CULTURE

日本を代表するソムリエ大越基裕氏が熱く語る “余市・ケルナーとツヴァイゲルトレーベ 理想のマリアージュ”

余市産のワインは、北海道余市町で生産されているワインの総称です。余市は北海道の中でも比較的温暖な気候をしており、多くの果樹が栽培されている地域でもあります。ブドウも育ちやすく、品質の高いワインが生産されています。

余市で主に栽培されているブドウの品種は、ケルナーやツヴァイゲルトレーベです。

今回は、そんな余市産ブドウで造られたワインの特長と魅力について、ソムリエの大越基裕さんに語っていただきました。

日本を代表するソムリエ大越基裕氏が熱く語る “余市・ケルナーとツヴァイゲルトレーベ 理想のマリアージュ”

余市産ワインの魅力をソムリエ大越基裕が語る!

ワインオープナー編集部 荻原:
本日は日本を代表するソムリエであり、銀座の顔として知られるフレンチの名店「レカン」で長年、シェフソムリエを努められた、日本ソムリエ界の貴公子・大越さんにお話しを伺いたいと思います。

大越さんは、ブルゴーニュワインの醸造技師の資格もお持ちで、現在、新感覚のタイ・ベトナム料理店AN DIのオーナーであり、株式会社ディ・ヴァン・クロ代表取締役も務めています。 

日本を代表するソムリエ大越基裕氏が熱く語る “余市・ケルナーとツヴァイゲルトレーベ 理想のマリアージュ”

―大越さんは札幌生まれということで、余市は身近な存在ではないかと思います。余市では、2018年から余市・仁木ワインツーリズムプロジェクトが始まり、町おこしが積極的に推進されています。スローガン「ワインとぶどうで、まちを元気に!」というスローガンのもと「ワインとぶどうの町、余市・仁木をめぐる“大人のおいしい旅”というコピーがありますがなかなか素敵ですね。

そこで、大越さんにとって身近な余市についてお話いただけますでしょうか。余市や余市産ブドウのワインについて、どのようなイメージ・印象をお持ちでしょうか。

大越:
私は北海道出身なのでもともとワインには思い入れがありましたが、札幌市の出身ということもあり、余市が一番近い場所にあるので、ワイン産地としては一番身近な存在ですね。もともと果樹の栽培で盛んな場所です。

日本を代表するソムリエ大越基裕氏が熱く語る “余市・ケルナーとツヴァイゲルトレーベ 理想のマリアージュ”

余市を中心に、最近は岩見沢・道南周辺でワイナリーが増えつつあります。その中でも、というより北海道の中で余市は少し暖かいほうで、一番ブドウの熟度を上げやすい場所ですね。北海道全体に言えることですが、本州に比べると冷涼な気候に梅雨がほとんどない土地で、しかも台風が来ないので、ブドウの生育環境や天候がわりと良い状態に保たれます。

最近は暑い日もありますが、それでも私が子どもの頃は30℃を超える時間帯は年間で1ヶ月もなかったですね。なので気温が抑えられる中で、ハングタイム(ブドウが木に実っている時間)が長く取りやすいメリットがあります。寒冷地帯でも、ある程度気温が下がっていてもブドウが熟すのが北海道の特長です。

産地によって色んな品種が栽培されていますが、ケルナーツヴァイゲルトレーベが北海道の代表的な品種です。その特長を一番如実に表現しているのが余市のワイン、という印象があります。

余市のケルナーについて

―ケルナーワインの特長について教えていただけませんか。

大越:
ケルナーはやっぱりアロマティックな香りに展開してくるのが、親しみやすさを作ってくれますね。残糖との相性も良いです。香りの中に熟した柑橘類と、少し和柑橘の香りを思わせるようなほろ苦さがあるんですが、「香りだけで甘い(甘ったるい)」というイメージはないですね。でも十分熟したイメージが感じられます。

日本を代表するソムリエ大越基裕氏が熱く語る “余市・ケルナーとツヴァイゲルトレーベ 理想のマリアージュ”

最初はパイナップルのように華やかで、少しトロピカルな風味もあります。そこに柑橘類も香るような、それから少しマスカットっぽい味わいも感じられますね。これはケルナーの特長なんですが、とにかく香りから楽しめるのが特長です。

―ケルナーは栽培地を選ばない品種ともいわれていますが、余市産ブドウで造られたワインならではの味わいは?

大越:
そうですね、割とライトボディに仕上がります。北海道の場合は、ケルナーの酸が良い感じに保てるので、残糖との相性が良くて、遅摘みはもっとコントラストがはっきり出ます。

オフドライともいえる、やや辛口の味わいです。糖とのバランスも保っており、甘酸っぱさなどが引き出されているというか、酸味をうまく利用しているのが産地らしいなと思います。

―ケルナーワインを料理に合わせるときのポイントを教えてください

大越:
ケルナーは香りが魅力なので、香りを活かしてあげたいですね。レモン、ゆずなど柑橘類の皮などを散らして香りがより立つといい感じに仕上がると思います。似た系統の香りを合わせても良いですし、トロピカルの要素もあるので、違う系統の香りを試しても楽しめそうです。

日本を代表するソムリエ大越基裕氏が熱く語る “余市・ケルナーとツヴァイゲルトレーベ 理想のマリアージュ”

割りとグリーンな印象もあるので、ハーブ系やグリーン系の柑橘類、ライムとかの風味と合わせるのも良いですよ。ケルナーを合わせるなら、ペルーでよく食べられているセビーチェ(魚介にトマトや玉ねぎなどを加え、マリネ風にした料理)がおすすめです。

他にも、白桃をスライスしたものにエビとグリーンを加えてサラダにして、柑橘類のビネガーをかけてあげれば、ケルナーとの相性が良くなります。白桃もレモン果汁をかけると甘酸っぱい世界観が生まれて相性も良くなるのでおいしいですよ。

ケルナーのフレーバーを上手く利用することで、料理との調和が生まれやすくなるのがポイントです。残糖があるので、酸のある料理と合わせても良いですね。簡単なものなら、白身魚のカルパッチョに柑橘系のビネガーを使ってみるのも面白いです。

―今回、おすすめの料理を教えて下さい。

大越:
スライスした白桃と桃に、柑橘系のドレッシングを加えた「桃と生ハムのアペタイザー」がおすすめです。アペタイザーとは前菜を意味する言葉なので、ぜひ食前酒にケルナーをチョイスして、アロマティックなマリアージュを楽しんでみてください。

桃と生ハムのアペタイザー~柑橘ドレッシング~

日本を代表するソムリエ大越基裕氏が熱く語る “余市・ケルナーとツヴァイゲルトレーベ 理想のマリアージュ”

材料(2人分)
桃         1個
生ハム       6枚
ベビーリーフ    適量

◎柑橘ドレッシング
オリーブオイル      大3
レモン汁         大2
マーマレード       大1.5
レモンの皮のすりおろし  1/2個分
粗挽き黒胡椒       小1
塩            小1/2

作り方
1.桃は種と皮を除き、薄切りにしレモン汁(分量外)少々をふる。生ハムはお好みでバラ型に成形する。
2.柑橘ドレッシングの材料をよく混ぜる。
3.器に桃、生ハム、ベビーリーフを盛り付け、食前に2をかける。

※マーマレードの代わりにお好みの柑橘ジャムでもOK

※料理&レシピ 料理研究家/フードコーディネーター 福島さやかさん作成

余市のツヴァイゲルトレーベワインについて

―ツヴァイゲルトレーベワインはどのような特長をもっていますか?

大越:
実はツヴァイゲルトレーベ大好きなんです。(笑)もしかしたら北海道のワインの中でも好きなブドウ品種かもしれません!

今の世界的な傾向から見ると、凝縮感はあるけどあまり重くないというワインは結構貴重だと思います。中でもツヴァイゲルトレーベがそれに当たっていて、酸をしっかり残しやすく、そこにペッパーのフレーバーとグリーンな感じが乗っかってくるんです。

日本を代表するソムリエ大越基裕氏が熱く語る “余市・ケルナーとツヴァイゲルトレーベ 理想のマリアージュ”

キレが良くフレッシュネスな印象が特長で、素材の味を活かした料理と合わせやすい味わいですね。ちょうど良いバランスのワインに仕上げられるので、カジュアルからハイランクなものも造れるブドウだと思います。

―ツヴァイゲルトレーベが寒冷地で育つことから、北海道で栽培されている所以だと思われますが、余市ならではのツヴァイゲルトレーベの味わいは?

大越:
余市は、北海道の中でも一番寒暖差が作れる地域です。暑すぎてもダメなので、ツヴァイゲルトレーベの熟度を引き出すには余市や近辺のほうが向いています。余市に行ったらぜひいただきたいワインです!

ツヴァイゲルトレーベはオーストリアとかハンガリーですごくおいしいものが造られているんですが、余市なら、それに並ぶワインが造れると期待しています。色んな品種がありますが、その中でもツヴァイゲルトレーベを選んだのは、余市にとって財産になります。

―ツヴァイゲルトレーベと料理を合わせるときのポイントを教えて下さい。

大越:

かつおぶしと醤油の味がする料理は、もともと赤ワインとの相性が良いんです。味が軽めの料理を合わせるとよく合うんですが、料理によっては軽くブラックペッパーを振りかけるともっと相性が良くなります。

日本を代表するソムリエ大越基裕氏が熱く語る “余市・ケルナーとツヴァイゲルトレーベ 理想のマリアージュ”

色々と試してみて、忘れられないくらい感動したのが万願寺とうがらしです。シンプルに焼いたものにかつおぶしと醤油をかけるくらいで十分おいしくなります。ツヴァイゲルトレーベのグリーンペッパーなフレーバーと万願寺とうがらしの風味がリンクするイメージです。ブラックペッパーを最後に振ってみても、味が締まってぐっと良くなりますね。

ツヴァイゲルトレーベ自体、重くない味わいなので、野菜ベースの料理を色々試してみてください。軽く煮込んだ料理もおいしいと思います。

―今回、おすすめの料理を教えて下さい。

大越:
せっかくなので、万願寺とうがらしを使った「夏野菜たっぷりのラタトゥイユ」を合わせてみてはいかがでしょうか。

万願寺とうがらしの他にも、ズッキーニや茄子など、新鮮な夏野菜を使っているので、ツヴァイゲルトレーベのワインを合わせることで、素材の味を引き立たせてくれますよ。

夏野菜たっぷりラタトゥイユ

日本を代表するソムリエ大越基裕氏が熱く語る “余市・ケルナーとツヴァイゲルトレーベ 理想のマリアージュ”

材料(4人分)
万願寺唐辛子      4本
ズッキーニ       1本
黄パプリカ       1/2本
エリンギ        1本
茄子          2本
トマト         中1個
セロリ         1/2本
にんにく        2片

A
野菜ジュース(無塩)  200ml
コンソメキューブ    1個
味噌          小2

塩、胡椒        各少々
オリーブオイル     大2

作り方
1.野菜類は大きめの一口大に切り、にんにくはみじん切りにする。
2.深めの鍋にオリーブオイルとにんにくを入れて中火にかけ、香りが立ったら万願寺唐辛子を炒めて、一度取り出す。
3.2の鍋にその他の野菜を順に炒め、Aを注いで蓋をし、弱火で10分煮込む。
4.野菜が柔らかくなり水分が出たら、強火で2~3分煮詰め、塩、胡椒で調味して火を止める。
5.器に4を盛り付け、2の万願寺唐辛子を飾る。

※冷やしてもおいしく召し上がれます

※料理&レシピ 料理研究家/フードコーディネーター 福島さやかさん作成

余市産ブドウを使ったワインのマリアージュを楽しむポイント

―では、最後に今回のマリアージュですが、楽しむポイントがございましたら教えて頂けますでしょうか。  

そして、組み合わせをするにあたって注意したい点がありましたら、アドバイスをお願いいたします。

大越:
北海道というとチーズが多く作られていますが、チーズを合わせるのは結構難しいんです。日本のチーズは、どちらかというと白ワインが合います。ケルナーみたいに糖度が残っていれば、チーズの塩気とバランスがとりやすいですね。

味が濃厚すぎるチーズは、ワインより強くて調和しづらくなるので、クラッカーやフルーツに挟むなど一工夫するのがおすすめです。日本のワインは穏やかなので、ワインとチーズを合わせるときはマリアージュしやすいようにしてください。

◆ブランドマネージャーの感想・今後の意気込み

ー大越さんのマリアージュのお話を受けて、グランポレール・ブランドマネージャーの高久さんからひとことお願いします。

高久:
本日は、お忙しい中、ありがとうございました。
ケルナー、ツヴァイゲルトレーベはグランポレールの中でもエントリーレベルが高く、多くのスーパーや飲食店で取り扱うほど、飲む機会が多いと思われます。

単体で楽しむのも良いのですが、料理と合わせることで、新たな魅力に気づくきっかけになるのではないかと思います。

日本を代表するソムリエ大越基裕氏が熱く語る “余市・ケルナーとツヴァイゲルトレーベ 理想のマリアージュ”

編集部 荻原:

今回は、余市産ブドウを代表するケルナーとツヴァイゲルトレーベの2種類から造られたワインについて語っていただきました。

柑橘類のビネガーなど同じ系統の香りで楽しむ他、異なる香りとも組み合わせて楽しめるケルナーは、自分なりのマリアージュを見つける楽しみがありますね。大越さんも大好きと語るツヴァイゲルトレーベも、和食と赤ワインの意外な組み合わせを楽しみたい方におすすめです。

北海道の中でも個性的なテロワールが魅力的な余市産ブドウのワインを、ぜひお楽しみください。

余市産のブドウについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。
「ブドウ栽培家が熱く語る「グランポレール余市」の魅力!ー弘津ヴィンヤードにインタビュー」

次回は、長野県・安曇野産のブドウで仕立てたワインとの理想的なマリアージュを大越ソムリエにお伺いしたいと思います。

次回をお楽しみに!

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