ボルドーワインを堪能するのであれば、産地ごとの特長や違いを知り、料理とのマリアージュについての知識を知っておくのもおすすめです。今回は、ボルドーワインの歴史や産地など、ワインについての造詣を深めるうえで役立つ情報をたっぷりお届けします。
海を越え、遠いフランスの地に思いを馳せながら、おいしいボルドーワインを楽しんでみてはいかがでしょうか。
目次
ボルドーワインとは?
まずは、ボルドーワインとはどのようなワインなのか、歴史や生産者について紹介します。
ボルドーワインとはどんなワイン?
ボルドーワインとは、フランス南西部に位置するボルドー地方で造られたワインのことを指します。ボトルは「いかり肩」のような形状をしていることが特長です。
ボルドー地方は、複数の河川に囲まれている地域であり「水のほとり」を意味する古語「Au bord de l’eau」からつけられた名称だとされています。
ボルドーワインは、複数品種のブドウをブレンドする「アッサンブラージュ」という手法で造られているのも魅力のひとつです。ごく稀に、単一品種のものもあります。
さまざまな品種のブドウを組み合わせて製造するため、単一品種では出せないような奥深い味わいが感じられます。生産者によってブレンドの時期は異なり、樽熟成を開始する前にブレンドをする人もいれば、樽熟成が終了し瓶詰めをする際にブレンドする人もいます。
アッサンブラージュについて詳しくは以下のページでも解説しています。
「アサンブラージュって何?メリットと使用されるブドウの種類」
ボルドーワインは「ワインの女王」とも呼ばれ、世界的に親しまれているワインのひとつです。
ボルドーワインの歴史
ボルドーワインは、12世紀にボルドー地方がイギリス領になった際、ボルドーワインをイギリスへ輸出したことがきっかけで産業として発展しました。
約2,000年近い歴史があり、1855年には第1回パリ万国博覧会でボルドーワインの品質を広めるためにナポレオン三世によって格付けが行われています。
ボルドーの格付けは第1級から第5級までに分類されており、主にメドック地区のシャトーが多くを占めています。
ボルドー地方のシャトーは約6,600を超えるといわれており、その中で格付けされているシャトーの数は61軒で1%にも満たない数です。
150年以上にわたり、ほとんど格付けが変わることなく維持されていることも、長きにわたってボルドーワインの品質が認められていることの表れでしょう。
ボルドーワインの生産者
ボルドー地方では、ワイン生産者のことを「シャトー」と呼んでいます。
シャトーとは、日本語で「城」を意味する言葉で、ボルドー地方にブドウ畑を所有しており、栽培から醸造、瓶詰までを一貫して行っているワイン製造者に与えられた名称です。
12世紀にボルドー地方がイギリス領になった際、イギリスの貴族がお城を建立し、その周囲にブドウ畑を所有してワインを造ったことがきっかけとされています。
また、ブルゴーニュ地方では呼び名が変わり、生産者は「ドメーヌ」と呼ばれます。
シャトーとドメーヌについて、詳しくは以下でも解説しています。
「フランスワインを語るうえで欠かせないシャトーについて徹底解説」
ボルドーワインの産地
ボルドーワインのスタイルは、大きく2つに分かれます。ボルドーワインの生産地区は全て河沿いにあり、河の右岸か左岸かで土壌が異なります。そのため、作られるブドウ品種とそのブレンド比率も異なり、ワインの味わいが異なるのです。
川の上流から下流方向を見た際に右手側の岸を右岸、左手側の岸を左岸と言います。
ボルドー地方は、大西洋とそこに流れ込むジロンド川の支流に囲まれた地域のことを指します。ジロンド川は、その東に流れるドルドーニュ川と南を流れるガロンヌ川が合流した大きな河川です。
ボルドー地方の右岸はというと、このうちドルドーニュ川からジロンド川が流れる東側の地域を指し、左岸というとガロンヌ川からジロンド川が流れる西側の地域を指します。
左岸と右岸それぞれの地域の特長がワインに反映され、異なるスタイルのワインになります。ここからは、ボルドー左岸と右岸それぞれの特長や味わいの違いについて見ていきましょう。
力強く濃厚なワインが造られる「ボルドー左岸」
ボルドー左岸で造られるワインの全体的な特長は、力強く複雑な味わいになることです。長期熟成が可能で、寝かせることで魅力がさらに花開くワインが多く造られています。
ボルドー左岸は、水はけがよく砂利質の土壌をもつことから、砂利質土壌を好むカルベネ・ソーヴィニヨン種のブドウ栽培に適しています。ただし、ドルドーニュ川の影響で、下流に行く程、土壌の粘土質の割合は増えていく傾向にあります。
ボルドーのメドック地区の格付けで最高の第1級を誇る「5大シャトー」もボルドー左岸にあることで有名です。
シャトー名 | 特長 | 味わい |
シャトー・ラフィット・ロートシルト |
5大シャトーの筆頭とも呼ばれる。ポイヤック村に位置。 ルイ15世のポンパドール夫人が愛し、晩餐会でのワインとして紹介したことから「王 のワイン」と評されることも。 使用される年間2000個の樽はすべて自社の工房で製作された樽。手作業による農作業を可能な限り行い、醸造方法も伝統的なものに移行している。 |
バランス感に優れ、繊細かつエレガントな味わい |
シャトー・ラトゥール |
男性的、パワフル、晩熟と評され、5大シャトーの中でもっとも男性的とされる。ポイヤック村に位置。 ブドウの樹毎に徹底した品質管理を行っていることが特長。ポイヤック村に位置しており、 |
長期熟成型で力強く、果実の濃縮感に優れている |
シャトー・マルゴー |
1855年の格付け時に唯一満点の20点をつけている。マルゴー村に位置する。大シャトーの中でももっとも女性的と称されており、「ボルドーの宝石」と評される。 自社製以外にフランス有名産地の木樽を購入し、木樽熟成によって多様な味わいを生んでいる。 |
官能的な香りが広がり、豊満でエレガント |
シャトー・ムートン・ロートシルト |
唯一第2級から第1級へ格付けが、最初の格付けから118年後に昇格したシャトー。ポイヤック村に位置。 5大シャトーの中でもっとも芸術的と評され、毎年有名な画家がデザインしたラベルのワインが販売されることでも知られており、1924年には初めて樽でなくシャトーで瓶詰めを行い出荷するなど、常に革新的な存在。羊の紋章がトレードマーク。 |
濃い色味と重厚感が特長 |
シャトー・オー・ブリオン | メドック地区ではなくグラーヴ地区から唯一選出されたシャトー。 メルロー種の割合が他の5大シャトーより高く、柔らかな味わいのため、5大シャトーの中でも、もっとも親しみやすい味わいのワイン、と評される。もっとも規模は小さいが、ボルドーの中でいち早くステンレスタンクを導入し、技術革新に熱心。 |
渋味が少なく、滑らかな飲み口 |
次項からは、ボルドー左岸にある3つの有名地区について紹介します。
メドック地区
メドック地区は、1855年の第1回パリ万国博覧会で制定された独自の格付けを行っている地区です。ボルドー市の北にジロンド川左岸下流方向に広がる地域です。
メドック地区では、基本的には赤ワインしか造ってはいけない規定となっています。カルベネ・ソーヴィニヨン種のブドウを主体とした赤ワインが多く造られており、世界最高クラスの高品質なカベルネ・ソーヴィニヨン種として、世界の一つの指標となっています。大西洋に近く標高も低いため、特に温暖な気候です。5大シャトーのうち、4つのシャトーを有している地区です。
グラーヴ地区
グラーヴ地区のグラーヴは「砂利」を意味する言葉で、その名のとおり水はけの良い砂利質の土壌がメドックよりもさらに深く拡がっている地区です。メドック地区からはボルドー市を挟み南にガロンヌ川上流の左岸へ広がる地域です。
メドック地区と比べて芳醇で軽やかな赤ワインが造られている傾向にあり、メドック地区と異なり赤だけでなく白ワインも生産可能です。辛口の白ワインも樽熟成の瓶内長期熟成可能なワインが多いのもグラーヴ地区ならではの魅力です。
5大シャトーの残る一角シャトー・オー・ブリオンは、この地域にありながらもあまりに美味しかったために例外的に1855年のメドックの格付けの際に選ばれました。1987年にグラーヴ地区独自の格付けも導入されています。
ソーテルヌ地区
ソーテルヌ地区は「貴腐ワイン」の銘醸地として知られており、世界三大貴腐ワインの一角です。ガロンヌ川へ流れるシロン川を挟んだ一帯の地域です。
シロン川の影響による水蒸気、昼夜の寒暖差などの条件により、セミヨン種などのブドウに貴腐菌が付き、貴腐化することで、より糖度の高いブドウとなるので、天然の甘口ワインができあがります。
独特の複雑な芳香、甘美な甘味、豊かなコクとしっかりとした酸味もあるバランスが楽しめる世界最高の極甘口白ワインが有名です。
上品で優雅なワインが造られる「ボルドー右岸」
ボルドー右岸は、左岸とは対照的に水分の保持力に優れた粘土質の土壌をもつ地域です。保水性の高い粘土質を好むメルロー種のブドウ栽培が盛んに行われています。ただし、土壌はポムロールに隣接するグラーヴ(砂利)エリアと、街の周囲に拡がるプラトー(台地)エリアの2つに分けられます。
砂利と聞いてピンときた方もいるでしょうが、実はグラーヴエリアで砂利質に向いたカベルネ・フラン種やカベルネ・ソーヴィニヨン種が多く栽培されており、右岸の中でも独特なスタイルのワインを生産しています。シャトー・シュヴァル・ブランがこのエリアの代表的なワインです。
一方、サン・テミリオンの街周辺の台地では、粘土質土壌から優美な味わいのメルロー主体のワインが造られています。
サン・テミリオン地区
サン・テミリオン地区は、ワイン産地として初めて世界遺産に登録された地区。ドルドーニュ川を上流の方へ行った右岸の地区です。
大西洋から離れ、標高が高くなるため、少し冷涼な気候です。メルロー種やカルベネ・フラン種のブドウを主に使用し、なめらかで柔らかく香り高いエレガントなワインを多く造っています。
後述するポムロール地区に隣接する土壌は砂利質、街の周囲に拡がる台地の土壌は粘土質と、土壌が分かれており、砂利質土壌のエリアではカベルネ・ソーヴィニヨン種とカベルネ・フラン種が、粘土質の台地エリアではメルロー種が造られています。1955年にサン・テミリオン地区独自の格付けが初めて行われ、以降約10年に1回更新されています。
ポムロール地区
ポムロールは、あえて格付けをもたない地区です。ワインの産地としては比較的新しく、ボルドーで主な産地の中でももっとも小さな地区です。土壌は砂利質と粘土質、砂利質をあわせもちます。
酸化鉄を含んだ粘土石灰質土壌であるクラス・ド・フェールという土壌で特に有名で、ポムロールの濃縮感のある果実味豊かなワインを生む重要な要素となっています。メルロー種が世界的にも特に秀逸で、希少価値の高い最高級赤ワインを造ることで知られています。
ボルドーワインをおいしく楽しむには
ボルドーワインを美味しく楽しむための一工夫を紹介します。
自分の好みにあったワインを選ぶ
ボルドーワインの産地やシャトーごとの特長を知り、自分の好みにあうワインを選ぶことが大切です。
しっかりと渋味が感じられる赤ワインが好きなら、カルベネ・ソーヴィニヨン種をメインに造られている赤ワインが良いでしょう。
また、赤ワインの渋味が苦手な人は、酸味が穏やかで飲み口もまろやかなメルロー種を中心にして造られている赤ワインがおすすめです。
白ワインであれば、爽やかでフレッシュな味わいが好みであればソーヴィニヨン・ブラン種が主体の辛口ワインを、甘い味わいが好みであればセミヨン種が主体の甘口ワインを、生き生きとしつつも力強く丸みがある味わいが好みであれば、セミヨン種やミュスカデル種が主体の辛口ワインを選ぶと良いでしょう。
合わせる料理にこだわる
ワインの楽しみ方のひとつが、料理とのマリアージュを意識してワインに合う料理と一緒に味わう方法です。
カベルネ・ソーヴィニヨン種が主体の濃厚な赤ワインには、霜降りのステーキなど高脂質の牛肉や香草やスパイスと共に煮込んだ牛肉料理との相性が抜群です。
とくに、ローストビーフは和牛の上質な肉のものが理想的で、ステーキはフィレよりもサーロインがベストマッチします。
ローストビーフのレシピはこちら
ステーキのレシピはこちら
メルロー種が主体で造られているワインには、ハンバーグやビーフシチューなど、濃厚かつ甘味をともなった味わいの肉料理がおすすめです。
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また、ボルドーワインとのマリアージュを楽しむのであれば、ボルドー発祥の洋菓子「カヌレ」を合わせるのもおすすめです。赤ワインを清澄するのに卵の白身を使っていたので、余った黄身を使って作られたのがカヌレだと言われています。
特に、まろやかでエレガントな味わいが特長のメルロー種のワインとの相性が良く、ソーテルヌ地区のエレガントな甘みが感じられる貴腐ワインと一緒にデザートとして楽しむこともできます。
おすすめのボルドーワインを紹介
ここからは、おすすめのボルドーワインを紹介します。
ボルドー左岸のワイン
メドック地区
・シャトー・ブレニャン(参考小売価格:税抜2,508円)
A.O.C.(原産地統制呼称)メドックの赤ワイン。カベルネ・ソーヴィニヨン種ならでのはの深いタンニンと力強い味わいが感じられ、フルーティーな口当たりが特長的です。
しっかりした酸味が感じられる赤ワインが好きな人におすすめです。
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グラーヴ地区
・シャトー・ラ・チュイルリー〈赤〉(参考小売価格:税抜1,988円)
A.O.C.グラーヴの赤ワイン。渋味がまろやかで、赤い果実の香りの中にほのかなスミレのニュアンスが感じられます。
穏やかな飲み口の赤ワインが好きな人や、鴨のロースト、ビーフシチューなどに合わせるのにおすすめです。
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・シャトー・ラ・チュイルリー<白>(参考小売価格:税抜1,988円)
A.O.C.グラーヴの白ワイン。ボルドーワインと聞くと赤ワインのイメージがある方もいるかもしれませんが、おいしい白ワインも多くあります。
こちらの白ワインは、柑橘系の香りにフレッシュな酸味が特長で、ヒラメのムース仕立て、鮭のソテーなどの料理に良く合います。
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ソーテルヌ地区
・シャトー・ラフォリー・ペラゲ (参考小売価格:税抜16,500円)
A.O.C.ソーテルヌの白ワイン。1855年にソーテルヌ公式格付け第1級になった貴腐ワインで、セミヨン種のブドウをメインにして造られています。
白ワインの中でもはちみつのような香りとコクのある濃厚な味わいが堪能できる極甘口ワインで、カヌレなどのスイーツとの相性が抜群です。フォアグラ、魚介の濃厚クリーム煮やグラタン、ブルーチーズにもよく合います。
ボルドー右岸のワイン
サン・テミリオン地区
・シャトー・ロック・ド・カンダル(参考小売価格:税抜4,208円)
A.O.C.サン・テミリオン・グラン・クリュの赤ワイン。メルロー種の滑らかな口当たりとカベルネ・フラン種の程良い酸味が特長で、バニラのエレガントな香りやフルーツコンポートの香りも感じられます。
後味は心地良いロースト香が続くため、ローストビーフや鴨のローストのような肉料理との相性も抜群です。
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ポムロール地区
・ シャトー・フラン・マイエ(参考小売価格:税抜4,408円)
A.O.C.ポムロールの赤ワイン。シナモンのような香りが特長で、メルロー種が主体でカベルネ・フラン種もブレンドされており、メルロー種ならではの、コクのあるまろやかな口当たりが楽しめます。
デミグラスハンバーグのように少し甘味のある肉料理や熟成チーズとの相性が抜群です。
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※ワインについては、記事掲載時点での情報です。
まとめ
ボルドーワインは世界中で古くから親しまれているワインのひとつで、味わいの種類も豊富にあります。料理との組み合わせや味わいの違いを楽しみながら、自分好みの1本を探してみてはいかがでしょうか。
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