CULTURE

GRANDE POLAIRE STORY
~想いをつなぐ日本ワイン~
Vol.11 グランポレール勝沼ワイナリー
多田 淳さん【後編】

2003年に誕生した日本ワイン「グランポレール」。キーメッセージである「想いをつなぐ日本ワイン」を深掘りすべく、WINE OPENERでは4つの産地にフォーカスしていきます。生産者や醸造担当者の言葉から見えてくる、グランポレールに宿る魅力とは何か――。今回登場するのは、グランポレールの醸造を専業で行う「勝沼ワイナリー」のワインメーカー、多田 淳さんです。フランスのボルドー大学で国家資格「DNO(フランス国家醸造士)」を取得し、帰国。テロワールとは何かを学び、その知識と経験に情熱を掛け合わせ、グランポレールの醸造に注ぎ込んできました。「日本ワインが食文化として定着するためには、何をすべきか――」。後編では、なるべくしてワインメーカーになった男の信念に迫ります。

text WINE OPENER編集部 photo 岡崎健志

■前編はこちら

 

GRANDE POLAIRE STORY 011

グランポレールはチームで醸すワイン
ぶどうの個性を見極め、認識を共有

GRANDE POLAIRE STORY 011 ―グランポレールを醸造する「勝沼ワイナリー」で、多田さんはどんなことを重視してワインづくりに対峙しているのでしょうか?

多田 淳(以下、多田):グランポレールの4つの産地で収穫されたぶどうの個性を大事にすること。まずこれが大前提です。そのためのワインづくりで重視していることは、醸造メンバー間でのイメージ共有です。もちろん技術的な話をすれば細かくありますが、その前段階として、弊社の畑で栽培しているぶどうの個性と出来上がるワインの特性を、みんなが同じように解釈して、共通のイメージを持って醸造していくことが大事だと思っています。例えば私が「酸と香りを大切にしたい」と思っているワインを、別のワインメーカーが「甘さや口当たりこそが大切」と認識していた場合、同じぶどうであっても味わいの異なるワインになってしまう可能性があるんですよね。

―個性を生かすも殺すもワインメーカーの見極め次第と?

多田:はい。例えばポテンシャルとして素晴らしい香りを持っているぶどうでも、つくり方ひとつでその香りをおざなりにしてしまう恐れもあるわけです。

―改めて、個性の見極めの重要性と難しさを感じました。

多田:難しいです。だからこそ、ワインメーカーは視野を広く持たないといけないと思っています。自分たちがつくったワインを飲むだけではなく、市場やお客様の声をよく聴くことと世界中のワインをテイスティングして他の産地から学ぶ意識を持つことも大切ですね。

―ぶどうの個性を見極めるには、栽培家の方々とのコミュニケーションも必須ですよね?

多田:おっしゃる通りです。そこも肝ですね。私が学んだボルドーでは、ワイナリーはぶどう畑の近くにあって、自分でぶどうの状態を観察することができました。しかし、弊社は産地とワイナリーが離れているので、そこは栽培家とワインメーカーがチームとして密にコミュニケーションを取る必要があります。それでもやはり現場現物を見るのが一番なので、実際に畑まで足を運んで実感することも重要ですね。

自社畑のぶどうは
負けていない!

GRANDE POLAIRE STORY 011 ―グランポレールは2023年に20周年を迎え、キーメッセージが「想いをつなぐ日本ワイン」にリブランディングされました。そのメッセージに対して、どのような感想を持っていますか?

多田:ここでお話させていただいたようなことを、グランポレールの次世代ワインメーカーに伝えていくことも大事ですし、私たちの世代が先輩方の想いをつないでいくことも必要だと思っています。日本ワインは今まさに各地で、「自分たちのワインはどのような個性を持つのか」が少しずつ明らかになってきた段階だと思うんです。その中で、さらにグランポレールの光る個性とは何なのか、探求を繰り返し、お客さまにその魅力を伝えていければと思っています。

―日本ワインは、これからもっと面白くなっていきそうですよね。

多田:その通りだと思います。日本は雨が多く、ワイン用ぶどうの栽培には向いてないと言われてきました。でも、日本だって雨の少ない地域はありますし、特定の土壌や傾斜地で栽培すれば水はけはいいわけです。例えばグランポレールの安曇野池田ヴィンヤードはその気候、地形、土壌から、非常に小さな粒のぶどうが収穫されます。そのため比較的パワフルな赤ワインができます。白品種のソーヴィニヨン・ブランは、少し個性的な素晴らしい香りが出ます。私がボルドーから帰国して安曇野池田ヴィンヤードのぶどうを見たときのファーストインプレッションは「負けていない」のひと言。地域特性として雨が少なく、標高が高く昼夜の寒暖差があり心地いい風が吹きます。圃場内の場所にもよりますが、概ね水はけがいい土壌です。日本にもワイン用ぶどうの産地として好ましい場所はあるということだと思います。逆に銘醸地といわれている産地も、これまで決して簡単な道を歩んできたわけではないと思うんですよね。

GRANDE POLAIRE STORY 011 ―グランポレールに限らず、そういった“好ましい場所”で造られる日本ワインが増えてきたことが、日本ワインに対する評価が高まってきているひとつの要因なのでしょうね。

多田:そうだと思います。しかし、まだ日本ワインをどのように評価するのかは成熟していない印象です。例えばピノ・ノワールの色が淡いことやソーヴィニヨン・ブランの香りがニュージーランドなど他国のものと違うことを弱みとしなくてもよいのではないかと思ったりもします。市場や関連する産業の方たちとしっかり議論してつくり上げていかなければならないフェーズにあるのではないでしょうか。これからもっと日本ワインが面白くなっていくには、時間はかかるかもしれませんが、こういった活動は欠かせないと思います。

―こういった議論が各方面で行われることが大事ですよね。

多田:そうですね。先ほども申し上げました通り、すでに国内さまざまな産地でワインの個性は何かというような議論は活発に行われてきていると感じていますし、個人的にはひと昔前よりもテロワールに対する考え方の共通認識は持ててきているのではないかと思います。でも、いわゆる旧世界と呼ばれるような中世より前からワインをつくってきた産地などと比べるとまだまだ歴史が浅いですし、文化として広く定着していない現状も否めません。でもそれが日本ワインの伸びしろだとも思いますし、私たちとしてはまだまだ取り組むべきことがたくさんあります。やり甲斐のある仕事ですね。

ワインの魅力は
その多様性を楽しめるところ

GRANDE POLAIRE STORY 011 ―単刀直入にお聞きしますが、多田さんが思うワインの魅力とは?

多田:多様性ですかね。同じ産地でもぶどう品種やビンテージによって異なる個性がありますし、似たワインでも料理に合わせるときに全く違うワインと思うこともあります。ワインの多様性は、全国各地のラーメンに例えるとわかりやすいのかな、と時々思うことがあります。地域の産品や歴史的背景で、スープだけをとっても味噌や醤油ベース、豚骨や魚介ベースなどと多種多様ですよね。しかも各々のスタイルが文化としてその地域に根付いています。ワインもその土地土地によって多様性があることが、一番の魅力なのかなと思います。

―最後に伺います。多田さんが目指す、理想のワインメーカー像とは?

多田:美味しいワインをつくることもそうですが、食文化をワインでもっと豊かで楽しくするために、トータルで考えられる視野の広いワインメーカーですかね。今のことだけじゃなくて将来も見据えながら、ワインづくりだけでなくマーケットなども視野に入れて考えられるワインメーカーになり、最終的には美味しいワインを通じて幸せや喜びを多くの方々に届けられる存在になりたいと思っています。

GRANDE POLAIRE STORY 011

 

GRANDE POLAIRE STORY 010

グランポレール勝沼ワイナリー
ワインメーカー
多田 淳(ただ じゅん)さん

2008年にサッポロビールへ入社し、ビールや発泡酒の醸造に従事。2013年にサッポロワイン社岡山ワイナリー製造部(現・岡山ワイナリー生産部)に異動し、ビール醸造からワイン醸造の現場へ。2017年にフランスへ渡り、翌年からボルドー大学DNO課程に入学。格付けシャトーでの研修などを経て、2020年にDNOを取得。2020年からグランポレール勝沼ワイナリーのワインメーカーとしてブランドの未来を担う。幼い頃から「人を喜ばせる職業に就くこと」を夢みてきた。

■My favorite GRANDE POLAIRE

GRANDE POLAIRE STORY 010

グランポレール 安曇野池田ソーヴィニヨン・ブラン<薫るヴェール>2022
オープン価格

多田さんの留学先であったボルドーはソーヴィニヨン・ブランの産地で、研修先のシャトーでも徹底的に特性を学んできたそう。その知識と経験を集約させ、安曇野池田ヴィンヤードで育ったソーヴィニヨン・ブランの個性を存分に引き出したのが、この「グランポレール 安曇野池田ソーヴィニヨン・ブラン<薫るヴェール>2022」である。パッションフルーツやグレープフルーツを想わせるトロピカルな香りは、多田さんが安曇野池田ヴィンヤードのテロワールを見極め、そのポテンシャルを引き出した唯一無二の個性。「私がボルドーで学んだことを表現できた成果のひとつ」と言う。

 

勝沼ワイナリーでは
見本ぶどう園の見学が可能!

GRANDE POLAIRE STORY 011
GRANDE POLAIRE STORY 011

グランポレール勝沼ワイナリーは、JR中央本線「山梨市」駅から車で約10分、中央自動車道「勝沼I.C.」からも10分ほどの距離。周囲にはぶどう園が点在し、一大産業であることがわかります。勝沼ワイナリーでは、グランポレールの4つの産地である「長野」「山梨」「北海道」「岡山」で栽培されているぶどう品種を現地の栽培方法で再現した見本ぶどう園を自由に見学可能(無料)。併設するワインショップでは、有料テイスティングとグランポレールの購入ができます。ワインの知識が深まり、さらにワインが好きになる観光スポットです。

 

グランポレール勝沼ワイナリー
所在地:山梨県甲州市勝沼町綿塚577
案内時間:10:00~16:30
休館日:水曜日(祝日の場合は営業)、年末年始、臨時休館日
問い合わせ先:0553-44-2345(受付時間 9:30~17:00、水曜除く)

 

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※ワインについては、記事掲載時点での情報です。

 

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