CULTURE

GRANDE POLAIRE STORY
~想いをつなぐ日本ワイン~
Vol.6 サッポロビール岡山ワイナリー
原田英雄さん・大黒達希さん【前編】

2003年に誕生した日本ワイン「グランポレール」。キーメッセージである「想いをつなぐ日本ワイン」を深掘りすべく、WINE OPENERでは4つの産地にフォーカスしていきます。生産者や醸造担当者の言葉から見えてくる、グランポレールに宿る魅力とは何か――。今回登場するのは、グランポレールの醸造拠点のひとつである岡山ワイナリー。醸造の中枢を担う原田英雄さんと大黒達希さんが大切にしていることは、キーメッセージの「想いをつなぐ」ことでした。前編では、彼らの醸造哲学と岡山ワイナリーの役割について深掘りしていきます。

text WINE OPENER編集部 photo 本宮 誠

GRANDE POLAIRE STORY 06

フルーツ王国として名を馳せる岡山で
グランポレールの醸造を担う

GRANDE POLAIRE STORY 06

瀬戸内特有の温暖な気候により、日本有数の果樹栽培地として知られる岡山。特に桃とぶどうの栽培が有名で、道の駅に立ち寄るとその品種の多さに驚かされます。例えばぶどうなら、種無しで皮ごと食べられる「シャインマスカット」、果実の女王と呼ばれる「マスカット・オブ・アレキサンドリア」、大粒で種無しの「ニューピオーネ」、 県のオリジナル品種「オーロラブラック」、冬のぶどう「紫苑(しえん)」が岡山県の推奨品種。県北部と県南部で気候が異なるため、長期に渡ってさまざまな品種のぶどうが出回ります。 GRANDE POLAIRE STORY 06 岡山を代表するワイン用ぶどうは、130年の歴史がある「マスカット・オブ・アレキサンドリア」と日本独自の赤ワイン用ぶどう「マスカットべーリーA」です。全国で最も晴天日が多く、ぶどう生育期の平均気温が21.8℃で穏やかな風が抜けるテロワールを生かしたワイン造りも岡山の魅力です。 山梨のグランポレール勝沼ワイナリーと並び、グランポレールの醸造拠点であるサッポロビール岡山ワイナリーでは、主にキャラクターシリーズの一部とブレンドシリーズを製造。日本ワインの価値と認知の向上を担う岡山ワイナリーで、お客様から喜ばれるワイン造りに奔走するふたりの醸造家が今回の主人公です。

GRANDE POLAIRE STORY 06
左が大黒達希さん、右が原田英雄さん

短い仕込み期間中に
多くの苦楽がある

―まずおふたりのキャリアからお聞きしたいのですが、原田さんは入社後、ワインではなくビールの醸造に関わっていたそうですね。

原田英雄(以下、原田):はい。入社してから10年間くらいは、ビールの醸造や品質管理の仕事をしていました。ワインの醸造に関わるようになったのは岡山ワイナリーに配属されてからなので、キャリアとしてはまだ7年くらいです。

GRANDE POLAIRE STORY 06 大黒達希(以下、大黒):僕は新卒で入社して以来、ずっと岡山ワイナリーにいます。それまでワインの醸造技術やぶどう栽培の知識もなかったので、仕事をしながら身に付けていった感じですね。

―まず、どんな仕事から覚えていくものなのでしょうか。

大黒:収穫されたぶどうをコンベアに載せたり、仕込みの現場に入って機械を動かしたり櫂入れしたり…。まだ発酵経過なんてわからなかったですし、現場を知ることから始めました。

―ワイン造りを理解するまで、どれくらいかかるものですか?

大黒:造ったワインが市場に出て、その評価を実感できるようになってからでしょうか。自分が仕込んだぶどうが、醸造を経てワインになって、最終的にどのように評価されたか。そこを考えられるようになってから、少しずつワイン造りの理解が深まっていったと思います。とはいえ、まだまだ学ぶべきことはたくさんあります。 GRANDE POLAIRE STORY 06 ―原田さんはビール醸造の現場から移ってきたわけですが、やはりビールとワインでは醸造の考え方は異なるものなのでしょうか。

原田:全く違いますね。ビールの原料は乾燥しているので保存がききますが、ワインはぶどうを収穫してからすぐに仕込みが始まるので勝負が短いんですよ。短い仕込み期間の中で、毎年さまざまな挑戦をしていかなければならない点が、苦しくもあり楽しいところですね。

自分の味覚や嗅覚は疑うべき
だからチームでワインを造る

GRANDE POLAIRE STORY 06 ―仕込みにおいて大事なことは何だと思いますか?

大黒:当たり前と言えば当たり前ですが、各段階の「現物を見る」ということですかね。生産者から納品されたぶどうを見て食べる、搾汁した果汁がどういう色でどんな味か確かめる…。他にも発酵中の果醪の状態や樽熟成させているワインの状態など、各現場に行って自分の目、鼻、舌で確認することが大事だと思っています。人から聞くのと自分で確認するのとでは、情報量に差がありますからね。

原田:仕込みのときは、必ずぶどうを食べるように指示しています。種や皮の状態を見る必要がありますからね。ワイン造りは、計算だけでは成り立たないもの。畑によってぶどうの状態は異なりますし、同じ畑でも区画によって異なります。だからこそ「自分で見ること」が大切。あとは、やはり造り手の想いも大事だと思います。

GRANDE POLAIRE STORY 06 ―その「見る」ことをした後は、何かを判断することになると思いますが、その判断でおふたりの意見が割れることは?

大黒:同じ目的を持ってワイン造りをしているので、基本的には何を選択するかで意見が割れることは少ないです。例えば今朝も、どの樽を使うか意見交換しましたが、10種くらいある樽から同じものを選びましたしね。

原田:仕込みのやり方、発酵資材の選び方など、さまざまな選択肢があるわけです。もし大黒と僕の想いや目的が違っていたら、各段階で選ぶものも異なると思います。醸造家としてチャレンジングなことがやりたいという気持ちがあったとしても、僕たちはグランポレールを求めるお客様を裏切ってはいけない。諸先輩方がやってきたことを発展させながら進化させていくという考え方は、大黒も僕も同じですね。

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大黒:だから味を決めていく段階では、甘味と酸味のバランスだったり、かなりディスカッションしますね。岡山ワイナリーで造るグランポレールの最終的な方向性を決めるのは、僕たちなので。

原田:僕ではなく僕たちであって、ひとりで決めていないのもポイントですね。

大黒:やっぱり自分の味覚や嗅覚は疑うべきだと思うんです。そこを原田とすり合わせしたり、チームで結論を出すことが大事だと思っています。

岡山ワイナリーの役割は
グランポレールと消費者の接点を作ること

―サッポロビールが運営するワイナリーは、岡山ワイナリーと勝沼ワイナリーの2拠点ですよね。どちらもぶどうの産地ではありますが、ワイナリーとしてはどのような違いがあるのでしょうか?

原田:扱うぶどう品種の違いはありますね。カベルネ・ソーヴィニヨンみたいな比較的ボディ感のあるワインは、ここでは扱いません。岡山ワイナリーでは、どっしりと重たいワインよりも、軽やかで早飲みできるワインを中心に造っています。

大黒:勝沼ワイナリーではグランポレールの最高峰レンジである「シングルヴィンヤードシリーズ」が中心。自社畑で栽培した高品質なぶどうを原料に、少数精鋭の醸造家がワインを製造しています。一方、ここ岡山ワイナリーで造っているのは、広くお客さまに届く製造量の多いワインが中心ですね。

GRANDE POLAIRE STORY 06 ―価格帯で言うと、勝沼ワイナリーでは高価格帯、岡山ワイナリーではリーズナブルなワインを製造しているわけですよね。言葉を選ばずに聞きますが、造り手の本音としては高価格帯のワインを造りたい、という気持ちは少なからずあったりするのでしょうか?

大黒:正直言うと、入社当時は変な劣等感みたいなものもありました。造っているワインの価格帯を比べちゃって…。でも、ここでワイン造りをしているうちに、そんな気持ちは完全に無くなりましたね。だって、グランポレールと消費者の接点を作るという意味では、岡山ワイナリーで醸造しているワインがその役割の多くを担っているわけです。グランポレールをはじめて飲む方たちに、そのワインの良さをどう届けるか。そこへ注力することに、醸造家としての意義を見つけたということなのかもしれません。

原田:グランポレールのワインは、決して一人で造れるものではありません。ぶどうを育てる生産者を含め、チームで仕事をしている感覚のほうが強いんですよ。もちろん勝沼ワイナリーも同じチームです。みんなが同じ方向を見て、グランポレールブランドを作っているわけですから。それぞれに役割があり、その役割に対して全力で向き合う。そこに違いはないと思っています。

>>>後編はこちら

 

GRANDE POLAIRE STORY 06

右/原田英雄(はらだ・ひでお)さん
左/大黒達希(おおぐろ・たつき)さん

サッポロビール岡山ワイナリーの中枢を担う醸造家。先輩である原田さんは「大黒はキャリアだけでは図れない信頼感がある」と、醸造におけるパートナーを評す。ちなみに原田さんが幼少期に抱いていた夢は「パイロット。いろんな地域を飛び回るという意味では、今の仕事にも通じている」とか。一方の大黒さんは「ウルトラマンですかね(笑)。今はチームの重要性を感じていますが、戦隊ヒーローよりも、ひとりで戦って解決していくヒーローに憧れた」と振り返る。チームでのワイン造りを大切にしながら、醸造家としての情熱を静かに燃やすおふたりでした。

原田さんと大黒さんがおすすめする
岡山ワイナリーを代表するワイン

グランポレール 岡山マスカットベーリーA<樽熟成>
オープン価格

 

 

 

 

 

 

グランポレール 岡山マスカット・オブ・アレキサンドリア<薫るブラン>
オープン価格

 

 

 

 

 

果樹栽培が盛んな岡山
明治期から高度な技術を確立

GRANDE POLAIRE STORY 06

白桃やピオーネ、マスカットをはじめ、ナシやイチゴ、スイカやカキなど、一年を通してさまざまな果実が収穫されるフルーツ王国、岡山。特にモモとぶどうの名産地として名を馳せ、明治時代からモモや温室ぶどう栽培の技術開発が行われてきました。現在、全国で作られている約100品種のモモも、そのほとんどが岡山県で生まれた品種です。また、マスカット・オブ・アレキサンドリアの温室栽培に日本で初めて成功した技術を受け継ぎ、多彩な品種のぶどうを栽培しています。果樹栽培の匠たちが残したレガシーは、日本ワインの醸造にも多大な影響を与えています。

 

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※ワインについては、記事掲載時点での情報です。

 

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