え方から、酸化防止剤不使用、または極力使用しないというものがほとんどとなっているのです。
最近になって自然派ワインがメジャーとなってきた背景には、近年醸造技術が向上し、酸化防止剤を加えなくてもワインの品質を保つことができるようになったという事情もあります。
※代表的な酸化防止剤である亜硫酸塩はローマ時代から使用されており、現在も世界中で使われているものです。
また亜硫酸塩はブドウが発酵してワインになる過程で副産物として「自然」に発生します。
つまり後から亜硫酸塩を加えない「無添加」ワインは存在しますが、亜硫酸塩が全く含まれない「含有量ゼロ」のワインは存在しません。
天然酵母の使用
一般的なワインでは発酵のために人工的に培養した酵母を用いますが、自然派ワインでは野生の天然酵母を使用するものが多くなっています。
ろ過をせずあえて「澱」を残す
一般的なワインの製造工程では、最終段階でワインを「ろ過」します。
これは酵母の残りなどの成分が固まった「澱(おり)」を取り除き、ワインの透明度を上げ、雑味を抑えるために行われるものです。また雑菌の繁殖などを抑える目的でも行われます。
しかしろ過を行うと、雑味などが取り除かれるだけでなく、ワインが本来もっている「旨味」や「風味」も取り除かれてしまいます。
そのため多くの自然派ワインではろ過を行わずにあえて澱を残し、ワイン本来の旨味を自然のまま味わえるようにしています。
自然派ワインの特長的な「味わい」
自然派ワインを飲むと、旨味がじんわりと舌の中へ染みこんでいくような感じがします。
また軽やかで優しい味わいなのが特長です。
ただ一方で「ビオ臭」といわれる、青臭い、少し酸っぱい香りがすることもあります。
自然派ワインに慣れるとこの香りが好きになる方が多いのですが、苦手な方もいらっしゃいます。
自然派ワインを見つけるには?
自然派ワインは小さな造り手によるものも多く、また種類も多いので、自分好みの1本を見つけるのが難しくなっています。
ではどうやってお気に入りを探せば良いのでしょうか。
おすすめの方法としては、認証機関のマークを目安にするというものがあります。
自然派ワイン自体は認証を受ける必要はありませんが、ビオロジックワインやビオディナミワインを名乗るには認証機関による認証が必要となります。
主な認証機関には、
・Euro leaf(ユーロリーフ)
EUで有名な有機認証機関
・ECOCERT(エコセール)
フランスのオーガニック製品の認証団体
・Agriculture Biologique(アグリカルチュールバイオロジック)
フランス政府(農業省)による認証
・Demeter(デメテール)
ドイツのビオディナミ認証機関
などがあり、これらの機関から認証を受けるとボトルに「認証マーク」を表示することができます。
この認証マークを目安にワインを購入すれば、一定レベルの水準を満たしているため安心して自然派ワインを楽しむことができるというわけです。
ただし自然派ワインの明確な定義はなく、自然派ワインの認証も存在しないので、丁寧にワインの説明がされているところで購入をすることをおすすめします。
自然派ワインの楽しみ方
ではお気に入りの自然派ワインを見つけた後の、おいしい楽しみ方をお伝えしましょう。
買ってきたワインはしばらく休ませる
自然派ワインは繊細で優しい味わいのものが多く、ろ過をしないものが多いため、澱が多く残っている場合があります。
そのため購入して自宅に持ち帰った後は、ワインの状態が落ち着いて澱がボトルの底に沈むまでしばらく休ませてください。
温度などの環境に注意して保管する
自然派ワインは酸化防止剤をほとんど加えてなかったり、澱をそのまま残していたりするものが多くなっています。
そのため一般的なワインよりもはるかに「環境の変化」に弱いのです。
直射日光を避けるのは当然として、保管する温度にも一般的なワイン以上に気を配ってください。
一定の温度をキープできる専用のワインセラーがあると安心です。
グラスに注ぐときは「ゆっくり」と
せっかく澱がボトルの底に沈んでいても、適当にグラスに注いでしまっては、また澱がボトルの中に舞ってしまいます。
グラスに注ぐときはボトルを傾けすぎずに、ゆっくりと注ぐようにしてください。
まとめ
自然派ワインというと何か特別な造り方をしているように思われますが、実は昔からのワインの造り方に戻っただけという見方で捉えることもできます。
実際、ブルゴーニュの高級ワインなども、自然派ワインとは謳っていませんが、現在のその造り方は、自然派ワインそのものであるともいわれています。
これを機に、地球に優しい自然派ワインを、ぜひ食卓で楽しんでみてはいかがでしょうか。
この記事を監修したソムリエ
杉浦直樹
歌舞伎役者として人間国宝 中村雀右衛門に師事。15年ほど主に歌舞伎座に舞台出演。その後銀座のクラブマネージャーを経て、J.S.A認定ソムリエ資格を取得。現在は支配人兼ソムリエとして、ブルゴーニュとシャンパーニュの古酒を専門とし たフレンチレストランを経営する。