ワインのアペラシオンと聞くと「???」となったり、「あ、難しそう」とお考えになる方も多いかと思います。しかしアペラシオンとはワインの「戸籍」や「履歴書」みたいなもの。きちんと理解すればワインの選び方がグッと楽になるのです。そこで今回はアペラシオンについてくわしくお伝えしてまいります。
アペラシオンとは?
アペラシオンとは、フランスにおける「原産地統制呼称制度」のことを指します。
■フランスの原産地統制呼称制度のこと
原産地統制呼称制度とは、「この農作物は●●(地名)産に間違いありません」と国立原産地名称研究所(I.N.A.O.)が認定する制度のことで、Appellation d’Origine Controlee (アペラシオン・ドリジヌ・コントローレ)という法律によって定められています。Appellation d’Origine Controleeは一般に「A.O.C.」と呼ばれています。
ワインを始めとして、ブランデー、チーズやバター、家禽(鴨やアヒルなど)、野菜、果物など、幅広い農作物が対象となり、いわゆる「産地偽装」を防ぐ仕組みです。
分かりやすく日本のお米で説明しますと、「新潟県南魚沼産コシヒカリ」と書いてあるお米が、全く違う場所で穫れた別品種のお米だった場合、消費者が騙されて購入することになってしまいます。
それを防ぐのがこのアペラシオン認証制度なのです。
またワインの場合、産地の気候や土壌といったいわゆるテロワールがワインの品質に多大な影響を与えるため、特に厳しく原産地を管理する必要があるというわけです。
■アペラシオンの格付けって?

アペラシオンのワイン格付け制度はピラミッド型の構造になっており、「地方名」→「地区名」→「村名」の順に格付けがあがっていく仕組みになっています。
ボルドーを例にしてみますと、
【村名】・・・マルゴー
↑
【地区名】・・・メドック、サンテミリオン
↑
【地方名】・・・ボルドー、ボルドー・シュペリュール
というように、ブドウを栽培する区画の範囲が狭くなるにつれて格が上がって行くわけです。
産地、ブドウ品種などが細かく決められている
ワインのアペラシオンはその品質を担保するため、産地やブドウ品種などが非常に細かく決められています。
■産地
例えばシャンパーニュ地方で穫れたブドウを用い、シャンパーニュ地方で生産されたものしか「シャンパーニュ」を名乗ることはできません。
たとえ全く同じブドウ品種(シャルドネやピノノワール)を使い、同じ造り方のスパークリングワインを造っても、シャンパーニュ地方以外で造られたものは「Vin Mousseux(ヴァン・ムスー)」や「Cremant(クレマン)」 等、シャンパーニュ以外の表記となります。
■赤・白・ロゼ
アペラシオンでは生産できるワインの赤・白・ロゼといった種別も規定されています。
例えばボルドーは赤ワインだけではなく、ソーヴィニヨン・ブランから造られる白ワインも有名です。
しかしメドック、サンテミリオン、ポムロールといった【地区】では「赤ワイン」しか地区名を名乗ることが許されていないため、これらの地区で造られた白ワインはもう1つ下のボルドーという【地方名】を名乗る必要があるのです。
■ブドウ品種
アペラシオンでは産地によって生産できるブドウの品種も決められています。
例えばブルゴーニュ地方のコート・ドール地区(コード・ド・ニュイ、コード・ド・ボーヌ)で認められているのは、赤ワイン用品種はピノ・ノワールとガメイ、白ワイン用品種はシャルドネとアリゴテです。
つまりアペラシオンが分かれば、記載されていなくてもブドウ品種がある程度分かることになります。
主なアペラシオンの産地を覚えよう
■ボルドー地方が基本のパターン
地方名→地区名→村名というピラミッド型構造が最も分かりやすいのがボルドー地方のアペラシオンです。
【村名】・・・マルゴー
↑
【地区名】・ ・・メドック、サンテミリオン
↑
【地方名】・・・ボルドー、ボルドー・シュペリュール
※なおボルドーのメドック地区、ソーテルヌ地区などではアペラシオンで決められた格付けとは別の格付けが行われているケースがあります。
有名な
● ラフィット・ロートシルト
● ラトゥール
● ムートン・ロートシルト
● マルゴー
といったメドック格付け(1~5級まである)はボルドー市商工会議所によって、1855年のパリ万博の際に定められた独自の格付けです。
ボルドーワインおすすめ
①シャトー・ラ・ローズ・デュ・パン ルージュ (参考小売価格:税抜1,508円)
⇛CHATEAU LA ROSE DU PIN, BORDEAUX (地方名)と表記されている
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②シャトー・ブレニャン (参考小売価格:税抜2,508円)
⇛CHATEAU BLAIGNAN, MEDOC (地区名)と表記されている
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③マルキ・ド・モン 2016(参考小売価格:税抜4,500円)
⇛MARQUIS DE MONS, MARGAUX (村名)と表記されている
■ブルゴーニュ地方はさらに細かく分類
各畑が細分化されて所有されているブルゴーニュ地方では、ボルドーなどと比べ更に細かくアペラシオンが分類されています。
【特級(グラン・クリュ)】・・・シャブリ、グラン・クリュ、レ・クロ
↑
【1級(プルミエ・クリュ)】・・・シャブリ、プルミエ・クリュ、フルショーム
↑
【村名】・・・シャブリなど
↑
【地区名】・・・コート・ド・ボーヌなど
↑
【地方名】・・・ブルゴーニュ など
ブルゴーニュワインおすすめ
①ラブレ・ロワ シャブリ (参考小売価格:税抜2,908円)
⇛ LABOURE-ROI , CHABLISの表記があり、シャブリ(地区)、ラブレ・ロワ(造り手)と解釈できる。
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②ラブレ・ロワ シャブリ・プルミエ・クリュ フルショーム (参考小売価格:税抜4,708円)
⇛LABOURE-ROI,CHABLIS PREMIER CRU FOURCHAUME, の表記があり、シャブリ プルミエ・クリュ フルショーム(1級畑名)、ラブレ・ロワ(造り手)と解釈できる。
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■シャンパーニュ地方はA.O.Cが3つだけ!
シャンパーニュはブドウ品種、畑、収穫年の異なるブドウをアッサンブラージュ(混合)して製造されるため、アペラシオンは細かく規定されていません。
※年号入りシャンパーニュは単一年度のブドウのみで造られます。
そのため、
【シャンパーニュ】・・・白とロゼのスパークリングワイン
【コトー・シャンプノワ】・・・赤・白・ロゼのスティルワイン(通常のワイン)
【ロゼ・デ・リセ】・・・リセ村産のロゼのスティルワイン
というワインのタイプ別にざっくりとした分類がされています。
ただし、シャンパーニュは村の格付けによりグラン・クリュ、プルミエ・クリュ、格付けなしの3種に分類されています
シャンパーニュおすすめ
①テタンジェ ブリュット レゼルヴ(参考小売価格:税抜6,908円)
⇛CHAMPAGNE TAITTINGER BRUT RESERVEと表記がある
②テタンジェ プレリュード グラン・クリュ(参考小売価格:税抜9,808円)
⇛CHAMPAGNE TAITTINGER PRELUDE GRAND CRUと表記がある
まとめ
以上のように、例えばロマネ・コンティというアペラシオンを聞いただけで、ブルゴーニュ地方のヴォーヌ・ロマネ村、特級のロマネ・コンティの畑で取れたピノ・ノワールを使って造られたワインということが分かるようになります。
また今回ご紹介したのはフランスのアペラシオン(A.O.C)ですが、同じような仕組みは、
イタリア・・・D.O.C(→D.O.C.G)
スペイン・・・D.O.
などのように他の国でも採用されています。
興味がある方は世界中のワインのアペラシオンを調べてみてはいかがでしょうか。
この記事を監修したソムリエ

杉浦直樹
歌舞伎役者として人間国宝 中村雀右衛門に師事。15年ほど主に歌舞伎座に舞台出演。その後銀座のクラブマネージャーを経て、J.S.A認定ソムリエ資格を取得。現在は支配人兼ソムリエとして、ブルゴーニュとシャンパーニュの古酒を専門とし たフレンチレストランを経営する。
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