CULTURE

GRANDE POLAIRE STORY
~想いをつなぐ日本ワイン~
Vol.9 グランポレール安曇野池田ヴィンヤード
石原大輔さん【後編】

2003年に誕生した日本ワイン「グランポレール」。キーメッセージである「想いをつなぐ日本ワイン」を深掘りすべく、WINE OPENERでは4つの産地にフォーカスしていきます。生産者や醸造担当者の言葉から見えてくる、グランポレールに宿る魅力とは何か――。今回登場するのは、2009年に開園したグランポレール安曇野池田ヴィンヤードの栽培家・石原大輔さんです。穏やかな笑顔の奥に潜むのは、ワイン醸造のためのぶどう栽培に駆ける情熱。後編では、安曇野池田の風土と栽培家・石原大輔の矜持に迫ります。

text WINE OPENER編集部 photo 岡崎健志

■前編はこちら

GRANDE POLAIRE STORY 09

安曇野池田ヴィンヤードは
まだ誰も知らないポテンシャルを秘めている

GRANDE POLAIRE STORY 09 ―安曇野池田ヴィンヤードの畑を見渡すと、傾斜地に広がっていますよね。

石原大輔(以下、石原):はい。畑が山の斜面にあるので、水はけが良いのが特徴です。北アルプス由来の礫・砂・粘土が混ざり合った土壌で、特に砂が多いことも水はけの良い要因ですね。水はけが良くて土壌の養分が少ないことで、凝縮感のあるぶどうが育ちます。特に赤ワイン品種は全体的に凝縮感がありますね。

GRANDE POLAIRE STORY 09 ―ぶどうを見ると、粒が小さいですよね。

石原:土壌の水分が少ないからです。逆に水分が多いとぶどうが太ってしまい、粒が大きくなります。そうすると、皮の面積に対して中の果肉部分の割合が大きくなってしまう。赤ワインは皮の割合が大きいぶどうのほうが濃く凝縮感のあるワインに仕上がります。

―水はけが良くて養分が少ない土壌という好条件が揃っているんですね。

石原:もうひとつ、気温にも特徴があって、夜の気温がぐっと下がりやすい環境なんです。夏の日中は35度くらいまで上がりますが、夜は20度前後まで下がり、昼夜の寒暖差が10度以上になります。晩夏にもなれば冷房いらずなのは、自分も長野に来て驚きました。

―畑に立っていると、心地いい風が抜けていきますよね。風通しが良く、ぶどうも喜んでいるように感じます。

石原:風が抜けるとカビが付きにくいですし、健全なぶどうを育てるには有利な立地と言えます。ここの畑は標高の高いところで約630m、盆地ではあるものの谷のような地形なので、南北方向に風が抜けるんですよ。そういった条件もあって気温が下がりやすく、樹上完熟させても酸味が適度に残る、ワイン造りにおいて理想的なぶどうが育ちます。本当に環境に恵まれた畑だと思います。だから今は、もっとこの土地を深く知りたいという欲求があります。安曇野池田ヴィンヤードに来て13年が経ちますが、わかっていないことがたくさんあると思っていて。まだ誰も知らないポテンシャルを秘めているぶどう畑だと、僕は確信しています。

GRANDE POLAIRE STORY 09

僕たち人間ができるのは
ぶどうの生育をサポートすることだけ

―そう思わせるぐらい偉大な土地なんですね。でも裏を返すと、プレッシャーに感じませんか?

石原:責任の重さは日々感じています(笑)。それだけに、やりがいもありますよ。ぶどう栽培と対峙していて感じるのは、自然の偉大さと言いますか、自然をコントロールすることはできないということ。ぶどうを見ていると、過酷な環境下でたくましく生きている姿に感心しますね。日照りが続いても、しっかり根っこを張り巡らせて、下から水分を吸って生きていますから。僕たち人間ができることなんて限られていて、ぶどうの生育をサポートすることしかできません。健全でしっかりと熟したぶどうに育つためのサポートをするのが、我々栽培家の仕事。人の手でいじくり回して育てるのとは、ちょっと違いますね。

―そういった自然の偉大さやぶどうの生命力みたいなものと日々対峙していると、石原さんの人生観にも影響を与えそうですね。

石原:そうですね。ぶどう栽培は日々の積み重ねですし、地味な作業を積み重ねることが大事。だからここに来てからは、奇をてらうとか、派手に一発ぶちかますとか、そういった考えはなくなりましたね(笑)。やっぱり地域の風土が、そこに住む人々の生き方や性格を作り上げているように思います。僕は大阪出身で、今でもすごいお喋りではあるんですけど、昔はもっとお喋りだった気がします。安曇野池田に来て13年になり、この仕事をやってきたことで、少しは喋り過ぎないようになったかなと(笑)。冬が厳しい雪国ならではの、寡黙にコツコツと生きる姿勢や、働き者で芯のある長野の人たちを見てきたことが、少なからず僕も影響を受けているんだと思います。

GRANDE POLAIRE STORY 09 ―栽培家として、違う土地で仕事をしてみたいと思うことは?

石原:栽培家としては、海外も含めていろいろな産地を知りたいという気持ちはあります。そのほうが、栽培家としての引き出しも増えると思うので…。でもやっぱり、安曇野池田は素晴らしいところです。13年間、同じ風景を見続けてきましたが、まったく飽きないですから。

―栽培家として引き出しを増やしたいと思う理由を、さらに掘り下げて聞かせてもらえますか?

石原:やっぱり引き出しはいろいろあったほうが、良い栽培ができると思います。ぶどう栽培に同じ1年なんてなく、毎年不安が付きまといます。この土地のこともそうですし、ぶどうに関する科学的なことも、まだまだわからないことがたくさんあるわけです。だからこそ、その年を謙虚な姿勢で迎え、観察して工夫する毎日を積み重ねていくことが大事だと思っています。

グランポレールのワインは、
みんなで作り上げる芸術作品

GRANDE POLAIRE STORY 09 ―グランポレールは2023年に20周年を迎え、キーメッセージが「想いをつなぐ日本ワイン」にリブランディングされました。そのメッセージに対して、どのような感想を持っていますか?

石原:僕が思うグランポレールの魅力は、全国に4つの産地があって、さまざまなぶどう品種があるところ。日本ワインの多様性を楽しんでいただけるのが、グランポレールの個性だと思います。それぞれのアイテムに物語があるのも面白いところなんですが、残念ながらお客様に周知できていない点がブランドとしての課題だと感じています。

―キーメッセージが「想いをつなぐ日本ワイン」にリブランディングされたことで、その課題がクリアになっていくといいですね。

石原:そこに期待しています。栽培家は僕だけではなく他の産地にもいて、岡山と勝沼には醸造家の皆さんがいて、本社や全国の拠点には出来上がったワインとそのメッセージをお客様に届ける人たちがいます。グランポレールというチームみんなで、さらに密なコミュニケーションをとりながら、同じ方向を向いたワイン造りをしていきたいですね。グランポレールのワインは、自然の恵みと関係者みんなで作り上げる芸術作品のようなもの。もっと言えば、みんなの苦労や努力、試行錯誤の結晶だと思っています。

 

GRANDE POLAIRE STORY 08

グランポレール安曇野池田ヴィンヤード
石原大輔さん

幼少期に描いた将来の夢は、漫画家とラーメン屋の大将だったそう。「自分でものを作って、人に楽しんでもらう仕事がしたかったんだと思います」と石原さん。学生時代はHIPHOPにハマり、音楽浸けの毎日を送る。やがて興味の対象は「酒の原料となる植物」に向き、サッポロビール入社後はグランポレール安曇野池田ヴィンヤードの栽培家としてぶどう栽培に情熱を注ぐ。尊敬するワイン生産者は「M.シャプティエ」。

■My favorite GRANDE POLAIRE

GRANDE POLAIRE STORY 08

グランポレール 安曇野池田 シラー 2018
オープン価格

安曇野池田ヴィンヤード初の「Japan Wine Competition(日本ワインコンクール)2023」金賞受賞ワイン。「受賞の一報を受けたときは、今までの努力、苦労が報われた気持ちでした。と同時に、関係者のみなさんに感謝を伝えたいと思いました」と、石原さんにとっても思い入れの強い1本に。ブラックチェリーのアロマやシラー独特のホワイトペッパーのようなスパイシーなニュアンスと、滑らかでふくよかな味わいで、冷涼な安曇野池田ヴィンヤードのテロワールを表現している。

 

長野にあるもうひとつの畑
「長野古里ぶどう園」

GRANDE POLAIRE STORY 09

安曇野池田ヴィンヤードから車で約1時間半。サッポロビールが所有するぶどう畑の中で最も歴史が長い「長野古里ぶどう園」は、千曲川ワインバレーに属します。開園したのは1975年。千曲川の支流である浅川に隣接している影響を受け、秋が深まると園内には霧が立ち、ぶどうに貴腐菌が繁殖します。そんな長野古里ぶどう園で収穫された貴腐ぶどうを使った商品が「グランポレール長野古里リースリング貴腐2015」。2015年に収穫されたリースリング種貴腐ぶどうを厳選し、平均糖度45度という非常に糖度の高いぶどうで造られた貴腐ワインです。

 

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※ワインについては、記事掲載時点での情報です。

 

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