家飲み時間をもっと楽しみたい! そんな時、頼りになるのがプロによるアイデアにあふれたレシピ本。このコーナーでは、人気のレシピ本の著者である料理家の方にご登場いただき、本作りの裏側や、料理に対する思い、そして、ワインの楽しみ方をうかがいます。第1回にご登場いただくのは、連載企画「ワインに寄り添うアペロレシピ」でおなじみの料理家、山脇りこさんです。
text WINE OPENER編集部 photo 長谷川 潤(料理写真分)
目次
■お話をうかがった方
山脇りこ(やまわき・りこ)さん
料理家。代官山で料理教室<リコズキッチン>を主宰。長崎で旅館業を営む家庭に生まれ、出汁の香りが朝の訪れを告げる環境で育つ。幼少期から厨房に出入りし、板前さんの包丁さばきに憧れを抱く。「振り返れば、幼少期の影響が大きかった」と山脇さん。料理家として現在は、日本の郷土料理や家庭料理、そして世界の食卓事情にまでアンテナをはり、旬と伝統を大切にした仕事を続けている。テレビや雑誌など数多くのメディアに出演、著書はレシピ本をはじめ多数あり、2023年3月には旅エッセイ『50歳からのごきげんひとり旅』を上梓。日々のごはんの他に、毎日家族に作り続けてきたお弁当を、家族への「手紙」と捉え、いつかお弁当の本も出したいそう。Instagram @yamawakiriko(外部サイトへリンクします)
今回の料理本はこちら!
『毎日食べたい かんたん3×3レシピ』(ぴあ)山脇りこ 1,540円 3つ以内の食材で、3ステップで作れる。簡単なのにちゃんとおいしい。山脇さんらしさが詰まった料理本は、Webメディア『AMARC(アマーク)』で人気の連載企画「身体リセット3×3レシピ」(現在も継続中)に、新作レシピを多数掲載。
今回紹介するワインとレシピ
【1】グランポレール 余市ケルナー
×タンドリーポーク&カリフラワーのサブジ
グランポレール
余市ケルナー
参考小売価格:税抜1,908円
余市の協働契約栽培畑産ケルナー種ぶどうを100%使用した白ワイン。青りんごを想わせるみずみずしくフルーティな香りと、爽やかで切れのある、すっきりした飲み口が特長。ほのかな甘味がスパイスを使った料理をやさしく包みます。
タンドリーポーク&カリフラワーのサブジ
スパイシーながら、ヨーグルトを加えたまろやかなつけだれをベースに、手軽に2品作れるメニューです。
タンドリーポーク
■材料 2人分
・豚肉しょうが焼き用 300g
・つけだれ:プレーンヨーグルト 大さじ2
カレー粉、マヨネーズ 各大さじ1
塩 小さじ1
・植物油 大さじ1/2
・パセリのみじん切り 好みで
■作り方
①つけだれを混ぜ合わせ、豚肉を加えて全体にからめる。
②フライパンに植物油を熱し、熱くなったら①を並べ、つけだれごと焼く。表面が焼けてきたら火を弱め、返して両面に火を通す。
③カリフラワーのサブジ(後述)とともに器に盛る。好みでパセリを散らして。
カリフラワーのサブジ
■材料 2人分
・カリフラワー 1/2株
・つけだれ:タンドリーポークと同量
・植物油 大さじ1/2
■作り方
①カリフラワーは縦7mmの厚さに切る(木の幹のような断面になる)。つけだれをバットなどに入れて合わせ、カリフラワーにからめる。10分~1日漬けておく
②フライパンに植物油を熱し、熱くなったら①を並べ、つけだれごと焼く。表面がこんがり焼けてきたら火を弱め、ふたをして2分ほど蒸し焼きにし、ふたを取って水分を飛ばすようにして火を入れる。
【2】ラブレ・ロワ シャルドネ・ヴァン・ド・フランス
×大根とグレープフルーツのサラダ
ラブレ・ロワ
シャルドネ・ヴァン・ド・フランス
参考小売価格:税抜1,250円
フランス産のシャルドネ種を100%使用し、ライムを思わせるようなアロマと爽やかで切れの良い口当たりの、フレッシュな白ワイン。柑橘のニュアンスは、グレープフルーツを使った料理と好相性です。
大根とグレープフルーツのサラダ
薄切りにした大根とグレープフルーツのコントラストが美しいサラダ。さっぱりした味わいは、暑い日のおつまみに。
■材料 2人分
・大根 1/4本 300g
・塩 小さじ1
・グレープフルーツ 1個
・はちみつ 大さじ1
・酢 小さじ1
■作り方
①大根は少し厚めに皮をむき、スライサーなどで半月型の薄切りにする。ポリ袋に入れて塩を加えてもみ、5分おいて水けをしっかり絞る。
②グレープフルーツは皮をむき、薄皮をむく。果肉を①とともにボウルに入れ、はちみつと酢を加えてざっくりあえる。
リアリティのあるレシピが生まれるまで
―「ワインオープナー」の連載企画、「ワインに寄り添うアペロレシピ」でご紹介いただく料理もそうですが、ご著書の『毎日食べたい かんたん3×3レシピ』も、3つの食材で3ステップ以内で作れるならやってみようかなと、山脇さんのレシピは、いつもささやかな意欲を励ましてくれる気がします。
山脇りこさん(以下敬称略):今思うと、どうして「3つの食材、3ステップ」という縛りを自分で設けてしまったのかと思いますが(笑)。webメディア「AMARC」で連載が始まる際の編集長からのオーダーは、おしゃれだけれど、家庭ではなかなか作らない料理ではなく、全国津々浦々の家庭で作れるものにしたいとのことでした。
あとは、こちらの更新が毎週水曜日なのですが、週の半ばで一番つかれているときでも作りたくなるものをということで、できるだけ簡単なものにしようと心がけました。
―なるほど。リアリティがあるレシピが生まれたのはそういう背景があったのですね。実際に、これまでも様々なメディアでレシピを披露されていますが、再現のしやすさはかなり意識されているのでしょうか。
山脇: 実は最初の本から3、4冊目くらいまでは、すごく手間ひまかかる料理ばかり紹介していて、オンラインのレビューにも「難しすぎる」「面倒」と書かれていました。15年くらい前ですね。私がこれまで作ってきた料理をはりきってご紹介していたから、割と手間がかかったレシピが多くなっていたんですね。料理が好きで好きで料理家になったので、手間を面倒だとは思わないんですね(笑)。
―確かに(笑)。普通の人はおいしい料理を作りたいけれど、できるだけ手間をかけたくないのが本音です。
山脇:代官山でやっている料理教室に来てくださる方のお話に耳を傾けている中で学んだことの一つは、人は食べたことがないものはあまり作らないということ。味の想像がつかない料理はリスクに感じたりして、なかなか作るまではいかないんだなぁと。
もう一つは、私は旅に出ると必ずその地方のスーパーに立ち寄るのですが、特に調味料やハーブ、スパイスなどは大都会以外では選択肢が少ないんですよね。そういう状況を見ているうちに、たとえばいつもの肉じゃがにもちょっとした工夫を足すと楽しいよ、とか、手間がかかる作り方もやってきたからこそ気づいた、かんたんな作り方を、しっかりお伝えした方がいいと気づきました。以来、作りやすさを意識しています。当初と比べると、特に雑誌やweb、書籍でお伝えする料理は、かなり変化したかな、と思います。
―食のトレンドは特にここ数年、SNSの影響などもあり、目まぐるしく変化しているかと思いますが、そういった状況の中で、時代の変化を柔軟に受け入れながらも、レシピを提案する際、ここだけは譲れない、大切にしている部分はありますか?
山脇:基本の調味料で作れる、ということかな。いわゆる和食の「さしすせそ」(砂糖、塩、酢、醤油、味噌)があれば、私がご紹介している料理はほぼすべて作れます。あとは旬の食材を選ぶ、楽しむ、かな。
―その辺りは、山脇さんが育った環境による部分も大きいのでしょうか?
山脇:そうかもしれないですね。うちは日本旅館でしたから、子どもの頃は和食の板前さんを一日ずっと見ていたんです、それが楽しくて。和食は基本の調味料以外を本当に使わないんですよね。料理の味は食材から引き出していたのを、当時はなんとなくですが、見ていた影響が大きいかもしれません。
旅先でも家でも。山脇流ワインの楽しみ方
―今年3月に出た新刊『50歳からのごきげんひとり旅』(だいわ文庫)は、レシピ本ではなく旅のエッセイでした。ひとり旅のノウハウがユーモアを交えてたっぷり詰め込まれていましたが、旅先での飲食店はワインから逆引きするお話や、フランスのワイナリー巡りのエピソードが印象的でした。ご自宅ではワインをどのように楽しんでいらっしゃいますか?
山脇:ある自然派ワインに出合ったことがきっかけで、ますますワインが好きになって、週3〜4日はワインを飲んでいます。グラスに1、2杯なので、夫と2人で1週間で1本くらいですが。自分が作った料理を見ると、いやもう作りながらかな、これには、白でキリッととか合わせたくなるんですよねー。
―無意識のうちにワインが飲みたくなる料理を作ってしまうんでしょうか。
山脇:お酒のあてで、すごく塩味が強いとかそういうことではなく、むしろ味は薄めでシンプルな料理が多いんですが。なぜなんでしょう? 家のごはんの約7割が野菜を使ったお料理だからかな。
しかも酢やフルーツを使って酸を感じさせるものが好きなので、ワインが持っている酸味や果実味とどこか通じる部分があるのかと思います。
私の味付けの2大巨頭は、基本の調味料が塩と酢(酸味)なんです。ほぼ味付けはそれだけの料理も多かったり。そうすると、ついつい白ワインに手がのびてしまうんですよね。
―これからの季節、特におすすめのワインの楽しみ方がありましたら教えてください。
山脇:あまり難しく考えないで飲みたい飲み方で飲んでいいんじゃないかと思います。たとえば、暑い日は氷を入れて飲むとか。白ワインをソーダで割ってスプリッツァーにするとか。あとはフルーツとの組み合わせもおすすめです。
―それはおいしそうですね!
山脇:スイカの実の部分を冷凍しておいて、氷の代わりに白ワインに入れて飲むとか。他にも、メロン、桃、パイナップルなどを凍らせて白ワインに入れたり、ペパーミントの葉っぱをワインに入れて炭酸で割って飲むとか。自由にカクテル風にすると楽しいですよ。グラスに塩をつけてマルガリータっぽくしてもおいしいです。同じワインでも、スタートはソーダ割りで飲んで、途中からはそのまま飲むと、味わいの印象ががらりと変わります。気軽に楽しみましょう。
ご紹介したワインの購入はこちらから(外部サイトにリンクします)
※ワインについては、記事掲載時点での情報です。